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2021年03月19日  - No.3 - 4

近年のダービーで先行逃げ切りが有利なのはなぜか(アメリカ)【その他】


 3月13日の総賞金100万ドル(約1億1,000万円)のレベルS(G2 オークローン 約1700m)において、先行逃げ切り型の馬の1頭が優勝して台頭できれば、その脚質の馬はケンタッキーダービー(G1 5月1日)にぴったりだと見なされる。

 レベルSには多くの先行逃げ切り型の馬が登録しているため簡単にハナに立てそうにないという事実に基づき、私は「ダービーにぴったり」という言い方をしている。先頭に立つ、あるいは先頭に迫る馬は、確実に勝つために最高のパフォーマンスを発揮しなければならないだろう。レベルSでそれができたなら、その馬は近年のケンタッキーダービー(約2000m)の傾向に基づいた "ダービーのための適切な走り方"を備えることになるだろう。

 レベルSには、スマーティジョーンズS(L)を圧勝したカドーリバー(Caddo River)、南カリフォルニアから遠征してくるサンヴィセンテS(G2)優勝馬コンサートツアー(Concert Tour)のほか数頭の先行逃げ切り型の馬が登録されている。カドーリバーはこれまで2回走ったマイル戦でどの地点でも先頭に立っていた。コンサートツアーは約1200mのスプリント戦で先行して勝利を決め、その次の約1400mのサンヴィセンテSでも早くから先頭に迫って優勝して、今回初めて2つのコーナーがあるコースに挑む。なお、レベルSのペースは速くなると予想されている。

 キープミーインマインド(Keepmeinmind)は昨年11月のケンタッキージョッキークラブS(G2 チャーチルダウンズ)で9番手から追い上げて優勝して以来の出走となる。関係者は同馬が終盤にその末脚を活かせるような展開になるように、かなり速いペースとなることを期待しているだろう。

訳注:3月13日のレベルSでは2番人気のコンサートツアーが序盤から先頭に立ち、先行逃げ切りで4¼馬身差の勝利を決めた]。

 しかしチャーチルダウンズ社が2013年に"ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー(獲得した合計ポイントによりケンタッキーダービーへの出走権を与える制度)"の対象レースをすべてマイル以上とし、スプリンターを選考対象から事実上除外して以来、ダービー当日に関しては、先行逃げ切り型の馬、もしくはペースを争う馬がかなり健闘してきた。確かに、先頭に立つ、あるいは先頭近くを走る馬は、米国のダート競走で好まれる脚質だが、近年になるまでこの脚質がダービーで必ずしも開花するわけではなかった。

 近年のケンタッキーダービーを振り返ってみよう。

 2020年はオーセンティックが最初にかろうじて先頭を確保し、リードを広げていき、ベルモントS(G1)優勝馬ティズザローからの挑戦を退け、1¼馬身差の勝利を達成した。

 2019年はマキシマムセキュリティが道中先頭に立ち1位入線した。その後、同馬はコーナーを回ったときに外側に膨れて他馬の走行を妨害したとされ失格となるが、他の点ではこの1¾馬身差の勝利は近年のパターンにぴったり当てはまっていただろう。9番手から追い込んできて2位に入線したカントリーハウスがマキシマムセキュリティの失格後に勝利を手に入れることになる。

 2018年は、ジャスティファイが序盤に先頭を走るプロミシズフルフィルド(Promises Fulfilled)に迫って行き先頭を奪い、2½馬身差の勝利を達成した。それは、2017年にダービー優勝にむけてオールウェイズドリーミングが行ったパフォーマンスをほぼ繰り返すようなものだった。2016年は、ナイキストが2~3番手から迫って行ってダービー優勝を果たし、2015年はアメリカンファラオが2014年のカリフォルニアクロームと同様に、3番手から追跡して優勝した。

 過去7回のケンタッキーダービーでは、どの優勝馬も道中3番手以内につけていた。

 チャーチルダウンズ社がケンタッキーダービー出走馬の選出でマイル以上のレースを重視するようになって以来、今日にいたるまで唯一例外的な脚質だったのは2013年に17番手から追い込んで2½馬身差の勝利を決めたオーブである。実際、その年のダービーの½マイル(約800m)地点では、最終的な1着~3着馬は17番手、15番手(ゴールデンソウル)、18番手(レボリュショナリー)を走っていた。初めに先頭に立ったパレスマリスは、½マイルを不良馬場にしては速すぎる45.33秒で疾走した。同馬はその後、ベルモントSで本領を発揮し勝利を収めることになる。

 2003年~2012年の10年間のケンタッキーダービー優勝馬については、すべてが4番手もしくはそれよりも後方から追い込んでいる。そのうち3回は最後方からの追い上げだった。2009年にはマインザットバードが19番手から追い込み、2007年もストリートセンスが19番手から追い込み、2005年にはジャコモが18番手から追い込み優勝している。

 2012年はアイルハヴアナザーが7番手から突き抜け、2011年にはアニマルキングダムが12番手から追い込み、2010年のスーパーセイヴァーと2008年のビッグブラウンはそれぞれ前半6番手を走っていた。

 早くから飛ばして行くタイプの2006年のバーバロ、2004年のスマーティジョーンズ、2003年のファニーサイドでさえも、前半は4番手を走っていた。確かに、これらの中には馬が前半にスプリンタータイプの馬を追跡していたという事実もあった。これらのダービー優勝馬3頭が2013年以降に出走していれば、早い段階で2番手か3番手につけてレースを進めていたかもしれない。

 今年の"ロード・トゥ・ザ・ケンタッキーダービー"において現在までで最も印象的な先行逃げ切り型の出走馬は、サンフェリペS(G2)でライバル6頭を打ち負かしたライフイズグッド(Life Is Good)である。

 現在最高ポイントを獲得しているグレイテストオナー(Greatest Honour)は追い込み馬であるが、もしこの馬を応援するとしても、"望みなきにしもあらず"である。なぜなら、同馬を管理するシャグ・マゴーイ調教師は2013年に後方から追い込んで見事にダービー優勝を達成したオーブを手掛けたからだ。

By Frank Angst

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2021年3月12日「A Shift in Derby Running Styles」]

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