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2021年12月21日  - No.12 - 4

カリフォルニアクロームを手掛けたシャーマン調教師が引退(アメリカ)【その他】


 カリフォルニアクロームが熱狂的なファンを集め始めたとき、アート・シャーマン調教師(84歳)ほど素晴らしいトレーナーはいなかっただろう。シャーマン調教師は今年いっぱいで調教師を引退すると発表した。彼はこの派手な栗毛を管理して三冠競走のうちの二冠や多くのビッグレースを勝たせるという素晴らしい快挙を達成しただけでなく、つねにこの馬のファンと時間を惜しまず語らってきた。

 実際、"クロミー"として知られるファンたちは関わり続けていて、シャーマン氏はファンとのパートナーシップで2歳のカリフォルニアクローム牡駒チェイシングアルケミー(Chasing Alchemy)を所有している。この牡駒は2戦していずれも着外となっている。

 シャーマン氏はこう語った。「8人ほどの女性が彼の約10%を所有しています。皆さん"クロミー"でとても楽しんでいます。彼女らはひっきりなしに会っています。毎週土曜日に厩舎に来るのですよ。カリフォルニアクロームはそれほど人気のある馬なのです。いまだにいろんな手紙をもらいます。人々に愛されている馬なのです」。

 シャーマン氏は引退に際して、おそらく現在管理している馬を2人の息子のもとに移籍させるだろう。スティーヴ氏は北カリフォルニアに厩舎を持ち、アラン氏はケンタッキーで調教活動を行っている。そうすれば、アート氏は約62年連れ添うフェイ夫人とともに旅行する時間ができるだろう。彼は「生産の仕事も少しするつもりです」と言い、「しばらく前に膀胱がんを患いましたが、今はがんとは無縁の生活を続けていて、とても体調は良いのですよ」と付け足した。

 「全米に知り合いがたくさんいるのです。ルイドソダウンズ競馬場には行ったことがありませんが、カリフォルニアクロームの一部を所有していた友人がいて、毎年招待してくれているのです。オールアメリカンフューチュリティ(ルイドソダウンズのクオーターホースの2歳戦)を見に行くのは"やりたいことリスト"に入っていますよ」。

 イエローストーンパーク国立公園もシャーマン夫妻が訪れようとしている場所だ。また、息子たちやその馬に会うために北カリフォルニアやケンタッキーを訪れることもあるだろう。大きくなった孫たちは全米各地に住んでおり、夫妻には今や会いに行くべき2人のひ孫がいると語った。

 シャーマン氏といえばいつもカリフォルニアクローム(父ラッキープルピット 母ラブザチェイス 母父ノットフォーラブ)を連想させる。この馬はペリー・マーティン氏とスティーヴ・コバーン氏により生産・所有された。8,000ドル(約92万円)のクレーミング競走で競走生活を終えた牝馬から生まれたカリフォルニア州産のカリフォルニアクロームは無名の存在から名を上げて、近年で最も人気ある競走馬の1頭となった。

 スティーヴ・シャーマン調教師は北カリフォルニアでマーティン氏とコバーン氏の所有馬を管理していた。ある日、アート氏はパドックで彼らに会った。両氏はレースに出走させようとしている2歳馬について彼に話した。

 アート氏はこう語った。「"いいですよ"と言いました。それがカリフォルニアクロームだとは知らなかったのです。彼らはふざけて"次のケンタッキーダービー馬を手に入れたのですよ"と言っていましたね。私は"ケンタッキーダービー馬を手掛けてみたいので、それが本当だったらいいですね"と言いました。そしてこの馬がやって来た瞬間、彼の走り方が気に入りました」。

 カリフォルニアクロームは確かに2014年に次のケンタッキーダービー馬となった。そしてその年のプリークネスS(G1)に加え、2016年ドバイワールドカップ(G1)や総賞金100万ドル(約1億1,500万円)のパシフィッククラシック(G1)なども制した。最終的な獲得賞金は1,475万2,650ドル(約16億9,655万円)に上った。

 アート・シャーマン氏はカリフォルニアクロームのほかにも多くの優良馬を手掛けてきたが、はじめは攻馬手として、次に騎手として、そして調教師として関わってきた。1950年代にメッシュ・テニー(Mesh Tenney)調教師のもとで騎乗し、人気あるカリフォルニア州産馬スワップス(Swaps)によく調教をつけていた。

 「何度か調教で彼に乗りました。追い切りをした時、一度マイルを1分34秒で走ったことがありました。その後、レースに出走して1分33秒ちょっとのコースレコードを打ち立てました。スーパーホースでしたよ」。

 スワップスが1955年ケンタッキーダービーを制したとき、シャーマン氏はチャーチルダウンズ競馬場に同行した。そしてカリフォルニアクロームを連れてふたたびこのレースに挑んだとき、シャーマン氏はこのレースを制した史上最高齢の調教師となった。当時77歳だったシャーマン氏は、チャーリー・ウィッティンガム調教師がそれまで保持していた記録を抜いた。ウィッティンガム調教師は76歳のときにサンデーサイレンスで1989年ケンタッキーダービーを制していた。

 サイレンルアーが2006年インビテーショナルH(G1 ハリウッドパーク)を制して、シャーマン調教師にとって最初のG1優勝馬となった。シャーマン氏は前年、ベイメドウズ競馬場のクレーミング競走で馬主のスチュアート・ケッセルマン氏とトニー&マリリン・メルコニアン夫妻のためにサイレンルアーを5万ドル(約575万円)で手に入れていた。

 シャーマン氏はこれまでに、2011年クレメントLハーシュS(G1)優勝馬ウルトラブレンド、2010年ハリウッドダービー(芝G1)優勝馬ハイミッシュハイ、2007年サイテーションH(芝G1)優勝馬ラングフィールド、1994年デルマーブリーダーズカップH(G2)優勝馬ライカティルヒル(Lykatill Hil)などを手掛けてきた。

 シャーマン氏は11月24日までに2,261勝を挙げ、管理馬の獲得賞金総額は4,530万ドル(約52億950万円)以上に上る。

 カリフォルニア州産のウルトラブレンドはシャーマン氏が発掘したもう1頭の掘り出し物だった。

 「私たちは彼女を何頭かとまとめて1万6,000ドル(約184万円)で購買しました」とシャーマン氏は語った。

 ニルス・エリクソン氏が所有し、スティーヴ&アート親子が調教したウルトラブレンドは賞金101万5,646ドル(約1億1,680万円)を獲得し、2011年のファシグ・ティプトン社11月プレミア繁殖セール(ケンタッキー州レキシントン)に上場され日本の吉田勝己氏により70万ドル(約8,050万円)で購買された。

 ニューヨーク州生まれのシャーマン氏は7歳のときに家族とともに南カリフォルニアに移住し、その後ウィッティア高校に通った。騎手としてメリーランド州のレースで勝利した際に同じくウィッティア高校に通っていた当時副大統領のリチャード・ニクソン氏からトロフィーを授与されたことを彼は思い出す。シャーマン氏はそのレースの後、ニクソン氏と学校の思い出を語り合った。

 シャーマン氏は「彼は競馬が大好きでした。競馬が好きな人は誰でも私の友人でした。かなり素晴らしい思い出ですよ」と述べた。

 シャーマン調教師の顧客には、ロスアラミトス競馬場のオーナーであるエド・オールレッド博士などがいる。同競馬場の次のサラブレッド競走開催中(12月3日~12日)に、シャーマン氏のキャリアを記念したイベントが開催される予定である。

By Tracy Gantz

(1ドル=約115円)

[bloodhorse.com 2021年11月23日「Sherman, Trainer of California Chrome, to Retire」]


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