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2021年01月22日  - No.1 - 1

2020年は賞金総額が減少するも発売金は堅調(アメリカ)【開催・運営】


 米国競馬界は新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために導入された予防策と制約のために競馬開催日程の4分の1が中止となるという苦渋を味わったが、馬券購入者は施行されたレースの馬券を購入して競馬をサポートした。一方、馬主は開催日減少による賞金総額減少に直面した。

 競馬ビジネスは困難な年において、馬券発売の技術の進化、とりわけオンライン投票(ADW)のおかげで、他のスポーツに比べて売上げが堅調だった。ファンが競馬場・場外馬券発売所に入場できないとき、ADWはファンが自宅にいながら馬券を購入することを可能にした。エクイベース社が1月5日に発表した『2020年米国サラブレッド競馬界の経済指標』によれば、2020年は開催日数が25%減少したにもかかわらず、発売金総額は109億ドル(約1兆1,445億円)に上り2019年から1%未満減少したにすぎなかった。

 馬券購入者によるサポートの最新例は、12月26日のサンタアニタ開催である。この日の発売金は2,300万3,159ドル(約24億1,533万円)に上り、サンタアニタ競馬場の冬・春開催開幕日の最高記録となった。

 同競馬場の上席副社長兼場長のネイト・ニュービー氏はこう語った。「私たちの競馬番組をサポートし、この開幕日を強力なものとするために貢献してくれたファンの皆様、そして、馬主、調教師、騎手、その他の関係者に感謝したいと思います。多くの人々にとって厳しい年でした。自宅で観戦して馬券を購入するファンに世界クラスの競馬を届けられることに満足しています」。

 「予防策が緩和されて誰もが素晴らしい競馬をライブで楽しめるようになり、ファンとスタッフがサンタアニタに戻って来るのが待ち遠しいです。その一方で、現在のように競馬を運営できていることをありがたく思っています」。

 2020年の1日当たりの平均発売金は330万ドル(約3億4,650万円)を超えた。ファンは実施された競馬開催日において、前年をおよそ33%上回る賭けを行ったことになる。

 競馬場は無観客開催を実施できた一方で、全日程、少なくとも日程の一部を中止せざるをえなかった競馬場も多かった。それにより、競馬開催日数は前年比25%減の3,302日、競走数は前年比23%減の2万7,700競走となった。

 2020年の賞金額は前年比25%減の8億6,980万ドル(約913億2,900万円)となり、開催日数・競走数の減少がしっかりと反映された。また収入を賞金資金に提供しているカジノ施設などの閉鎖により、賞金額は影響を受けた。それに、ADWを通じて馬券が購入されるようになったことで打撃が継続することが予測されている。なぜなら、ADW業者が売上げの一部を受け取ることで、結果的に賞金資金や競馬場に提供される収益比率が低下するからだ。

 場内発売ではなくADWを通じてより多くの馬券購入が行われるというビジネスモデルに関する懸念、そして長期に及ぶカジノからの資金提供の制限があったにもかかわらず、実施された競走への賞金額はかなり堅調であった。2019年には、1日当たりの平均賞金額は26万3,937ドル(約2,771万円)、1競走当たりの平均賞金額は3万2,257ドル(約339万円)だった。2020年にそれらの減少幅はわずかであり、1日当たりの平均賞金額は前年比0.2%減の26万3,408ドル(約2,766万円)、1競走当たりの平均賞金額は前年比2.7%減の3万1,400ドル(約330万円)だった。

 実施した競走の賞金を概ね維持できた一方で、競走数減少による賞金総額の減少は、馬主・調教師などの競馬参加者にとって厳しいものであったことが分かった。賞金総額8億6,980万ドル(約913億2,900万円)は1997年以来最低であり、物価上昇率は考慮されていない。

 一方、ホースマンが実施された競走をサポートしたことで、1競走当たりの平均出走頭数は7.94頭(前年比5.5%増)となった。

 全米サラブレッド競馬委員会(NTRA)の理事長兼CEOのアレックス・ウォルドロップ氏は、「競馬コミュニティーには驚異的な回復力があります。新型コロナウイルスの感染拡大による広範な悪影響にもかかわらず、発売金がおよそ110億ドル(約1兆1,550億円)に上り安定状態を保った事実がそれを実証しています。米国のみならず世界中でこれからも続く前例のない困難な時期において、顧客と裏方で働く必要不可欠な競馬参加者が競馬を続行させ競馬産業を支えてくれたことに、感謝したいと思います」と語った。

 もしかすると適切な方向に向けて動いていることの前兆かもしれない。2020年で最も業績が良かった第4四半期では、発売金は前年同期比5.6%増の25億7,641万1,336ドル(約2,705億2,319万円 )となった。そして、競馬開催日数の13%減、競走数の11%減による賞金総額の減少はわずか12%減の2億4,053万7,331ドル(約252億5,642万円)にとどまった。
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By Frank Angst

(1ドル=約105円)

[bloodhorse.com 2021年1月5日「Wagering Steady, Purses Decline in Challenging 2020」]


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