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2020年04月22日  - No.4 - 1

北米の予後不良事故率、2009年~2019年に23.5%低下(アメリカ)【開催・運営】


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 2019年の北米の予後不良事故率は、サンタアニタパーク競馬場で事故が頻発したにもかかわらず、2018年と比較して8.9%減少した。

 出走馬1,000頭当たり1.53件という予後不良事故率は、11年前に米国ジョッキークラブの"事故馬データベース(Equine Injury Database:EID)"が米国・カナダの予後不良事故を調査・記録し始めてから最も低い。EIDが実施しているレース中の予後不良事故の追跡調査には年を追うごとに多くの競馬場が参加し、比較を容易なものにしている。

 2019年のデータによると、この調査に参加する競馬場の平地レース出走馬の99.84%が無事にレースを完走している。2009年~2019年において、予後不良事故率は全体で23.5%低下している。

 ジョッキークラブの上級顧問クリスティン・ワーナー(Kristin Werner)氏は、「2009年から予後不良事故率が23.5%低下しているという事実は、サラブレッド産業の馬の安全へのコミットメントが実を結んでいること示しています」と語った。

 レース中の予後不良事故には多くの要素が関わるが、年間報告は開始当初より馬場の種類ごとにまとめられている。2019年の出走馬1,000頭当たりの予後不良事故率はダートで大幅に低下したが、芝では急上昇しており、懸念の種となっている。

ダートの予後不良事故率

(出走馬1,000頭当たり1.6件)

 ダートにおける予後不良事故率は、2018年から2019年に14.2%低下した。2009年~2019年では24.1%低下している。

芝の予後不良事故率

(出走馬1,000頭当たり1.56件)

 芝における予後不良事故率は、2018年から2019年に30%上昇した。ただし2009年~2019年では19.6%低下している。

人工馬場の予後不良事故率

(出走馬1,000頭当たり0.93件)

 人工馬場における予後不良事故率は、2018年から2019年に24%低下し、記録開始以来初めて1.0件を下回った。2009年~2019年では37%低下している。


 グラスゴー大学の獣医疫学の教授であるティム・パーキン(Tim Parkin)博士はこう語った。「2019年の予後不良事故率はダートにおいてはこれまでで最低の1.60件となりましたが、芝においては前年の1.20件から1.56件に上昇しました。芝レースの出走頭数は増加傾向にあり、芝レース特有の一連のリスクファクター(危険因子)がその予後不良事故率の上昇を生じさせたと考えられます。継続的な追跡調査で、そのリスクファクターを突き止めたいと思います。そのためには、調教での故障報告データが大いに役立つでしょう」。

 ワーナー氏もパーキン博士の意見に賛同し、そのようなデータが予後不良事故を減らす手段を見つけるのに役立つだろうと指摘した。

 「競馬場で調教中の故障報告データとその治療・処置に関するデータを収集することで、競馬場職員は出馬投票の前であってもリスクのある馬を特定する能力が高められ、リスクモデルの精度は大幅に向上します」。

 2012年3月から、各競馬場はジョッキークラブのウェブサイトにおいて、EIDの統計を任意で公表できるようになった。2019年に統計を任意公表した27競馬場の予後不良事故率は1.53件で、公表しなかった競馬場の予後不良事故率1.52件とほぼ同じだった。2020年末までに、北米の平地競馬開催の99%を占める111競馬場がEIDにデータを提出すると見込まれる。

 サンタアニタ競馬場の予後不良事故率が2018年の2.04件から2019年には3.01件に上昇したという問題は、文書に記されていた。同競馬場は悪戦苦闘したものの、年間を通じて状況は改善された。同競馬場は冬・春開催での予後不良事故の頻発に対応するために一旦閉場し、新たな安全ルールを採用して3月29日に競馬を再開した。その後、予後不良事故率は開催初期の半分以下である2.16件となった。

 NYRA(ニューヨーク競馬協会)は低水準の予後不良事故率を達成した。NYRAが所有するアケダクト、ベルモントパーク、サラトガの各競馬場は2019年に合計217日の競馬開催を行い、その予後不良事故率は出走馬1,000頭当たりわずか1.14件だった。一方、チャーチルダウンズ競馬場はEIDの統計を公表していないが、2018年から2019年にかけて改善が見られた。

 NTRA(全米サラブレッド競馬協会)の安全・公正に関する同盟(Safety and Integrity Alliance)の認定競馬場は、非認定競馬場と比較してその予後不良事故率が低い(1.46件 対 1.59件)。

 距離別では、例年どおり6ハロン(約1200m)未満の短距離レースの予後不良事故率が最も高かった。馬齢別では、前年同様2歳馬の予後不良事故率が一番低かった。

 EIDの統計では、レース後72時間以内に馬が死に至った事故を予後不良事故としている。この統計は正式なサラブレッド競走だけを対象としており、障害競走は含んでいない。また、報告の適時性など多くの考慮事項により数値が変わることがある。

 EIDの調査に参加する競馬場の一覧と、統計を任意公表した競馬場からの詳細なデータは以下のURLで閲覧できる。

 http://jockeyclub.com/default.asp?section=Advocacy&area=11


By Blood-Horse Staff


[bloodhorse.com 2020年3月12日
「Despite problems at Santa Anita Park, racing in U.S. and Canada enjoys safest year」]


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