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2020年10月20日  - No.10 - 3

ジャパンとモーグルの全妹、今年の1歳馬最高価格で落札(イギリス)【生産】


 マイケル・ヴィンセント・マグニア(MV Magnier)氏(クールモアの総帥ジョン・マグニア氏の息子)はタタソールズ社10月1歳セール・ブック1の3日目(10月8日)において、三者による激しい競り合いの末、ジャパン(Japan)とモーグル(Mogul)の全妹(父ガリレオ)を340万ギニー(約4億8,195万円)で落札した。340万ギニーは今年世界中で取引された1歳馬の最高価格である。

 鑑定人のエドモンド・マホニー(Edmond Mahony)氏は、血統書の中で最も優秀かつ活発なファミリー(牝系)の1つに属する馬を購買するチャンスを"千載一遇の好機"と表現した。そしてセリ場を見渡して、「200万ギニー(約2億8,350万円)の提示をお願いするのも不適当ではないと思います」と述べた。

 最初の提示額50万ギニー(約7,088万円)はどうしようもないほどに楽観的すぎるように思われた。しかし提示額は矢継ぎ早に5万ギニー(約675万円)ずつ引き上げられ、競り合いを演じる購買者のあいだで事態が推移し続けた。セリの1日目にバーレーン人馬主のためにキングマン牡駒を270万ギニー(約3億8,273万円)で落札したオリバー・セントローレンス(Oliver St Lawrence)氏は再びロープのそばの位置におり、提示額を7ケタ(100万ギニー以上)に引き上げた人々の1人だった。

 ゲオルグ・フォン・オペル(Georg von Opel)氏と他のクールモアのメンバーたちと一緒にいたマグニア氏は、セントローレンス氏からほとんど遅れることなく価格を提示し、提示額を毎回6ケタ(10万ギニー以上)ずつ上げるセントローレンス氏と対抗した。セントローレンス氏が250万ギニー(約3億5,438万円)を提示したとき、ファハド殿下とオイシン・マーフィー騎手に付き添われたカタールレーシングのデヴィッド・レッドヴァース氏がそれを10万ギニー(約1,418万円)上回る価格を提示して競り合いに加わった。

 そのときマグニア氏から明確な意思表示がなされた。提示額を40万ギニー(約5,670万円)引き上げて300万ギニー(約4億2,525万円)としたのだ。そこでセントローレンス氏は脱落したが、レッドヴァース氏はバトンを受け取り、パレードリングのそばのせり介添人の演壇にいたタタソールズ社のマット・プライアー(Matt Prior)氏にそれよりも10万ギニー上回る価格を提示した。

 しかし、マグニア氏が提示額を340万ギニーにまで引き上げることに同意したとき、カタールレーシング陣営はそれ以上の価格を提示しなかった。この牝馬の母はもちろん、ニューセルズパークスタッド(Newsells Park Stud)のシャスタイ(Shastye)である。シャスタイの仔が1歳時にタタソールズ社のセリで取引された総額は驚くべき1,420万ギニー(約20億1,285万円)に上る。

 マグニア氏はフォン・オペル氏のヴェスターベルク牧場(Gestüt Westerberg)と共同でこの牝駒を落札したことを認め、こう語った。「まず、アンドレアス・ジェイコブズ(Andreas Jacobs)氏(ニューセルズパークスタッドのオーナー)とその家族は長年にわたってクールモアを寛大に支援してくれているので、非常に素晴らしい牝駒を良い値で落札できたことに満足しています」。

 「私たちはジャパンとモーグルが属するこのファミリーから大きな幸運を得ています。このファミリーからはいつも見栄えの良い馬が現れます。それに、母シャスタイは後に偉大な競走馬となる風貌の素晴らしい仔馬を送り出します。この傾向が続き、彼女が質の高い牝駒であることに期待しましょう」。

 メディアで話題となりそうな落札価格にもかかわらず、この牝駒はシャスタイの仔の中では最高価格ではない。その栄誉は、2013年にマグニア氏により360万ギニー(約5億1,030万円)で落札されたG3勝馬サーアイザックニュートン(Sir Isaac Newton)が獲得している。

 シャスタイ(父デインヒル)は2005年に62万5,000ギニー(約8,859万円)で購買されてニューセルズパークスタッドの繁殖牝馬群に加わってから、今や100万ギニー(約1億3,500万円)以上の1歳馬を5頭送り出している。

 マグニア氏はモーグルが4歳も現役を続けることを認めたが、ジャパンが来年弟と一緒にバリードイルで現役を続行するか、それとも種牡馬入りするかを明言するのは時期尚早であると述べた。そして「2頭は凱旋門賞で走ることになっていましたが、出走取消を余儀なくされました。今後の目標レースとして香港国際競走・ブリーダーズカップ・日本が残っています」と付け足した。

 ニューセルズパークスタッドの場長であるジュリアン・ドラー(Julian Dollar)氏は当然のことながらこの結果に満足していたが、今回の記録的な落札には悲しさも漂っていたと説明した。

 「彼女は驚くべき価格で落札されましたが、血統・馬格において目利きが欲しがる馬なので、その価格に十分にふさわしかったと思います」。

 「彼女をこのセリに上場するのは難しい決断でした。私は場長なので、彼女のような牝馬を生産し、それらの牝馬がレースで勝ち、そして繁殖牝馬として戻ってくることを夢見ています。それらの牝馬と別れることを夢見ているわけではありません」。

 「それでも、クールモアはシャスタイを繁殖牝馬として成功させるためにベストを尽くしてくれているので、彼女がそこに行くことに満足しています。私たちは過去にクールモアと提携し、仔馬を共有したこともあります。そのような信頼関係のもとに、ジャパン、モーグル、そして今回落札された牝駒のような馬を育てているのです」。

 「クールモアは彼女を手に入れるのにふさわしいですが、生産界とニューセルズを大いに支援してきたファハド殿下には申し訳なく思います」。

 厳しい経済情勢を鑑みて、ニューセルズがこの良血牝駒の上場を考え直すことを期待した人々もいたかもしれない。しかしドラー氏は市況を評価した時点で、若馬を手元に置く考えは消えたと説明した。

 「私たちはクールモアも乗り気だったので、クールモアと提携して彼女を出走させることを考えていました。しかし、数週間にわたって事態が深刻化することが明らかになりました。そのため入ってくるお金を確保するために、おそらく彼女を売却する必要がありました」。

 「彼女を上場するのは一大事だったので、落札されたときには頭の中でさまざまな感情が入り混じりました。熱心に取り組んできた私たちのチームは大きな報いを得ました。また、1歳馬マネージャーのマーク・グレイス(Mark Grace)氏とそのチームは懸命に働いていたので、この結果は大変素晴らしいです。グレイス氏がこの牝駒を溺愛していたのはよく分かっていました」。

 ドラー氏はシャスタイの近況についても語った。「残念なことに彼女は去年、ガリレオの仔を受胎しませんでした。今年も二度種付けを行いましたが受胎せず、牧場に連れて帰りました。そして今はドバウィの仔を受胎しています。彼女が引退するまでに、あと数頭の仔を生んでくれることを祈っています」。

 「シャスタイは調子がよさそうで、とても健康です。彼女はどの牝馬よりも、ニューセルズを商業的に成功した牧場とするために貢献してくれました。私とニューセルズのチームを忙しくさせ続けてくれるので、ありがたく思っています」。

By James Thomas
(1ポンド=約135円)

[Racing Post 2020年10月8日「Galileo sister to Japan becomes world's most expensive yearling at 3,400,000gns」]

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