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2019年10月23日  - No.10 - 6

ドイツG1についての10の事柄(ドイツ)【その他】


1. 凱旋門賞(G1)のステップレースの役割を担うバーデン大賞

 ドイツのG1・7レースの1つであるバーデン大賞(G1 バーデンバーデン競馬場)は、今年は9月1日に施行された。世紀の変わり目から今日にいたるまで凱旋門賞の完璧なステップ競走の役割を果たしたことが二度あった。2002年にマリエンバード(Marienbard)、2011年のデインドリーム(Danedream)が、このレースを制した後に凱旋門賞を制覇したのである。凱旋門賞でのマリエンバードとデインドリームの出走直前オッズはそれぞれ17倍と21倍にとどまった。それでも、これまでバーデン大賞(芝2400m)を制してから凱旋門賞に出走した馬はたった9頭しかいないのにそのうちの2頭が優勝していることを考えれば、このレースがその1ヵ月後に施行される凱旋門賞(パリロンシャン競馬場)の馬券予想において旨味のあるヒントとなることを裏付けている。

2. なぜ「バーデンバーデン競馬場」なのか?

 「バーデン(Baden)」は古高ドイツ語(8世紀~11世紀半ば頃の現在のドイツ中部~南部で使われていた言語)で英語の「bath(風呂)」や「spa(温泉)」と同じような意味である。英国には、天然温泉があることで「バース(Bath)」と名付けられた都市があり、いくつかの鉱泉のある地域の地名には「スパ(Spa)」が含まれている。ドイツの場合は地名に「バート(Bad)」や「バーデン」のつく場所が30以上ある。「バーデン辺境伯領地内にあるバーデン」は他の地名と区別するために「バーデン=イン=バーデン」と名付けられたが、最終的に「バーデン=バーデン」という地名に落ち着いた。

3. バーデン大賞の創設

 バーデンバーデン競馬場は、ドイツとフランス(アルザス地方)の国境にあるライン川にほど近い町イフェッツハイム(バーデンヴュルテンベルク州)に位置する。バーデン大賞は1858年に創設され、1948年と1949年はイフェッツハイム大賞という名前で施行された。

4. バーデン大賞で多くの勝利を挙げる英国の調教師

 英国を拠点とする調教師の中でバーデン大賞において最多の勝利を挙げているのは、イアン・ボールディング(Ian Balding)調教師とサイード・ビン・スルール調教師である。ボールディング調教師は1982年~1985年の4年間で、このレースを3勝している。1982年にグリントオブゴールド(Glint Of Gold)、1983年にダイヤモンドショール(Diamond Shoal)、1985年にゴールドアンドアイボリー(Gold And Ivory)でこのレースを制した。これら3頭はすべてポール・メロン(Paul Mellon)氏により所有されており、名馬ミルリーフにより有名になった黒とゴールドの勝負服を背負っていた。一方、ビン・スルール調教師は、2002年にマリエンバード(同年の凱旋門賞優勝馬)、2003年にマムール(Mamool)でこのレースを制した。そして、その16年後の2018年にベストソリューション(Best Solution)がパット・コスグレーヴ(Pat Cosgrave)騎手を背にこのレースを制覇したことで賞金13万3,000ポンド(約1,862万円)を英国に持ち帰った。この年はアンドレア・アッゼニ騎手が騎乗したデフォー(Defoe)が2着となったことで、英国調教馬のワンツーフィニッシュとなった。

5. ほかにバーデン大賞で多くの勝利を挙げた英国の名伯楽

 国際競馬のパイオニア的存在である2人の調教師も、ニューマーケットからバーデンバーデンに遠征し、成功裏に勝利を掴んだ。マイケル・ジャーヴィス(Michael Jarvis)調教師は、1988年にキャロルハウス(Carroll House 1989年凱旋門賞優勝馬)、2001年にモルシュディ(Morshdi)でバーデン大賞を制した。一方、クライヴ・ブリテン(Clive Brittain)調教師は、2004年と2005年に強靭で闘志あふれるウォーサン(Warrsan)でこのレースを連覇した。

6. ドイツ最高賞金レースは独ダービー(G1)

 スタミナのあるドイツ血統を反映して、ドイツのG1競走は全て中距離であり、5レースは2400mで施行されている。ドイツ最高額賞金レースは、7月の独ダービー(G1 ハンブルク競馬場)である。英国を拠点とする調教師でこのレースを制したのは、後に不祥事を起こしたマームード・アル・ザルーニ調教師だけである。その管理馬バズワード(Buzzword)が2010年、ロイストン・フレンチ(Royston Ffrench)騎手を背にこのレースを制している。優勝賞金35万ポンド(約4,900万円)の今年の独ダービーには、ジョー・テュート(Joe Tuite)調教師がサリーサンダー(Surrey Thunder)を出走させたが、地元調教馬ラッカリオ(Laccario)の5着に敗れた。

7. ダルマイヤー大賞(G1)でムニュイジエ調教師がG1初優勝

 英国のサセックスを拠点とするダヴィッド・ムニュイジエ調教師にとって、今年のダルマイヤー大賞(G1 ミュンヘン競馬場)は忘れられないものとなるだろう。ダンステリア(Danceteria)がこのレースを制し、同調教師にG1初優勝をもたらしたのだ。ジェイミー・スペンサー騎手を背に先頭でゴールを駆け抜けたダンステリアは今年、海外遠征で負け知らずであり、メゾンラフィット競馬場とパリロンシャン競馬場でも勝利を収めている。

8. アイルランド調教馬が活躍するダルマイヤー大賞

 以前バイエルンツフトレネンという名前で親しまれたダルマイヤー大賞は、数ある独G1競走の中でも特にアイルランド調教馬が目標とするレースである。1990年代には、障害馬も管理するマイケル・カウンツ(Michael Kauntze)調教師のクーヨンガ(Kooyonga)が1992年に、ダーモット・ウェルド調教師のマーケットブースター(Market Booster)が1993年に、ジョン・オックス調教師のティマリダ(Timarida)が1996年にこのレースを制した。

9. ドイツ最古のG1競走と最新のG1競走

 ドイツ最古のG1競走は1857年創設の独オークス(G1 ディアナ賞)である。英国を拠点とする調教師の中でこのレースを制したのはウィリアム・ハッガス調教師だけである。同調教師が手掛けたダンシングレイン(Dancing Rain)は2011年、キーレン・ファロン騎手を背に独オークスに挑み優勝した。その優勝賞金19万8,000ポンド(約2,772万円)は、同馬がその前に英オークス(G1 エプソム競馬場)で獲得した優勝賞金を1万3,000ポンド(約182万円)上回っていた。

 最も新しいG1競走は1957年にゲルゼンキルヘン競馬場で創設されたバイエルン大賞(G1)であり、以前のレース名はアラルポカルだった。このレースは通常3歳~5歳馬が優勝するが、その傾向は2002年に年齢が2桁の馬が優勝することによって中断された。マーク・ジョンストン調教師が手掛けた優秀な10歳馬ヤヴァナスペース(Yavana's Pace)がキース・ダルグリーシュ(Keith Dalgleish)騎手を背にこのレースを制したのだ。

10. 英国・アイルランドの騎手の中ではデットーリ騎手が独G1最多勝

 フランキー・デットーリ騎手は独G1・13勝を挙げており、これは英国・アイルランドを拠点とするジョッキーの中で、ずば抜けた独G1勝利数である。同騎手の独G1優勝には、ベルリン大賞3勝、オイロパ賞3勝が含まれている。また1995年には、ブルーノ・シュッツ(Bruno Schutz)調教師が手掛けた牡馬ジャーマニー(Germany 父トランポリーノ)でG1・2勝を果たした。ジャーマニーはこれらのG1勝利により種牡馬入りを果たし、チェルトナムフェスティバルの優勝馬のフォーヒーン(Faugheen)とサムクロ(Samcro)を送り出したことで有名だ。

By John Cobb

(1ポンド=約140円)

[Racing Post 2019年9月1日「10 things you might not know about...German Group 1」]


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