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2019年10月23日  - No.10 - 1

パリ会議:「馬の福祉」と「公共認識」が中心的な話題(国際)【開催・運営】


 10月8日(月)の第53回IFHA(国際競馬統括機関連盟)年次総会(通称:パリ会議)では、「馬の福祉」と「公共認識」が中心的な話題となった。

 第1回目の年次総会は1967年10月9日にフランス馬種改良奨励協会により開催され、9ヵ国から14人が出席した。1994年からはIFHAがフランスギャロ(France Galop)本部でこの年次総会を開催しており、今年は50ヵ国以上から競馬界の役員やメディア関係者が多数参加した。

 IFHA会長のルイ・ロマネ氏は、「私たちが競馬を適切に統轄するためにそれぞれ直面している問題は、かつてないほど深刻なものになっていると思われます。私たちのグローバルな競馬産業を運営し成長させていく上での主な課題には、"競馬の公正確保への脅威"、"馬の福祉への正当な懸念"、"競馬への公共認識と社会的受容を高めること"が含まれます。こうした問題について考えるとき、IFHAのような国際団体が存在しこれらの問題に対処できるのは前向きな要素です」と語った。

 基調演説を行ったのは、2015年~2018年に英国のスポーツ大臣を務めたトレイシー・クラウチ(Tracey Crouch)下院議員である。英国議会に出席するために会場に来られなかったクラウチ氏の基調演説は、ビデオ映像で流された。

 同氏は演説においてこう語った。「多くの国々において、競馬の施行には社会的に認可が与えられており、一般の人々が競馬産業の活動とやり方を受け入れていると理解されています。この認可の代償として、競馬産業には、生産馬・競走馬をケアする義務があることを認識し、それを示すことが求められています。その義務が実行できないのであれば、認可は容易に取り消されます」。

 クラウチ氏は、競馬界は以下の行動を取ることが必要であると説明した。

(1)高水準の馬の福祉を確保するために競馬界がどのような措置を取るのかについて、十分なコミュニケーションを図ること。

(2)競馬反対論者が感情的に抗議してきたときに、馬の福祉のために行ってきた投資とそれによって得られた成果を明らかにして反論できるように備えること。

(3)競馬産業内のこれまでの姿勢に疑問を投げ掛け、幅広い視点から物事を見ること。

 クラウチ氏はこう語った。「外部の厳しい声が福祉の向上に役立つのは当たり前のことです。先を見越し、理にかなった変化をもたらすために、競馬界での議論を伝えてきました。さもなければ、政策立案者によって、世論を考慮した変化を強いられるからです。その変化は競馬産業の込み入った事情からかなりかけ離れたものとなります」。

 「今こそ競馬産業にとってのターニングポイントです。福祉の課題に取り組むときであり、そうしないと、競馬ファンは失われてしまい、競馬産業は低迷するでしょう。これまでに多くの対策が取られてきましたが、まだやるべきことがあります」。

 クラウチ議員の基調演説の後、BHA(英国競馬統轄機構)のCEOニック・ラスト氏が、『過去20年間で馬の福祉がどれほど進展したか』についてのセッションで発表した。このセッションのパネルディスカッションには、カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)の馬医療担当理事であるリック・アーサー(Rick Arthur)博士、BHAの最高規制責任者ブラント・ダンシー(Brant Dunshea)氏、フランスギャロの最高獣医責任者でありIFHAの技術アドバイザーのポール-マリー・ガド(Paul-Marie Gadot)博士、香港ジョッキークラブ(HKJC)の獣医規制・福祉・バイオセキュリティー部門の部長であるブライアン・スチュワート(Brian Stewart)博士が参加した。

 『現在の消費者環境・政治環境に関する見通し』についてのパネルでは、経営コンサルタント会社のベータバブーン社(beta baboon)の創設者リチャード・ハイトナー(Richard Hytner)氏が発表し、その後のパネルディスカッションの司会も務めた。パネルディスカッションには、フランスのクリケット・ヘッド元調教師、競馬メディア関係者のリシ・パーサド(Rishi Persad)氏、ニュージーランドサラブレッドレーシング(New Zealand Thoroughbred Racing)のヴィクトリア・カーター(Victoria Carter)副会長が参加した。

 ハイトナー氏はその後の『競馬統轄機関はどのようにして現在直面している福祉の問題に対処できるか?IFHAはどのような役割を果たすべきか?』についてのパネルディスカッションでも司会を務めた。そのパネルディスカッションには、レーシングオーストラリア(Racing Australia)の会長グレッグ・ニコルス(Greg Nichols)氏、ブリーダーズカップ社(Breeders' Cup Ltd.)の会長兼CEOをもうすぐ退任するクレイグ・フレイヴェル(Craig Fravel)氏、IFHAの専務理事であり、HKJCの競走担当専務理事であるアンドリュー・ハーディング(Andrew Harding)氏が参加した。

 この日それまでに、米国ジョッキークラブのCOOでありIFHAの副会長の1人であるジェームズ・ギャグリアーノ(James Gagliano)氏が、午前の主要セッション『国際競馬の発展』で発表を行っていた。

 ギャグリアーノ氏は、「私たちは本日、競馬が国際スポーツであるため、この総会に出席しています。毎年この総会において、多くの国々の代表者と会い、"競馬を世界的に改善する"という共通の目標に向かって取り組んでいることを認識し、驚くとともに興奮しています」と語った。

 そのセッションのパネルディスカッションは、パーサド氏が司会を務め、日本の調教助手である橋田宜長氏、ヘッド元調教師、アルゼンチンのフィルマメント牧場(Haras Firmamento)のエゼキル・ヴァレ(Ezequiel Valle)場長が参加した。また、ジョン・ゴスデン調教師があらかじめ録画されたインタビューで話した。

 そのパネルディスカッションに続いて、南アフリカ競馬機構のケン・トゥルター(Ken Truter)氏が、計画されている第38回アジア競馬会議(2020年2月にケープタウンで開催予定)について紹介した。さらに、第1回サウジカップ(2020年2月29日に施行予定)についての発表が行われた。

 IFHAのウェブサイトにおいて、今回のパリ会議の発表の動画を視聴することができる。

https://www.ifhaonline.org/default.asp

By IFHA Press Release

[Thoroughbred Racing Commentary 2019年10月9日「Racing 'has more to do if it is to avoid having change forced upon it」]


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