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2018年06月20日  - No.6 - 1

韓国は次の競馬大国となるか(韓国)【開催・運営】


 そのアプローチが単に"かわいい"と見なすだけで、ある種の新規性を持つ韓国競馬を歯牙にもかけないことは、控えめに言っても"ばかげたこと"だろう。

 ソウル競馬場(別名:レッツランパーク)に入るときに目にする馬テーマパーク『ウィニーワールド(Whinny World)』の看板は、そのアプローチの1つである。また、コリアンダービーの前に色鮮やかに着飾った競馬界のリーダーたちが舞台上に現れたこともその1つだと言えよう。

 しかし、これらはKRA(韓国馬事会)が頭角を現しつつある競馬勢力だという事実を隠すものではない。韓国は、競馬全体と生産界での地位を巡って隣国日本と競っているわけでも、出走馬の質や発売金を巡って香港と競っているわけでもない。それでも韓国は、アジア地域において力を持ちつつある。

 5月13日(日)のコリアンダービーデーには、ソウル競馬場に5万人のファンが詰めかけ、プサン競馬場でも場外馬券発売が行われた。その発売金は驚くべきことに7,000万ドル(約77億円)に上ったと見込まれる。金曜日と土曜日にはそれぞれ3,000万ドル(約33億円)と5,000万ドル(約55億円)の発売金を達成していた。年間発売金は70億ドル(約7,700億円)を超える。

 一番人気がある馬券は、馬連(控除率27%)であり、発売金全体の約70%を占める。

大衆へのアピール

 韓国の大衆文化に精通しているわけではないが、これらの数字により、韓国競馬の魅力が大衆の間で分かち合われていることがうかがえる。

 そのアピールは確かに洗練されている。KRAの会長兼CEOであるキム・ナクスン(Kim Nag Soon)氏は、第37回アジア競馬会議(5月13日~18日)のゲストを歓迎するスピーチの中でこう強調した。

 「朝鮮戦争後の焼け野原から、世界で最も進化した競馬体制の1つに発展しました」。

 1950年代の朝鮮半島の紛争は、競馬をほぼすべて消滅させたが、現代の競馬復興は驚くべきものだ。それは、鋭敏な経営陣・計画立案・教育が原動力となっている。KRAは定期的に、知識と経験を獲得させるために職員を世界中に派遣している。また、地域社会とそのニーズに応えるものを重点的に取り入れたこともこの復興に寄与した。

 韓国は、コミュニティー全体に利益をもたらしていると言われる香港と似ているようだ。子ども向けのアトラクションがある韓国の"ウィニーワールド"は、地域社会に焦点を合わせた取組みの1つである。場外馬券発売所は馬券発売機だけでなくずっと多くのものを地域に提供する共同空間である。

 西洋諸国では、賭事に対する地域社会の反感が高まっており、それは競馬が長きにわたり存続することを脅かしかねず、多くの競馬管轄区でベッティングショップは消える運命にあるように見える。それゆえ、このアプローチから学ぶべき教訓があるかもしれない。

 競馬は、もっと油断のならない悪質な他のギャンブルから切り離されることが不可欠である。そして地域社会を大切にしていると認識してもらう必要がある。

 ダートの重馬場で施行されたコリアンダービー(1800m)の総賞金は80万ドル(約8,800万円)。これは韓国の競馬が発展していることを示す追加的な指標である。このレースを制したのは、韓国産の牡駒エクトンブレード(Ecton Blade)だった。この馬の父エクトンパーク(Ecton Park 父フォーティナイナー)はケンタッキーで種牡馬入りしたが、2009年から韓国で供用されている。

頭角を現す才能ある調教師

 エクトンブレードは、キム・ヨングァン(Kim Young Kwan)調教師に管理されている。同調教師は、韓国のダレン・ウィアー(Darren Weir)あるいはクリス・ウォーラー(Chris Waller)と見なされる(訳注:両者は豪州の一流調教師)。

 以前ヴィクトリア州ベンディゴを拠点としていたピーター・ウルズリー(Peter Wolsley)調教師は、10年前からプサンで調教活動を行ってきた。同調教師はキム・ヨングァン調教師についてこう語った。「彼は最高の調教師です。コリアンダービーに参戦できる管理馬を5~6頭手掛けていましたが、2頭に絞って出走させ1着と4着になりました。彼のチームは素晴らしく、毎年プサンのリーディングランキングで私は彼の2位に甘んじています」。

 ヨングァン調教師は現時点で今年50勝しており、その勝率は39%と驚異的である。ウルズリー調教師は17勝で2位。ヨングァン調教師は2017年ドバイワールドカップカーニバルでメインステイ(Main Stay)を出走させて優勝し、国際舞台において韓国に注目を集めさせた。

 ウルズリー調教師はこう語った。「ここで調教活動をし始めて10年ほどですが、韓国競馬は目まぐるしく発展しました」。

 コリアンダービーデーそのものは、熱心な馬券購入者も男性も女性も大判の予想紙に没頭していたために静かなムードであったが、興味深いものだった。彼らはお目当ての馬を大声で応援していた。以前ソウルを訪れたときに、降雪のためにレースが中止となり賭事客が暴動を起こす寸前だったことを思い出す。

 コリアンダービーの出走馬が行進する前、地元の4人の(才能豊かな)歌手が『ディスイズザモーメント(This Is The Moment)』と『ウィーアーザチャンピオンズ(We Are The Champions)』を心地の良い声で歌いあげていたが、これも手本にできるかもしれない。フレミントンあるいはチェルトナムの酔っぱらった観客が、とりわけ『ウィーアーザチャンピオンズ』の演奏時に一緒に歌いだす光景を私は想像した。しかし、地元の人々はもしかすると韓国語の歌のほうが気に入ったのではないかとも考えていた。幸いにも、『江南(カンナム)スタイル』が再び演奏されることはなかった。

 ソウル競馬場はソウル市の南の郊外の"クァチョン(果川)市"にあるソウルグランドパークに隣接しており、1988年ソウル五輪の際にオープンした。KRAのキム会長は近代韓国競馬の誕生の地であり中心地であると述べた。

 ソウル競馬場は、KRAが"世界最大"と称する全長127メートルの大画面を目玉としている。この大画面は向こう正面の風景をすべて遮っているのかもしれないが、誰も気にしない。これも、他の競馬団体にとっては教訓となるだろう。この大画面は壮観であり、遠く離れたプサンの競馬に確実に命を吹き込むだろう。私はフレミントンやランドウィックで素晴らしい競馬が施行されている時に同様のものを見てみたいと思う。

 ソウル競馬場では芝コース敷設など、さらなる発展が目前に迫っているが、実際、このダービーデーにそのすべてを確認することはできなかった。

 それでも、アジア競馬連盟の会長であり香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)のCEOであるウィンフリード・エンゲルブレヒト-ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges)氏は、キム会長の歓迎を受けて「近年の韓国競馬の急成長と発展は注目に値します」と応えた。

 北朝鮮と韓国の間の緊張は一見したところ緩和されているが、ウルズリー調教師によれば実際には何も変わっていない。同調教師は、「明らかに歓迎すべきニュースですが、韓国の人々はいつもどおり仕事に没頭しています。本質的には何も変わっていないと思います」と語った。

By Steve Moran

(1ドル=約110円)

[Racing Post 2018年5月22日「Is Korea the next big racing empire?」]


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