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2018年04月20日  - No.4 - 4

クールモアの繁栄に貢献する優秀な繁殖牝馬群(アイルランド)【生産】


 現代における最高の種牡馬と調教師がガリレオとエイダン・オブライエン氏であるということは、認められている。両者は持ちつ持たれつの関係にあり、一方が他方の圧倒的な能力の恩恵を受け、その逆も然りである。

 ガリレオがこれまでに送り出したG1優勝産駒70頭のうち半分以上の36頭は、バリードイル(クールモア牧場の調教拠点)のオブライエン調教師に手掛けられた。一方、同調教師が2017年に果たした年間G1最多勝記録28勝のうち少なくとも18勝は、クールモアの驚異的な種牡馬ガリレオの産駒によって挙げられた。

 これは驚くほど実りのある"人馬の相互効果"だ。ジャン-リュック・ラガルデール(Jean-Luc Lagardère)氏とリナミックス(Linamix)、あるいはケン・ラムジー(Ken Ramsey)氏とキトゥンズジョイ(Kitten's Joy)の有益な関係さえも凌駕する。

 しかしスツール(背もたれのない一人用腰掛)には、その値打ちにふさわしい注目を集めていないが過小評価してはならないもう一本の脚がある。それは、クールモアの繁殖牝馬群がもつ類まれな資質である。

 ガリレオが送り出したG1優勝産駒70頭を違った角度から見れば、このうち29頭の母馬は全部または一部をクールモアもしくはその関係者により所有されている。また、オブライエン調教師が2017年に果たした年間G1最多勝記録28勝に貢献した16頭中13頭は、クールモアもしくはその関係牧場により生産されている。

 さらに、現在バリードイルで調教を積み、今年のクラシック路線での活躍が有力視される次の牡駒はクールモアで生産され、すべてがガリレオ産駒かガリレオ牝馬の仔である。



・デラノルーズベルト(Delano Roosevelt)

・フラッグオブオナー(Flag Of Honour)

・ギュスターヴクリムト(Gustav Klimt)

・ケンヤ(Kenya)

・サクソンウォーリア(Saxon Warrior)

・ザペンタゴン(The Pentagon)

・ユーエスネイビーフラッグ(US Navy Flag)



 クールモアの繁殖牝馬群は、今年の英1000ギニー(G1)の1番~3番人気になっている次の牝駒(オブライエン厩舎)を送り出しており、その卓越性は明白である。



・G1馬クレミー(Clemmie 父ガリレオ)

・G1馬ハッピリー(Happily 父ガリレオ)

・G1・3着内馬セプテンバー(September 父ディープインパクト 母ガリレオ牝馬)



 クールモアで確固たる地位を築きつつある繁殖牝馬の多くは、次の3頭を父とする。(1)偉大な種牡馬デインヒル(Danehill)、(2)その産駒でリーディングサイアーとなったデインヒルダンサー(Danehill Dancer)、(3)クールモアが大いに重宝したストームキャット(Storm Cat ケンタッキーで供用された)。ジョン・マグニア(John Magnier)氏とその共同経営者が生産したガリレオのG1優勝産駒29頭のうち13頭の母馬は、この3頭の種牡馬のいずれかを父とする。

 クールモアは繁殖セールで破格の高値で購買した牝馬により、その繁殖牝馬群を補完している。ガリレオのG1優勝産駒を送り出した繁殖牝馬のうち、クールモアが生産せずに購買した繁殖牝馬の中には、リップヴァンウィンクル(Rip Van Winkle)の母ルッキングバック(Looking Back)やメイビー(Maybe)の母スモラ(Sumora)などがいる。あるいは、現役時代にスプリンターやマイラーとして活躍したマーシャ(Marsha)、クワイエットリフレクション(Quiet Reflection)、テピン(Tepin)、ティギーウィギー(Tiggy Wiggy)をセリにおいて100万ポンド(約1億5,500万円)以上で手に入れた。さらに、マーゴットディッド(Margot Did)やメッカズエンジェル(Mecca's Angel)などをプライベート取引により、とてつもなく高額と思われる価格で購買した。

 クールモアは、中距離・長距離を得意とする馬の生産に関しての目利きである。それゆえ、たとえばハーザンド(Harzand)やムカドラム(Mukhadram)の母馬などの頑丈な牝馬をガリレオと交配させるために高額の投資を行ってきた。しかし最近では、スピードタイプの繁殖牝馬がガリレオと相性が良いことが共通した考えとなっているようだ。また、事の是非はさておき、それらの繁殖牝馬は商業的魅力がある仔を生むより多くのチャンスがあると見られている。

 ガリレオの供用6年目の産駒からフランケルが出現したことで、スピードタイプの繁殖牝馬をガリレオのもとに送る習慣は一層盛んになった。フランケルの母カインド(Kind)は現役時代、5~6ハロン(約1000m~1200m)のリステッド競走(準重賞)を制している。また同時期に、"産駒の距離適性"や"どのような素質が産駒に伝わるか"を特定することをセールスポイントとするエクイノム社(Equinome)のスピード遺伝子検査が立ち上げられた。

 クールモアの繁殖牝馬群は今や興味深い変動期を迎えている。すでに、かなり多くのデインヒルとストームキャットそしてその産駒を父とする牝馬がいる。それらの優良牝馬はガリレオと交配させることを目的に購買されたのだが、その交配の結果として、クールモアは有り余るほどのガリレオ牝馬を擁している。

 それらのガリレオ牝馬の中で現役時代に優秀な成績を残したのは、いずれもG1馬となったアリススプリングス(Alice Springs)、バリードイル(Ballydoyle)、カーヴィー(Curvy)、ファウンド(Found)、メイビー、マインディング(Minding)、ミスティフォーミー(Misty For Me)、セブンスヘブン(Seventh Heaven)、トゥギャザー(Together)、トゥギャザーフォーエバー(Together Forever)、ウォズ(Was)、ウィンター(Winter)である。しかし、これらはクールモアで繋養されるガリレオ牝馬の氷山の一角にすぎない。なぜなら、競走成績が冴えなかった、あるいは未出走だったものの、その血統の素晴らしさから優良な仔を生むと期待されているガリレオの牝馬が沢山いるからだ。

 ガリレオの牝馬のみならず、ガリレオの父サドラーズウェルズ、そしてモンジュー(父サドラーズウェルズ)の牝馬の供給は豊富である。このことはクールモアに難問を突き付け、牧場の将来のために解決策を見出すことが迫られている。

 緊急に必要とされるのは、その血統にサドラーズウェルズあるいはデインヒルが入っていない実績あるトップクラスの種牡馬である。そのため、私たちは好奇心をそそる競馬シーズンを迎えている。日本のリーディングサイアーであるディープインパクトを父とするサクソンウォーリアが英2000ギニーの1番人気とされているのだ。サクソンウォーリアの母は、ガリレオの牝馬でモイグレアスタッドS(G1)を制したメイビーである。

 近年、クールモアがそのガリレオ牝馬のためにひいきにしているアウトクロス(異系交配種)はディープインパクト、豪州のシャトル種牡馬ファストネットロック(Fastnet Rock)、そしてケンタッキーを拠点とするウォーフロント(War Front)である。ウォーフロントは、昨年の最優秀2歳牡馬ユーエスネイビーフラッグ(母はG1・4勝馬ミスティフォーミー)を送り出している。しかしクールモアが所有していないディープインパクトやウォーフロントへのアクセスは限られている。

 スキャットダディは、クールモアのケンタッキーの拠点アシュフォードスタッド(Ashford Stud)で供用されていた。同馬は、現在私たちが知っているその偉大な種牡馬としての資質を完全に見せることなく死んでしまった。そうでなければ、さらに引く手あまたの種牡馬となっていただろう。

 それでも、難題の原因となっているガリレオ牝馬の多くは、クールモアの長期にわたる繁栄の土台でもある。クールモアの交配計画は、今後もまだ数世代にわたってこれらのガリレオ牝馬から恩恵を得ることが期待できる。なぜなら、これらの牝馬は父ガリレオのよく知られた長所、すなわち純然たる気品・勝利への決意・不屈の精神・持久力・多才性を受け継ぎ、それを仔に伝えるからである。

 したがって、バリードイルとクールモアにおいては、調教師とトップクラスの産駒の間の互いに利益をもたらす関係は持続することが約束されている。それらのガリレオ牝馬の仔は、どのような種牡馬を父にしようとも、最高の才能をもつオブライエン調教師により管理されるという恩恵を得られるだろう。一方、オブライエン調教師はそのような申し分のない素質馬を預かることで、調教活動は多少やりやすくなるだろう。

By Martin Stevens

(1ポンド=約155円)

[Racing Post 2018年3月26日「Coolmore success founded on a broodmare band of uncommon excellence」]


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