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TOPページ > 海外競馬情報 > 繁殖牝馬の将来の成功を左右する出生順についての研究(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2017年12月20日  - No.12 - 6

繁殖牝馬の将来の成功を左右する出生順についての研究(アメリカ)【生産】


 競馬関係者は長い間、繁殖牝馬は第2仔~第6仔において最高の産駒を送り出す可能性が非常に高いと直感しており、それを研究によって立証してきた。

 もちろん例外は存在する。しかしこの現象は、テイクチャージレディ(Take Charge Lady)、ファンハウス(Fun House)、カララファエラ(Cara Rafaela)、パーソナルエンスン(Personal Ensign)、ウィークエンドサプライズ(Weekend Surprise)といった優良牝馬が第2仔~第6仔として生まれていることで示されている。これらの牝馬は、たぐいまれな競走馬であっただけでなく傑出した繁殖牝馬であり、誰もがうらやむケンタッキー州年度代表繁殖牝馬に選出されている。このような共通性は、"第2仔~第6仔ルールは、優良牝馬が生んだ牝駒の繁殖牝馬としての成功にも影響するのか?"という疑問を提起する。

 本誌は、1998年~2008年の北米の繁殖牝馬の産駒競走成績をまとめて、この疑問への答えを追求した(なお、対象とした繁殖牝馬は、その母が2頭以上の繁殖牝馬を送り出していることを条件としている)。全体的な産駒競走成績は、勝馬率・ブラックタイプ勝馬率・重賞勝馬率から検討した。さらに、繁殖牝馬を"ブラックタイプ優勝牝馬を母とする繁殖牝馬"と"重賞優勝牝馬を母とする繁殖牝馬"のグループに分けた。

 その結果、出生順が競走成績と繁殖成績の両方に大きな意味を持つことが分かった。一例を挙げると、過去50年間のケンタッキー州年度代表繁殖牝馬のうち35頭(70%)は第2仔~第6仔として生まれている。

 また、このデータは"良質馬は良質馬を生む"という競馬産業内のもう1つの原則を裏付けている。一般的に、最高の競走牝馬は最高の競走馬と繁殖馬を送り出している。

本誌の調査結果の細部を検討してみよう。

 概して、第7仔以降の牝馬において競走能力と同様に繁殖能力にも衰えが見られ始める。すべてのグループにおいて、繁殖能力の上昇はいくつかの出生順にちらほら見られ、とりわけ第12仔として生まれた繁殖牝馬にはっきり見られる。しかしこの上昇が顕著であるとするには、分析された繁殖牝馬の各カテゴリーのデータ数は少なすぎるかもしれない。

 第2仔あるいは第3仔として生まれた繁殖牝馬は、ブラックタイプ勝馬を最も高い確率(出走産駒の5.36%)で送り出している。これは、2016年リーディングサイアーズランキングで4位・5位・6位のキャンディライド(Candy Ride)・キトゥンズジョイ(Kitten's Joy)・シティジップ(City Zip)といった種牡馬のブラックタイプ勝馬率を上回る。第4仔として生まれた繁殖牝馬は、重賞勝馬を最も高い確率(出走産駒の2.41%)で送り出している。

 生産者や血統専門家によれば、様々な要素が第2仔~第6仔の競走能力だけではなく繁殖能力に作用している。

 アラン・ポーター(Alan Porter)氏は血統専門家であり、30年以上にわたり交配コンサルタントを務めている。同氏はこう語った。「非常に多くの錯綜する要因が作用しています。少しばかり例を挙げると、子宮内環境・遺伝的特徴・遺伝子間の相互作用・種牡馬選択・市場の流行といったものです。それらの要因を取り除いて分析できるように、"種牡馬の標準化"ができれば理想的なのですが、それにはデータの数があまりにも限定されており、統計的に有意なものとはなりません。全体的に見て、これらすべての錯綜する要因が組み合わさって、私たちの目前に現れる傾向は作り出されています」。

 大きな影響を及ぼすものの1つは、DNAは馬であれヒトであれ、その一生において不変ではなく変化している、という概念に結び付くのかもしれない。

 ヒトの場合、卵子は年齢とともに劣化し、高齢の母親のもとに生まれた子はより高い確率で健康問題を生じがちであることが実証されている。また最近の研究は、高齢の父親のもとに生まれた子も、自閉症・乳がん・てんかんなどの健康問題がより高い確率で生じる可能性があることを示した。

 DNAのメチル化は、後成遺伝学分野において最も重要なテーマの1つである。後成遺伝学は、ヒトの寿命において遺伝子が個人の環境にいかに反応するかを研究する学問である。時間が経つにつれて、メチル基がDNA分子に付加することがある。全体的な塩基配列は変化しないが、影響を受けた遺伝子の機能は変化することがある。高齢繁殖牝馬は、その年齢が原因でDNAが変化する可能性が高い。それゆえ、高齢繁殖牝馬の仔はこの変化したDNAを受け継ぐ可能性がある。高齢繁殖牝馬の仔は身体的に健康そうであっても、突然変異のあったDNAを有している可能性がある。それは、競走能力に作用する速筋線維・遅筋線維に影響を及ぼす遺伝子の突然変異のようなものかもしれない。筋線維のわずかな変化でも、コンマ1秒差で勝敗が決まるレースでは大きな影響をもたらすことがある。この研究の場合、DNAの突然変異は、遅い出生順の繁殖牝馬が仔馬に劣化したDNAを伝え、その結果として仔の競走成績の低下を潜在的にもたらすことを意味している。

 この分野における研究の大半は人間医学を目的としてきたが、この概念が馬の繁殖にも適用できると考えることは全くのこじつけというわけではない。

ブラックタイプは非常に価値がある

 生産計画を成功させるうえで、ブラックタイプの重要性はどれだけ誇張してもし過ぎることはない。今回の研究結果は、とりわけ重賞優勝牝馬の第3仔として生まれた繁殖牝馬のブラックタイプ勝馬率が13.16%であること、すなわちほぼ8頭中1頭であることを示している。重賞優勝牝馬の第2仔として生まれた繁殖牝馬も12%という信じられないほどのブラックタイプ勝馬率を誇っている。これは、2016年リーディングサイアーズランキングで最高のブラックタイプ勝馬率を誇るウォーフロント(War Front)の11.8%よりも高く、またガリレオ(Galileo)のブラックタイプ勝馬率も上回っている。

 また、重賞優勝牝馬の第2仔・第3仔として生まれた繁殖牝馬は、より高い確率で重賞勝馬を送り出している(それぞれ6.92%と7.6%)。それは3年連続で北米リーディングサイアーとなったタピット(Tapit)の重賞勝馬率4.9%、重賞勝馬率で2位のアンクルモー(Uncle Mo)の6.3%を超える。なお、重賞勝馬率で首位のウォーパス(War Pass)は6.45%を誇るが、わずか31頭の産駒しか出さなかった。

 ブラックタイプ優勝牝馬の第2仔・第3仔として生まれた繁殖牝馬も侮れない。10%を超えるブラックタイプ勝馬と、4%後半の重賞勝馬を送り出している。

 この調査結果はまた、優秀な競走牝馬のもとに生まれた繁殖牝馬は第1仔で生まれても遅い順番で生まれても、平均以上のブラックタイプ勝馬率と重賞勝馬率を維持していることを示している。これは、優良牝馬を母とする繁殖牝馬は出生順や母馬の繁殖能力低下にさほど左右されないことを暗示している。

 このような現象は、種牡馬選びに根本的な原因があるのかもしれない。繁殖牝馬は多くの場合、年齢とともに種牡馬の質を低下させられる傾向がある。それはとりわけ産駒の競走成績が控えめであるときに生じる。ブラックタイプ優勝牝馬あるいは重賞優勝牝馬は、産駒が成功しているかどうかに関係なく引く手あまたであり、その資質ゆえに生産者はこれらの牝馬を質の高い種牡馬のもとに送り続けるようになる。このことは理論上、このような優良牝馬のもとで遅くに生まれた牝駒が、平均的な牝駒よりも優れた遺伝子を受け継ぐ可能性があることを意味している。なぜなら、母馬には優れた種牡馬と交配するチャンスがより多く与えられており、そのことがそれらの牝駒の繁殖牝馬としてのキャリアを高めるからである。

 また種牡馬選びはデータに見られるもう1つのパターンと関係しているかもしれない。そのパターンとは、ブラックタイプ優勝牝馬あるいは重賞優勝牝馬の第3仔として生まれた牝駒が繁殖牝馬として、それぞれのグループで最高の成績を挙げていることである。

 ポーター氏は、このパターンは種牡馬のサードクロップ(初年度から3世代目の産駒)にも時折見られると考えており、こう語った。「牝馬が繁殖入りしたばかりのときは、その牝馬を見て身体的に補完すると考えられる種牡馬と交配させます。その結果生まれてきた産駒が、予想とまったく異なることが時々あります。多くの場合、繁殖牝馬が初仔を出産する前に2年目の種牡馬はすでに予約されています。そのため、ほとんどの場合、種牡馬選びに磨きをかける機会があるのは、3年目の種牡馬を選ぶときなのです」。

今後の進むべき道

 サラブレッド生産は、科学・技術・スポーツ・直感・幸運が複雑に混ざり合ったものである。しかし出生順の影響を知ることは、繁殖が成功する可能性と市場価値を評価するうえで、生産者と購買者にさらにもう1つの手段を与えることになる。

 繁殖牝馬・当歳馬を専門にコンサインメント(委託販売)を行うグローヴンデール社(Grovendale)のジェームズ・キーオ(James Keogh)氏は、「私は繁殖牝馬の出生順は何らかの傾向を持つのではないかと常に思っており、繁殖牝馬を分析するときにはそれを検討しています」と述べた。同氏は、シーキングガブリエル(Seeking Gabrielle 2016年ケンタッキーダービー馬ナイキストの母)やキムズブルース(Kim's Blues 2009年の年度代表馬レイチェルアレクサンドラの2代母)のような馬を委託販売してきた。

 同氏はこう続けた。「過去50年間のケンタッキー州年度代表繁殖牝馬の70%が第2仔~第6仔であることを明らかにした統計は、注目に値します。これらの数字は繁殖牝馬におけるブラックタイプの重要性も証明しています。ブラックタイプは大変重要です。私たちは、繁殖牝馬とその出走産駒が成功するチャンスに関して、ブラックタイプ競走あるいは重賞競走が重要な鍵であることは認識していました。しかし今やブラックタイプは、繁殖牝馬が牝系を確立するチャンスに関しても、その価値を証明しています。馬格・ブラックタイプ・ファミリー(牝系)は、私が最も重要視する事柄であり、市場も同じです。セリは上場馬の質にふさわしい評価を与える場所であり、これらの事柄はチェックしなければならない項目です」。

 サラブレッド生産には具体的なルールはほとんどない。出生順の傾向に当てはまらない馬は多くいる。一例を挙げると、シルケンキャット(Silken Cat)は繁殖牝馬としてのキャリアを終えようとているが、産駒アイラップ(Irap 父ティズナウ)が重賞を3勝している。シルケンキャットの初仔スパイツタウン(Speightstown 父ゴーンウェスト)は、数々の重賞を制した後、今ではリーディングサイアーズランキングの上位にいる。さらに有名なのはサムシングロイヤル(Somethingroyal)である。この牝馬は、幸運な第13仔として名声不朽のセクレタリアト(Secretariat)を送り出しており、それ以前にも、多彩な能力に恵まれた12頭の仔を生んだ。

 過去のケンタッキー州年度代表繁殖牝馬50頭のうち35頭(70%)が第2仔~第6仔であるという統計には圧倒させられる一方、私たちは30%がそうでないことに留意しておかなければならない。すなわち、"第2仔~第6仔ルール"から判断すれば、理論上この15頭の一流繁殖牝馬は淘汰すべき馬ということになる。

 この15頭の中には、ベターザンオナー(Better Than Honour)(第10仔)、トールブース(Toll Booth)(第9仔)、グレシャンバナー(Grecian Banner)(第7仔)、コスマー(Cosmah)(初仔)といったとても重要な優良牝馬がいる。これらの繁殖牝馬については、出生順が優れた遺伝的特徴を衰えさせないほどの由緒ある牝系に属していると論じることができる。ポーター氏はこの考え方について、「個別的には、馬の質が一般的な傾向に勝ることがあります」と述べた。

 統計は役立つが、競馬産業内の専門家の大半は基本ルールを忠実に守っている。それは、「目の前に立つ馬がどのように見えるかで判断する」ということだ。

 一流サラブレッド売買仲介者であるデヴィッド・インゴード(David Ingordo)氏はこう語った。「これらの数字には理由があります。それは数学的な証拠であり、数字は嘘をつきません。しかし最終的には、すべてのことを個別的に考慮して個々の馬を判断することになります。種牡馬の種付予約に関しては、いずれにおいても様々な種類の繁殖牝馬が必要となることは明らかです。若い繁殖牝馬、高齢の繁殖牝馬、実績のある繁殖牝馬などです。結局のところ、私たちは生産者のやり方から距離を置こうとしています」。

 セリで馬を評価することについて聞かれたインゴード氏は、このような逸話を語った。「私はオフィスに座り、窓ごしにこの大きな木を眺めています。ファミリー(牝系)はまさしく木のようなものです。最初から葉が茂っている枝もありますが、他の枝はよく見ると葉が少ししか付いておらず、また葉のない枝もあります。しかし、数週間後にあなたが再びここを訪れる頃には、葉がまったくないあるいは半分ほどしかない枝ももっと茂っているに違いありません。少し時間が掛かるだけです。優れたファミリー(牝系)もそれと同じです。少し時間が掛かるかもしれませんが、それらは繰り返し繁栄します。私たちが、年齢や目的に関係なく馬を見るときに、影響力を持つのはそれです。優れたファミリー(牝系)は自ら証明します。もしある馬が良い牝系に属しているように見えたら、たとえ"細い枝"の1本から出ていたとしても、そのような大きな葉とならない理由になりません」。


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By Julie Witt

[The Blood-Horse 2017年10月21日「OPENING A WINDOW OF OPPORTUNITY」]


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