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2017年01月20日  - No.1 - 3

ビジネスレートの大幅引上げで厩舎運営が厳しい状況に(イギリス)【開催・運営】


 調教師たちは、2017年4月からビジネスレート(business rate)を数千ポンド多く支払わなければならなくなっても厩舎運営を続けられるかについて、深い懸念を表明した[訳注:ビジネスレートとは非居住用(事業用)資産(店舗、事務所、倉庫、工場など)に対する固定資産税。資産評価局が市場の年間賃貸額に基づく課税評価額によって税額を算出する]。

 政府の直近の見直しの結果、ニューマーケットで運営する厩舎の課税評価額は53%増加する。しかし、ニューマーケットあるいは英国の他の地域を拠点とする調教師の中には、英国歳入関税庁(HM Revenue and Custom:HMRC)に支払う金額がそれよりも大幅に増加する者もいる。

 スチュアート・ウィリアムズ(Stuart Williams)調教師は、厩舎の課税評価額が3万2,500ポンド(約455万円)から6万4,500ポンド(約903万円)に引き上げられることを、すでに書簡で伝えられていた。ニューマーケットには、その課税評価額が10万ポンド(約1,400万円)を上回る一流厩舎もある。エプソムを拠点とするジム・ボイル(Jim Boyle)調教師の厩舎の課税評価額は、2万4,500ポンド(約343万円)から59%増加して3万9,000ポンド(約546万円)となる。

 事業体は一般的に、政府が定める掛け率により課税評価額の約48%だけを支払えばよく、また、引上げには経過的な軽減措置が講じられることになっている。しかし、調教師たちは、この引上げを"壊滅的"で"極めて深刻"なものと言い表した。ガイ・ケルウェイ(Gay Kelleway)調教師は、「ニューマーケットを拠点とする多くの調教師は息絶えることでしょう」と述べた。

 全国調教師連合会(National Trainers' Federation: NTF)は、これにどう対処すれば良いかについて検討してきた。新しいビジネスレートに抗議すべきだと叫ばれる中、マーク・トンプキンズ(Mark Tompkins)調教師が議長を務めるニューマーケット調教師連合会(Newmarket Trainers Federation)は、12月19日に緊急会議を開催する予定である。

 トンプキンズ調教師はこの緊急会議に、ニューマーケットの調教師22名の代表で公認監査員のビル・シンプソン(Bill Simpson)氏を呼んでおり、こう語った。「新しいビジネスレートは我々にとって極めて大きな負担であり、たくさんの調教師の重圧となります」。

 「預託料を毎年引き上げることができる調教師は、ニューマーケットにおそらく8人~10人しかいません。私はこの7年間、預託料を一切上げていません」。

 「現在、ばかげたことが実行に移されようとしています。実際にどのようにするかはまだ分かりませんが、抗議することになるだろうと思います」。

 ウィリアムズ調教師はこう語った。「これは壊滅的な影響を与えるでしょう。大きすぎる問題です。馬房が全部ふさがっている状態でも空の状態でも違いはありません。我々の厩舎には65馬房ありますが、全部ふさがったことはありません。以前は空いている馬房があることで課税評価額は軽減されましたが、そのような措置はずっと前に廃止となりました。厳しい状況にある調教師にとっては大変な問題です」。

 ケルウェイ調教師は厳しい状況にある調教師の1人であり、こう語った。「おそらく、中東の馬主に支援されているような有力調教師は、ビジネスレートの引上げによって増大する負担を、ほとんど気に留めないでしょう。その他大勢である私たちにとっては一大事です」。

 「我々の厩舎はこじんまりとしているおかげで、他の厩舎ほど大きな打撃は受けません。それでも、もともと賞金額が低くてスタッフを雇用するのが大変な状況なのに、今度はビジネスレートが引き上げられるわけですから、我々ニューマーケットで活動する調教師の多くはますます苦境に立たされます。今回は調教師たちが一丸となり、引き上げられたビジネスレートは支払わないと決定することを望んでいます」。

 HMRCの補助機関である資産評価局(Valuation Office Agency:VOA)は、馬房数とプールや事務所などの付属設備を基に厩舎を評価する。エプソムのボイル調教師は、これは大規模な設備がある厩舎に一層大きな影響を及ぼすと指摘した。

 ボイル調教師はこう語った。「すでに厩舎の利益は少なくなっているので、ビジネスレートの引上げは大きな問題となるでしょう」。

 「NTFは、これを放っておけない問題と判断し、ビジネスレート引上げについてどのように抗議するかについて検討してきました。極めて深刻な事態です。抗議がうまくいかなければ、多くの調教師が厳しい状況に陥るでしょう」。

 その大半がニューマーケットの調教師であり、そこでは厩舎の価値が高まっており、課税評価額算出の基となる賃貸額を釣り上げている。

 ランボーンでは馬房の標準評価額は1平方メートルあたり600ポンド(約8万4,000円)から675ポンド(約9万4,500円)に増加するが、ニューマーケットでは650ポンド(約9万1,000円)から1,000ポンド(約14万円)に急騰する。

 前ニューマーケット町長のジョン・ベリー(John Berry)調教師はこう語った。「損失を出しながら厩舎を運営していますが、私が支払うビジネスレートは1万ポンド(約140万円)から1万5,000ポンド(約210万円)に上がる予定です。そうは言っても、ビジネスレートが53%以上増加しても驚きません。これは巧妙に隠された税です」。

 「私は厩舎を2つに分けており、一方を貸すことができます。最後にその部分を使っていたのは、デイヴ・モリス(Dave Morris)調教師ですが、もう2年近く使われていません。私は、もはや事業で使われていない資産に掛かるビジネスレートを全額支払い続けています」。

 「アットザレーシズ(At The Races)に執筆して収入を得ているので恵まれています。それにより、少額の損失を少額の利益に転換させています。また調教事業では労賃をもらえません。つまり何も得るものがないのに、損失を出しながら厩舎を運営しているのです」。

 「人々が厩務員の給料と考えている程度の額でさえ、稼いでいる調教師はそう多くはいないと思います。本当に多くの調教師が破産しています。彼らは破産となれば疎遠になっていくので、だれも廃業したことに気付きません」。

 VOAのスポークスマンはこう語った。「これまでよりも一層包括的で、しっかりとした賃貸額の調査結果に基づいて評価が行われていることにより、厩舎の課税評価額は引き上げられます」。

 「課税評価額には一定期日の公開市場の賃貸額が反映されます。公開市場の賃貸額が変化していれば、課税評価額もそれに伴い変化します」。

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By Lee Mottershead

(1ポンド=約140円)

[Racing Post 2016年12月1日「Trainers devastated by massive increase in business rates」]




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