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2016年07月20日  - No.7 - 5

英国のEU離脱がアイルランドのセリ会社に与える影響(アイルランド)【生産】


 6月24日朝、英国がEU離脱を決めたことが発表された。これを受け、"不確実性"がアイルランドのサラブレッド生産界のさまざまな課題のトップに浮上した。

 アイルランド・サラブレッド生産者協会(Irish Thoroughbred Breeders' Association: ITBA)のマネージャーであるシェーン・オドワイヤー(Shane O'Dwyer)氏は、生産界が直面する影響についてこう語った。「サラブレッド市場はすぐに影響を受けるでしょう。販売価格や購買馬の輸出に深刻な懸念が生じます」。

 「関税率と付加価値税率が上昇することも心配していますが、現在のところ、それらがどうなるか誰も分かりません」。

 アイルランド・サラブレッド・マーケティング社(Irish Thoroughbred Marketing:ITM)のCEOチャールズ・オニール(Charles O'Neill)氏も同じ感想を持ち、こう語った。「我々の重要な取引相手がEU離脱を決めたわけですから、ITMも大変心配しています」。

 「当面の課題はアイルランド生産界にもたらされる"不確実性"であり、特に為替レートは不安定になるでしょう。今のところ、英国とのサラブレッドの売買が今後どう規制されるのか、また、国境管理・馬の移動制限・関税が新たに導入されるかどうかについて、はっきりとした情報がありません」。

 ゴフス社(Goffs 英国・アイルランドを拠点とするセリ会社)のCEOヘンリー・ビービ(Henry Beeby)氏にとっても、"不確実性"は大きな関心事である。同氏は、「唯一確実に言えることは、今まさに不確実性が高まっているということです。このような状態がいつまで続くのか分かりません」。

 しかしEUからの離脱の是非を問う国民投票が、タタソールズ・アイルランド社ダービーセール(6月22日~24日)での購買者の熱意を冷ますことはなかった。そして、6桁以上の価格(10万ユーロ以上)での購買頭数が過去最多となり、始めの2日間の平均価格は過去最高となった。

 タタソールズ・アイルランド社(Tattersalls Ireland)のリチャード・ピュー(Richard Pugh)理事は、英国のEU離脱の決定についてあまり動揺せずにこう語った。「我々の産業には回復力があります。立ち直りが早く、常に高品質なものを提供する産業であれば、楽観的になるのは無理もないでしょう」。

 このセールでトップセラーとなったバリンカリッグハウススタッド(Ballincurrig House Stud)の経営者マイケル・ムーア(Michael Moore)氏も、次のように語った。「サラブレッド取引にどれだけ影響が及ぶか分かりません。しかし、馬に依然として需要があるのは確かです。英国のEU離脱が生産界に何をもたらすのかについて沢山の憶測がされていますが、実際どうなるかはやがて状況が落ち着いた時にしか分からないでしょう」。

 為替レートやフランス・アイルランド・英国の間での馬の移動など、予測不可能な事柄は多いが、オドワイヤー氏、オニール氏、ビービ氏は、生産界を楽観的にさせるためには国家間の信頼関係が重要であると強調した。

 オドワイヤー氏はこう語った。「EU離脱の問題の前に、国家間の信頼関係を忘れないようにすることが大切です。私たちが留意しなければならない事柄の1つは、EU離脱の交渉期間は2年であり、今すぐには何も起こらないことです。私たちはアイルランドと英国の生産界およびそれぞれの政府と腰を据えて話し合い、"この素晴らしい信頼関係を保ち続けましょう"と確認し合う必要があります」。

 オニール氏はこう付言した。「ITMは英国と素晴らしい信頼関係を築いています。そして様々な課題に対応するため、すべての関連団体と一緒に取り組み続けるでしょう。長期的には、アイルランドの生産界はこれらの課題に対応するだけの弾力性と強さを持ち合わせていると確信しています」。

By James Thomas

[Racing Post 2016年6月25日「Bloodstock industry fears uncertainty after Brexit」]


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