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2016年03月20日  - No.3 - 3

競馬界に賦課金制度に替わる資金調達制度が導入される(イギリス) 【開催・運営】


 "賦課金制度の代替制度を導入して競馬界に大改革をもたらす画期的な計画"を、政府は発表する。新制度は、英国競馬を対象とする全ての賭事、すなわちベッティングショップでの賭事・オンライン賭事・国内賭事・海外賭事から資金を徴収する。

 この計画は競馬産業にとって大きな快挙となる。賭事業界が街中のベッティングショップから海外を拠点とするオンライン賭事にシフトしたことで、競馬界の財政には数千万ポンドもの徴収漏れが生じていた。競馬界は政府に対し、これを防ぐ行動を起こすよう長年ロビー活動を行っていた。

 保守党のボブ・ブラックマン(Bob Blackman)下院議員(ハーロウイースト選出)は3月3日午前、下院議会における文化・メディア・スポーツのセッションで質問を提出した。それは、現行の競馬賭事賦課金制度の代替計画の進捗状態についてであった。

 政府からの回答は、口頭あるいは書面のいずれかでなされるが、政府は全ての賭事業者が競馬界に確実に資金提供するように、第二次立法[訳注:英国では議会立法(第一次立法)で制度の大枠を定め、その授権規定に基づく第二次立法で詳細を規定するという方法がしばしばとられる]を行うだろう。そして、2017年4月までに新制度を導入するための予定表を提示することだろう。

 政府は、賭事産業が海外拠点にシフトする前に支払っていた"競馬界への公正な還元"を回復する政策の意義も提示する。

 詳細は3月16日の予算演説において発表される。

 BHA(英国競馬統轄機構)のメディア担当理事であるロビン・マウンジー(Robin Mounsey)氏は、次のように語った。「3月3日午前に、現行の賦課金制度の代替計画の進捗状況に関する質問が議論の場に上程されたと承知しています。BHAは関心をもって、政府の回答を待ちます」。

 競馬界は政府の新しい資金調達制度の下、年間3,000万ポンド(約48億円)以上の追加収入を得ることになるだろう。

 前政権は2014年に賭事法(免許&広告)を改正し、競馬の資金調達制度に抜本的改革を行う権限を政府に与えた。

 第一次立法ではなく政府の権限を行使することで、賦課金制度の代替計画は急速に進展する可能性がある。しかしこれにはまだ、国会の承認と国家補助規制の面からのEU(欧州連合)の承認が必要となる。

 とはいえEC(欧州委員会)は2013年、フランスにおいて競馬対象のオンライン賭事に賦課する計画は国家補助規制ルールと矛盾しないと裁決した。競馬界は、この裁決は英国にも適用される先例であると確信している。

 一方で、政府が海外賭事業から資金を徴収する新制度を導入するまでの間、競馬界は物議を醸している公認賭事パートナー制度(authorised betting partner policy公平で持続可能な資金提供関係を競馬界と築いているブックメーカーに与えられる資格制度)を継続するだろう。

 3月2日に大臣たちと会合を持ちこの計画を知らされたブックメーカーは、EU法に基づく異議申立てを検討しているようである。

 ラドブロークス社(Ladbrokes)のメディア担当理事であるデヴィッド・ウィリアムズ(David Williams)氏は、このニュースについて次のように語った。「私たちは昨年10月に海外を拠点とした賭事事業からの資金提供を保証しましたが、競馬界はこれを拒否しました」。

 「この変更の詳細には、EU法との適合性など厄介な事柄が含まれていることでしょう。ブックメーカーから競馬界に対するメディア権料などの資金提供は右肩上がりです。私たちは関心を持ってこの変更の詳細を待つばかりです」。

 ウィリアムヒル社(William Hill)のスポークスマンであるジョン・アイヴァン-デューク(Jon Ivan-Duke)氏は次のように語った。「ウィリアムヒル社は公正な資金提供額を定めるために、競馬界とともに熱心に取り組んできましたが、ここ数年で大幅に増加したメディア権料を考慮に入れた解決策がもたらされることを望みます。また、競馬界の問題のために限らない効率的な資金の使い道を監督する機関の役割を継続させる必要があります」。

 「賦課金支払いの減少は、メディア権料やストリーミング料の増加により適切に補われています。競馬界の要求とは裏腹に、競馬界で必要とされているものは満たされていると私たちは考えます」。

 計画中の変更は競馬賭事に限られる。このことは、競馬賭事権(訳注:英国競馬を対象に賭事を提供するいかなる業者も事業を営むために購入しなければならい権利)のようなものが他のスポーツ賭事にも拡大されるのではないかという賭事産業の懸念を和らげるかもしれない。

 BHA(英国競馬統轄機構)のCEOニック・ラスト(Nick Rust)氏は3月1日にニューベリ競馬場において、「近い将来、競馬界の資金調達制度について、政府から発表があるかもしれない」とほのめかしていた。

 同氏はこう語った。「競馬賭事権についての発表が近づいています。BHAのスティーヴ・ハーマン(Steve Harman)会長、業務担当理事のウィル・ランブ(Will Lambe)氏をはじめ競馬産業内の多くの人々は、海外賭事業のためにできてしまった財政の抜け穴を塞ぐため、競馬賭事権が導入されるように辛抱強く取り組みました」。

 ラスト氏は、政治家に対しロビー活動をしてくれた競馬界の人々に感謝し、「この努力が間もなく報われることを期待しています」と付言した。

 ブックメーカーから競馬場へのメディア権料支払いは急増していたが、同時に海外賭事業の増加によって賦課金額が減少したために、競馬界は現行の賦課金制度を廃止するよう長年要求してきた。その目標達成のために、近年、競馬界は政府の有力者を味方につけていると思われている。

 ジョージ・オズボーン(George Osborne)財務大臣は2014年3月、その年の予算演説において、政府は海外賭事業に賦課金を課すだけでなく、賦課金制度のより広範囲にわたる改革と、競馬を支援するための競馬賭事権導入を検討していると発表し、競馬界のリーダーたちを大いに喜ばせた。

 また、翌年の予算演説で、オズボーン大臣は政府が競馬賭事権を導入するつもりであることを確認した。

 超党派の競馬および馬生産業グループ会議(Parliamentary All Party Racing and Bloodstock Industries Group)の共同議長を務めるローレンス・ロバートソン(Laurence Robertson)議員は、こう語った。「政府が競馬の資金調達問題を前進させていることに満足しています。このような方法で実行する方が賢明です」。

 「競馬賭事賦課公社(Levy Board:賦課公社)の役割が今後小さくなることを考慮すれば、この改革に関する合意の程度は、提案される支払率と追加収入の使用方法に掛かっています」。

 「個人的な見解では、総賞金が2,000~5,000ポンド(約32万~80万円)の格下レース、とりわけこのレベルの障害競走に一層多くの資金が配分される方法を見つける必要があります。最高レベルの競走には高額賞金が約束されていますが、各馬がキャリアを開始するのはそのようなレースではありません。私たちはそのレベルに存在する資金問題に気を配る必要があります」。

3月16日予算演説で示された新制度導入の予定表

2016年春:賭事産業の資金提供のレベルを通知するために、賭事産業および競馬界の意見募集期間を開始。

2016年夏から秋:国家補助規制に関するEC(欧州委員会)への通知。

2016年末:第二次立法と影響評価の公表。

2017年4月:新制度導入。

By Bill Barber

(1ポンド=約160円)

(関連記事)海外競馬情報 2015年No.12「公認賭事パートナー制度導入が競走のスポンサー契約に影響(イギリス)

[Racing Post 2016年3月3日「Government tells bookies to pay up」]


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