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海外競馬情報
2015年07月20日  - No.7 - 6

事故馬データベース、予後不良事故の予測率が向上(アメリカ)【獣医・診療】


 現在、事故馬データベース(Equine Injury Database)を解析している研究者は、競馬場における予後不良事故の発生時期を65%予測できると確信している。

 スコットランドのグラスゴー大学のティム・パーキン(Tim Parkin)博士は、情報の追加により、この確率をさらに高めることが可能であるが、そのためにはサラブレッド競馬産業の協力が必要であると言及している。

 パーキン博士は、7月8日の競走馬福祉・安全サミット(Welfare and Safety of the Racehorse Summit キーンランド競馬場で開催)において、事故馬データベースの最新情報を提供した。ジョッキークラブが管理する事故馬データベースは2008年に創設され、現在、2009年〜2014年の情報(220万レース・15万頭)を有している。これは、北米の全レースの94%を網羅している。

 パーキン氏は以前、レース中における予後不良の事故率には一貫性があり、ダート・芝・人工馬場において“著しい相違”があることを発表した。過去6年間のそれぞれの馬場における予後不良の事故率は、以下のとおりである。
 

  全体 ダート 人工馬場
1,000頭当たりの
予後不良事故
1.88〜2.00件 2.07件 1.65件 1.22件


 パーキン博士は、この6年間の数字について、「各馬場間には大きなばらつきがありますが、全馬場を通じた予後不良事故発生には、殆ど変化がみられませんでした」と語った。

 同博士は、事故馬データベースの分析に20〜25のリスクファクターを用いており、これによって予測モデルが開発されていると述べた。リスクファクターには、過去のデータベースに報告された故障、獣医記録が取られた期間、1人の調教師が管理した期間、競走距離や馬場の種類、競走成績、クレーミング競走における譲渡価格、デビュー年齢が含まれている。

 パーキン博士は、各馬の獣医記録・治療歴・調教記録などの情報を、さらに得ることが課題であるとして、次のように語った。

 「予測率65%のモデルが最高でしょうか?100%にすることは不可能ですが、追加情報を集めることにより、この割合を高められることは確かです。このことが重要な課題であると確信しています」。

 パーキン博士はプレゼンを終えた後、「競走馬は競走環境で1%、調教環境で99%の時間を過ごしているので、レース前の獣医検査の情報は、予後不良の事故発生のリスク予測にあまり役に立ちません」と語った。

 そして、次のように続けた。「馬の日常的な行動、実施されている治療の種類などの情報の入手が、より重要です。完全な治療記録の入手について話し合っていますが、あと3〜4年の時間が必要です」。

 パーキン博士は、“サラブレッドヘルスネットワーク(Thoroughbred Health Network)”に携わっている。このネットワークにより、英国の調教師、獣医師、馬主が協力し、競走馬の情報を任意で共有できる。また、パーキン博士は、馬の健康維持法と事故予防策に関する情報提供のため、読みやすいブックレットを作成する予定であると述べた。

 パーキン博士は、「私たちは、この課題に関わった人数を算出する予定ですが、これらの人々から信用を得ることは容易ではありません」と付言した。

 また、パーキン博士はプレゼンにおいて、デビュー戦における予後不良の事故率は、より年齢が高い馬の方が高いことを指摘した。すなわち、デビュー戦における予後不良の事故率は、2歳馬が最も低いとのことである。

 パーキン博士は、「2歳時に調教を開始することは、極めて重要です」と付言した。

By Tom LaMarra

[Racing Post 2015年7月8日「New Information 'Critical' to Injury Database」]


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