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海外競馬情報
2015年06月20日  - No.6 - 3

競馬のメディア権契約を扱う共同事業体は成功するか(イギリス)【開催・運営】


 競馬のメディア権契約は複雑なテーマであるが、競馬界の財政にとって重要である。このうえで、5月中旬に競馬場メディアグループ(Racecourse Media Group: RMG)とアリーナレーシング社(Arena Racing Company: ARC)が、競馬界と賭事産業の双方にとって利益となる共同事業体の設立に合意したニュースは、重要な意味をもっている(訳注:英国において、RMGは34競馬場、ARCは15競馬場を所有している)。

 この英国の2大競馬場グループは、商売上のライバルであるが、必要に応じて協力しても不思議ではない。RMGとARCは、GBIレーシング社(GBI Racing)を通じて連携している(GBIレーシング社は、RMGとARCのそれぞれの傘下にある競馬専門チャンネルのレーシングUK社とアットザレーシズ社の共同事業体であり、英国とアイルランドの競馬の映像を海外賭事業者に販売している)。また昨年、RMGとARCは9つの独立競馬場とともに、レース前データの使用を許諾する競馬場データ社(Racecourse Data Company: RDC)を設立した。

 この映像とデータを提供する単一の制作センターの設立表明により、RMGとARCは、競馬界と賭事産業の協力方法を刷新する“潜在的な一歩”を踏み出した。

 ARCは他の競馬産業分野でも影響力をもっているとされ、オーナーのルーベン兄弟(Reuben Brothers)は、可能であれば独自路線を進もうとする傾向をみせてきた。したがって、共同事業体の設立はARCにとって大きな変化と言える。

 しかし、現時点では“潜在的な一歩”にすぎない。これは、現時点で制作センター設立の意図は、最終的にSIS社(Satellite Information Services: 衛星情報サービス)とターフTV社(Turf TV)を現行の仕組みから排除し、競馬場に直接ブックメーカーと契約締結させることにあるからである。

 いつものことながら、このようなことには多くの複雑な要素が伴う。昨年後半に実施されたSIS社とARCとのメディア権契約更新に関する協議は、SIS社がベッティングショップ部門を取り巻く政治的な不確実性を理由に取り止めたため、行き詰ってしまった。

 ブックメーカーが新規ベッティングショップを開業し、そこに設置されるゲーム機の台数、賭事客がゲーム機に費やす金額などの問題に直面しているとしても、総選挙が終了し、新体制がある程度明らかになれば、協議は再開されるとみられていた。

 しかし、RMG/ARCの発表を受けてSIS社が出した声明は、総選挙前にARCと協議が再開していたことを明らかにした。このことは、両社が契約を交わす可能性が残されていることを示している。実際、ARCがSIS社に合意を急がせるために、5月中旬の発表を警告として利用したと見る者もいた。

 両社間で契約が締結されず、競馬場がブックメーカーにレースの映像を直接販売するようになれば、さらなる問題が生じるかもしれない。競馬場がレースの映像を一括販売を試みた場合、競争法上の問題に直面するであろう。競馬権(racing right)に関しても、同じことがいわれている。ターフTV社が登場してSIS社の独占状態を崩した当時、ブックメーカーは反発したが、今や状況は変化し、ブックメーカーはすべての競馬場を一束にすることには乗り気でないようである。

 RMGとARCは密接に協力しているのかもしれないが、自らが保有するメディア権については、管理を強化し続けるだろう。一方、ブックメーカーは映像とデータの発信元が1つであるにも関わらず、それらの権利が別々に販売されるのであれば、受信サービスを選択する機会が欲しいと述べている。
映像を一括販売する危険性は、売れ残るパッケージもあることを意味する。オールウェザーレースを含む一括販売は、冬場に需要が保証されたレースを含むことから、ブックメーカーの間で人気を博すであろう。一方、小規模な競馬場のレースを含む一括販売は、それほど魅力的ではないであろう。いくつかのパッケージが売れ残った場合、それに関係する競馬場に何が生じるだろうか?

 現在、賭事産業を取り巻く環境から、さらなる問題が引き起こされている。総選挙における保守党の勝利により、賭事産業は最悪のシナリオは免れたが、依然として厳しい時代が続く可能性がある。それは、コーラル社(Coral)の親会社であるガラコーラル社(Gala Coral)が、最新業績を発表した際に明らかになった。

 スコットランド議会に一層大きな権限が委譲されることを考えた場合、ベッティングショップとゲーム機は、厳格な管理下に置かれるであろう。このことにより、ベッティングショップが減少するかもしれない。また、今年のゲーム機税の引上げと最高発売金の50ポンド(約9,500円)への引き下げの影響により、おそらく英国におけるベッティングショップの減少は加速するであろう。

 競馬権と賭事産業の競馬権に対する負担額も、もう一つの評価困難な問題であり、ブックメーカーが新しい契約の締結に飛びつくことはありそうもない。

 独立ブックメーカーが、そのベッティングショップのために競馬場から映像とデータを直接購買しようにも、その供給源がないことも問題である。しかし、RMGとARCは、このようなブックメーカーに対しても引き続き競馬映像の提供を保証すると述べている。

 最初のベッティングショップのメディア権契約が更新されるのは、2016年末である。その後、数ヵ月経てば、どのような状態になっているか明らかになるであろう。

By Bill Barber
(1ポンド=約190円)

[Racing Post 2015年5月22日「Jury out on new venture’s prospects of success」]


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