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2014年08月20日  - No.8 - 2

3歳牝馬タグルーダ、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを優勝(イギリス)【その他】


 約40年前、3歳以上の中距離戦では英国最高賞金額のキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)で牝馬が素晴らしい勝利を収めて以来、タグルーダ(Taghrooda)が同じ牝馬として初めて同レースを制し、古き良き時代に時計を逆戻りさせた。

 この3歳牝馬は、比較的制しやすい先週末の愛オークス(G1)への出走をハムダン殿下(Sheikh Hamdan)が拒絶するという決定が正しかったことを証明した。2着馬テレスコープ(Telescope)との斤量差15ポンド(約6.8 kg)を大いに利用し、1951年のこの競走の創設以来、初めてオークス馬が優勝することとなった(訳注:テレスコープは133ポンド(約60.3kg)、タガルーダは118ポンド(約53.5kg)の負担重量を背負った)。

 キングジョージ発走前にこの決定に疑問があったとすれば、それは払拭された。タグルーダはポール・ハナガン(Paul Hanagan)騎手を背に、最終200mでテレスコープとムカドラム(Mukhadram)を急追して素早く抜き去り、3馬身差の勝利を収めたのである。なお、同厩馬イーグルトップ(Eagle Top)は4着となった。

 今回、タグルーダが1976年のキングジョージ勝馬ポウニーズ(Pawneese)に並ぶ功績を挙げるまでの間、サンプリンセス(Sun Princess 1983年&1984年)、オーソーシャープ(Oh So Sharp 1985年)など4頭のオークス馬がキングジョージに挑戦したが、優勝することはできなかった。なお他に3歳でキングジョージを制した牝馬は1973年と1974年に2連勝を達成したダリア(Dahlia)だけである。

 ジョン・ゴスデン(John Gosden)調教師は次のように語った。「見事なパフォーマンスでした。鮮やかで我慢強い騎乗ぶりに満足しています。彼らは果敢に戦いました。走りやすい馬場ではありませんでした」。

 「タグルーダはオークスからかなり上積みがあり、牡馬のような首をしています。彼女は本領を発揮しました。先行馬に挑むのは難しい状況だったろうと思います。コーナーで仕掛け始めるのに格好の位置にいましたが、タグルーダが他馬に決定的な差をつけるのを見て感激しました」。

 馬主がタグルーダを繁殖のために今年いっぱいで引退させる意図を持っていることから、凱旋門賞(G1)が彼女の最後のレースとなるかもしれない。

 ボイルスポーツ社(Boylesports)は10月のロンシャン競馬場でオークス馬対ダービー馬となるタグルーダとオーストラリア(Australia)の対決に5対6のオッズを付けた。また同社は凱旋門賞で4頭に1番人気のオッズ5-1(6倍)を付けており、両馬のほかシーザムーン(Sea The Moon)トレヴ(Treve)も人気を分け合っている。

 ゴスデン調教師は次のように続けた。「凱旋門賞に挑戦することは全く理にかなったことですが、決定権はハムダン殿下にあります。タグルーダはまだ成長を続ける3歳牝馬であり、かなり有利なアローワンス(負担重量軽減)を得ることができます」。

 この勝利はゴスデン調教師をリーディングトレーナーに返り咲かせ、ハムダン殿下をリーディングオーナー部門で優位に立たせた。ハムダン殿下はラマダーン期間中のためアスコット競馬場に姿を見せなかった。

 ゴスデン調教師は、タグルーダをキングジョージに出走させるというハムダン殿下の決定を称賛し、次のように語った。「英オークス優勝後に愛オークスに進むことは防衛的な選択だったでしょう。ハムダン殿下はとても大胆で、まさに英断でした。少しばかり特別な決定だったと思います」。

 ハナガン騎手は次のように語った。「タグルーダのような優良牝馬を難易度の高いレースに出走させることは競馬界全体にとって素晴らしいことです。ライアン・ムーア(Ryan Moora)騎手が騎乗するテレスコープに並んだ時、彼女は落ち着いて攻めるだろうと確信していました。彼女のことをとても誇らしく思います」。

 今年のエクリプスS(G1)勝馬ムカドラムが3着となったことで、ハムダン殿下は初めてキングジョージの1着と3着を占め、生産者のシャドウェル・エステート社(Shadwell Estate Co. Ltd.)にとっては素晴らしい夏になった。

 ハムダン殿下のレーシングマネージャーであるアンガス・ゴールド(Angus Gold)氏は次のように語った。「私たちはここ数年不振でしたが、悪い年も良い年と同様の労力と努力を注いでいます。競馬に情熱を傾けているハムダン殿下には、わくわくさせられます。自家生産馬でこのようなことを達成できたことは、大いに満足のいくことです」。

 そして次のように付言した。「次の選択対象となるレースは3つあり、それはヨークシャーオークス(G1)、チャンピオンS(G1)そして凱旋門賞です。ゴスデン調教師は牝馬限定戦について示唆しましたが、今やタグルーダはオークスと同様にキングジョージも勝ったので、ハムダン殿下は凱旋門賞に進みたいと考えているのではないでしょうか」。

 ゴールド氏は、ハムダン殿下にタグルーダを愛オークスではなくキングジョージに向かわせる気にさせたのはアローワンスであると述べた。

 同氏は次のように続けた。「レーシングマネージャー助手のリチャード・ヒルズ(Richard Hills)氏に、愛オークスへの出走を決定する前にキングジョージを検討し、どちらへの出走が適切か見極めるべきだと言いました。彼はこの負担重量ならハムダン殿下に相談し、真剣に検討しなければならないと答えました」。

 「それについて検討すればするほど、タグルーダが私の考え通りの優良馬であれば、この負担重量で走らせるのは素晴らしいことになるだろうと思えてきました。ハムダン殿下は、ゴスデン調教師と愛オークスにターファシャ(Tarfasha)を出走させたダーモット・ウェルド(Dermot Weld)調教師に電話し話しました」。

 「ゴスデン調教師は、タグルーダが来年も現役を続けるのならば愛オークスに向かうべきと思うが、殿下が彼女を引退させるつもりでより冒険が伴う挑戦を望むのであれば、このビッグレースに向かいましょうと言いました。ハムダン殿下が3歳牝馬を引退させる方針を採っている故の判断でした」。
 

2014年キングジョージ6世&クイーンエリザベスS結果
    着差 発走前オッズ
1 着  タグルーダ   7-2(4.5倍)
2 着  テレスコープ 3馬身 5-2(3.5倍)
3 着  ムカドラム 短アタマ 12-1(13倍)
馬主  ハムダン殿下
調教師  ジョン・ゴスデン氏
騎手  ポール・ハナガン氏
厩務員  ヴェロニカ・ストラウハラヴァ(Veronika Strouhalava)氏
生産者  シャドウェル・エステート社


By Jon Lees

[Racing Post 2014年7月27日「Sparkling Taghrooda rewards bold move」]


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