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2014年02月20日  - No.2 - 1

ジョッキークラブの2011年競馬再興構想がもたらした成果(アメリカ)【開催・運営】


 ジョッキークラブは2年半前、数年来退潮傾向にあるサラブレッド競馬を再興させる希望を抱いて、多数の新規構想を立ち上げていた。

 (1) テレビ放映の改善、(2) ファンタジーゲーム(訳注:自分が馬主になった気分で馬を獲得し競走させるシミュレーションゲーム)、(3) ソーシャルゲーム(訳注:ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上で提供されるオンラインゲーム)、(4) 新しい馬主用ツール、(5) ソーシャルメディア強化の取組み。これらはマッキンゼー社(McKinsey and Co.)が作成した2011年調査報告“サラブレッド競馬・生産のための継続的な成長の促進”での提言を基に推し進められる9つの課題の内の5つである。

 この調査報告は、競馬界が他のプロスポーツやエンターテインメントと同様に環境改善に尽力しなかった場合の悲観的予測を行った。現状では2020年までに賭事売上げ25%減、馬主数50%減、存続できる競馬場25%減がありうると提示した。

 ジョッキークラブはこれらの計画に数百万ドルを投資し、その5年計画の途中でいくつかの重要な教訓を学んだ。

 一例としては、多くの場合自ら事業を行うよりも共同出資者になるほうがベターだということだ。ジョッキークラブは、ファンタジーゲームの“メジャーリーグホースレーシング(Major League Horse Racing)”とソーシャルゲームの“サラブレッドワールド(Thoroughbred World)”を開発した。これらは両方とも変化が激しいゲーム市場で躍進せず棚上げされた。

 ジョッキークラブのビジネス開発担当の副理事長ジェイソン・ウィルソン(Jason Wilson)氏は、次のように語った。「ゲームへの需要はありますが、消費者はフェイスブックや携帯電話、その他の形態に目が移ります。ジンガ(Zynga 訳注:カリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置くソーシャルゲーム会社でおもにフェイスブック上で動くブラウザゲームを開発している。代表的なゲームには“シティビル”や“ファームビル”などがある)のような企業でさえも苦戦しています。今やコンテンツ開発者は他に大勢います。私たちは最前線で開発を行うよりも、他社が開発した核心をつくいくつかのゲームを支援するほうが良いと感じました。私たちは共同販売者となる方が良いと考えています」。

 また、競馬界がターゲットとすべき層は20歳前後だということも学んだ。

 「40代と50代の競馬ファンを対象に行った調査では、彼らが20代かそれ以前に競馬に興味を持ち始めたことが分かります。私たちが次世代のファンに重点を置かなければ、彼らがひょっこり姿を現すことはないでしょう。私たちは彼らに働きかけ関係を持たなければなりません」とウィルソン氏は語った。

 現在までで次世代と繋がりを持つための極めて効果的な方法は、“アメリカズベストレーシング(America’s Best Racing)”の名の下で発足した取組みである。ウィルソン氏は、ただ新しいウェブサイトとして開始したことがキャンペーンに姿を変えたので、それらの取組みは実際には期待以上であったと語った。競馬は20州の4万人以上に紹介され、2013年には競馬大使ツアーを通じて全米のメディア広告露出回数は6,000万回に上った。同時に、ソーシャルメディアとウェブサイトは50万人のフォロワーを惹きつけ200万以上のページが閲覧され、そのうち63%の訪問者が引き続き閲覧し続けている。

 ウィルソン氏は次のように語った。「私たちはターゲット層に到達できています。エクイベース社(Equibase)あるいはデイリーレーシングフォーム紙(Daily Racing Form)よりもいっそう若者や女性に焦点を合わせています」。

 これまでにジョッキークラブの計画によってもたらされた最も重要な結果は、ことによると顧客サービスの改善と馬主開拓に関して競馬場の関心を高めたことかもしれない。ジョッキークラブとサラブレッド馬主・生産者協会(Thoroughbred Owners and Breeders ’Association: TOBA)が共同で開発した馬主向け情報サイト“オーナービュー(OwnerView)”へのアクセスは、サンタアニタパーク競馬場NYRA(ニューヨーク州競馬委員会)ウッドバイン競馬場およびローレルパーク競馬場のHPが主な入り口となっている。ジョッキークラブとTOBAは、秋に新規馬主の会議を支援することに興味を示しており、デルマーレーシングクラブ(Del Mar Racing Club)、キーンランド競馬場、NYRAおよびストロナックグループ(Stronach Group)は、馬主と競馬ファンに向けた独自の顧客サービス計画に一丸となって取り組み始めた。

 もし2011年マッキンゼー調査報告に発想を得た計画が、競馬をファンにとってより魅力的なものにし、新規馬主を獲得し、馬の福祉を向上させる長期的イニシアティブのきっかけとなったと最終的に証明されれば、2016年までに9つの課題のどれが実行可能であるかはそれほど大きな問題ではない。真の目的は達成されているだろう。

 「私たちは単独では続けられないという認識は常にありました。マッキンゼー調査報告の目標の1つは議論を誘発することであり、その観点からすればおそらくその役目は果たしています」。

By Eric Mitchell

[The Blood-Horse 2014年1月18日「What’s Going On Here―Leading by Example」]


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