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2014年11月20日  - No.11 - 1

地元馬が優勝しないメルボルンCに変化は必要か?(オーストラリア)【開催・運営】


 オーストラリア人たちは、また外国馬がメルボルンカップ(G1)を優勝したことで愚痴を言っている。実際、今年プロテクショニスト(Protectionist)が豪州最高賞金をドイツに持ち帰る前から彼らは不満を漏らしていた。

 彼らの間で語られている考えの1つは、メルボルンカップに参戦する外国馬の頭数を制限することである。外国からの遠征馬は近年著しく増加し、その結果、豪州馬の優勝は減少している。

 現状では、豪州産馬は2009年からメルボルンカップを優勝しておらず、過去5年の勝馬のうち3頭は欧州調教馬であった。豪州のホースマンたちはうんざりしている。

 彼らはルールを変更したがっている。グローバリゼーションも自由市場も忘れて、このレースが古き良き時代に戻ることを望んでいるのだ。すなわち、“地元馬のための地元レース”である。

 誰もが率直に口にしたことは、メルボルンカップにおいて既得権を得ることである。驚くには当たらないが、地元生産者は出走馬の半分は豪州産馬であるべきだと提案し、地元調教師は豪州調教馬はその地位を保証されるべきだと考えている。

 利己的で虫のいい話以外に彼らが思いつく唯一の主張は、豪州の観衆は外国からの遠征馬に親しみを持っていないかもしれないということだが、これもルール変更には十分説得力ある主張とは言えない。

 “国を休止させるレース”に勝つチャンスが失われていることを悲しむオーストラリア人がいることはわかるが、今やメルボルンカップは国を越えたものになっていることを彼らは受け入れなければならない。世界有数の誰もが優勝したいレースであり、当然のことながら、メルボルンカップ制覇は手が届きそうで届かないものである。

 外国からの遠征馬の質が向上していることは間違いなく、これが地元馬にとっての問題の一部となっているが、オープンハンデキャップ競走なのだから、どこで調教され、また生産されていようが一流馬が参戦することができる。そして、一般的に2マイル(約3200m)を得意とする一流馬は欧州と日本で見られる。

 地元のピーター・ムーディ(Peter Moody)調教師は、10年後には豪州産馬も長距離レースで欧州馬と張り合えると考えているが、これは楽観的かもしれない。日本は20年間かけて何とか成し遂げてきたが、最高級のステイヤーを生産し始めるまでに競馬産業全体の努力と多額の投資を要した。

 豪州は長距離レースにおいてスピードと耐久面での早熟性を持つ馬の生産、購買、調教や競走の向上に取組む必要がある。また、持久力のある馬にもっと機会を与えるために競馬番組を変更しなければならないだろう。

 国全体がこの考えに同意するならばおそらく10年後にはうまくいくかもしれないが、馬の生産は数当て宝くじのようなものである。優良中距離馬を生産する欧州陣営に挑戦するのであれば、全員が一丸となって取り組む必要があるが、それはありそうもないことだ。

 もっとも豪州の調教師は英国から実績のあるステイヤーを購買し、すでに次善策を見いだしている。この現象は数年続いているが、輸入されたグリーンムーン(Green Moon)とフィオレンテ(Fiorente)がそれぞれ2012年と2013年のメルボルンカップを優勝し、今や功を奏しつつある。

 近年のメルボルンカップは、自由市場の諸要素がうまく機能している見事な事例である。これはNFLやツールドフランスのように国境を越えて世界へ自らを売り込む国際スポーツイベントにとって素晴らしいサクセスストーリーでもある。

 ただ残念なのは、すべてのオーストラリア人がメルボルンカップがこれまでに得た象徴的で国際的な地位を受け入れているわけではないことである。今年、同レースは6ヵ国から出走馬を集め、初めてドイツ優勝馬が出たことを祝った。これは祝うべきことであり、制限をかけるべきことではない。

 プロテクショニストは、レッドカドー(Red Cadeaux)に4馬身差をつけてメルボルンカップを優勝したことで、RPR122を獲得し、ワールドチャンピオンステイヤーとして今年を終えそうである(訳注:RPR(Racing Post Ratings)は、レーシングポスト社が独自に、競走レベル、出走馬の質、負担重量、走破タイムに基づき当該馬の競走中のパフォーマンスを考慮し、決定しているハンデキャップレーティング)。

 11月8日はオーストラリア人にとって反撃のときであった。豪州馬はメルボルン春開催の三大競走(コーフィールドカップ、コックスプレート、メルボルンカップ)すべてで北半球馬に敗北したが、ダーレークラシック(1200m G1)では異彩を放った。

 欧州と日本はあらゆる中距離および長距離の優良馬を有しているかもしれないが、オーストラリアはまだスプリント部門で世界をリードしており、11月8日にフレミントン競馬場の直線コースで、世界最速馬3頭が他馬の中から抜け出した。

 テラヴィスタ(Terravista)が今年の世界最高のスプリンターのパフォーマンスを見せて先頭でゴールし、1番人気馬シャトークア(Chautauqua RPR125)をクビ差で負かしてRPR126を獲得した。

 ランカンルピー(Lankan Rupee)はそれまでスプリンターの中で世界最高のレーティングのRPR123を誇っていたが、ベストの状態ではなく3着に敗れた。

 先着の3頭は、G1を数回制しているバッファリング(Buffering)に1馬身3/4差をつけた。これら3頭はすべて欧州のトップレベルのスプリント競走を優勝するのに十分な能力を持っていると思われる。

 欧州の有力スプリンターであるスレードパワー(Slade Power)は11着に終わり、レース後に跛行していることが判明した。しかし、ベストの状態であったとしても先着3頭に対しては苦戦を強いられたであろう。3頭は最高峰にあるようだった。

 テラヴィスタの来年のロイヤルアスコット開催への参戦が噂されている。同馬がダーレークラシックと同じ状態で出走すれば、欧州馬は太刀打ちできないだろう。

 このことは改めて世界中の競走馬の質の多様性を浮き彫りにする。欧州はトップステイヤーを、豪州はあらゆるスピード馬を有している。

By Sam Walker

[Racing Post 2014年11月10日「Aussie-bred horses long way behind our stayers」]


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