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2014年01月20日  - No.1 - 5

禁止薬物投与のバトラー調教師に5年間の調教停止処分(イギリス)【その他】


 G1優勝調教師のジェラード・バトラー(Gerard Butler)氏のキャリアは、12月4日に5年間の調教停止処分を科されたことで台無しになった。この処分は、BHA(英国競馬統轄機構)の懲戒委員会が“免許を有する調教師としてあるまじき行為”と表現し、それは管理馬に禁止薬物アナボリック・ステロイドを投与したために科されたものである。

 馬への治療薬サンゲート(Sungate)の使用が中心と考えられていた本件の厳しい処分において、嫌疑7件を全部認めたバトラー調教師(47歳)は、サンゲートより10倍の効力があり人間用に開発された無認可薬物レキソジン(Rexogin)をインターネットで購入し、スタノゾロール(stanozolol)で陽性反応を示した9頭中の4頭に投与していたことも認めていたことが分かった。

 懲戒委員会は、バトラー調教師の一連の行為は管理馬の利益を守るという義務に著しく背き、英国競馬の公正確保、適切な運営をせず、信頼性を深く傷つける行為に当たると結論づけた。

 別のステロイド使用の事案において、ゴドルフィンのマームード・アル・ザルーニ(Mahmood Al Zarooni)調教師は、8年間の調教禁止処分を科されている。

 16年間のキャリアでエクリプスS(G1)やモルニー賞(G1)を制したバトラー調教師は、48時間で管理馬の転厩準備を行うことになる。

 調教停止処分が言い渡されたバトラー調教師は、「心を落ち着け、対応を考えるために、毎日を過ごしたいと思います。明日午後に声明を出す予定です」と語った。

 2月にバトラー厩舎が調教中薬物検査を受けた際に、診断記録の調査により厩舎内でサンゲートが使用されていたことが明らかになった。バトラー調教師は、5頭の管理馬にサンゲートを使用していたことを認めたが、その後の薬物検査で9頭の管理馬がスタノゾロールの陽性反応を示した。

 多くのサンゲートの投与は、バトラー厩舎を担当するロスデールス獣医診療所(Rossdales)の獣医師ティム・ホーソン(Tim Hawthorne)氏によって行われていたが、バトラー調教師は自らも管理馬アズラグ(Azrag)、ザインイーグル(Zain Eagle)、ザインスピリット(Zain Spirit)およびプリンスアルザイン(Prince Alzain)にサンゲートを投与したと述べていた。

 しかし聴聞会での反対尋問においてバトラー調教師は、スタノゾロールをUKステロイドファーマシー(UK Steroids Pharmacy)からインターネットで購入していたことを初めて認めた。このスタノゾロールはサンゲートではなく、サンゲートの10倍の濃度でステロイドを含有するレクソジンであった。

 UKステロイドファーマシーのウェブサイトは、動物ではなくボディビルダー向けの販売を目的としており、不祥事を起こした短距離走選手ベン・ジョンソンを引き合いに出し、レクソジンを次のように宣伝している。「多くのドーピング事件で確認されているように、スタノゾロールは一般に人気のあるステロイドの1つです。たとえば、ベン・ジョンソンの魔法のような短距離走を可能にした薬物の1つです」。

 懲戒委員会は、バトラー調教師のレクソジン5箱(10本入り)の購入方法、およびそれまで一度も関節内注射を行ったこともないにも拘わらず獣医師の助言も受けずに治療馬の球節と腕節に2度注射した方法を明らかにした。バトラー調教師は、その後それらの馬が更なる治療を必要としたときに自ら行った注射のことを獣医師には告げなかった。

 同調教師は、注射の前に若手スタッフの手を借りて鎮静剤で馬を落ち着かせたと説明した。

 懲戒委員会は、資格のない人間が動物に獣医行為を行うことは犯罪なので、同調教師は競馬施行規程だけではなく法律も無視したことになると述べた。また懲戒委員会は、サンゲート投与と正確な医療記録を残さなかったことは深刻な違反行為であるが、動物用でない高用量ステロイドをこっそり入手し関節内注射で管理馬に投与していたことはそれ以上に重大な違反行為であると発表した。

 この処分を決定するに当たり懲戒委員会は、バトラー調教師のこれまでの善良な性格、財務上の不安の告白、行った多くの証言などを考慮したが、2018年12月4日までの5年間の調教停止処分は同調教師の行為の重大性を反映したものであると述べた。

 発表はさらに次のように続いた。「バトラー調教師が投与した1回分のレクソジンは、最低3ヵ月間の調教停止処分に相当します。バトラー調教師はこの薬物を16回違法に投与したことを認めました。これは免許を有する調教師としてあるまじき行為です」。

 BHAの公正・法律・リスク担当理事のアダム・ブリッケル(Adam Brickell)氏は次のように語った。「懲戒委員会の決定を尊重する立場のBHAとしては、ジェラード・バトラー調教師の最も大きな罪は、4頭の管理馬の利益を守らなかったことであり、英国競馬の公正、適切な運営および信頼性を著しく傷つける行為であると考えます」。

 獣医師が助言してサンゲートが使用された馬のサンプルから陽性反応が出たことに関し、懲戒委員会は、調教師が管理馬の体内に禁止薬物が存在したことに全面的責任を負うことはルール上明らかであると述べた。しかし、臨床獣医師は定期的に競走馬を診察し競馬施行ルールに精通しているはずであり、助言すべきであったにもかかわらず、このような薬物を調教師の管理下にある馬に投与してしまったことは今後も懸念として残ると述べた。

 バトラー厩舎に所有馬を預託している馬主の1人アラン・スペンス(Alan Spence)氏は、この処分を“非常に厳しい”とし、「私自身愕然としており、ジェラードとその家族を気の毒に思います」と語った。

By Jon Lees

[Racing Post 2013年12月5日「Disgraced Butler given five-year ban」]


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