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2008年02月22日  - No.4 - 1

香港ジョッキークラブの挑戦(香港)【開催・運営】


 ウィンフリード・エンゲルブレヒト=ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges: EB)氏は世界の競馬界において最もパワフルな人物の1人で、その名前の綴りと発音は非常に難しく、多くの人から親しみを込めて“EB”と呼ばれている。 彼は1998年に香港ジョッキークラブに迎えられてから、この行政特別区が真のGIレベルの競馬の開催都市になる手助けをしてきた。多くは達成されたが、 まだやるべきことは沢山ある。

 2007年12月、競馬界の関心は芝のワールドチャンピオンシップスとして宣伝される年1回の香港国際レースデーに集中した。この日はまたしても香港がこのような短期間に何を達成したのか、それが注目される日であった。一昔前とは様変わりしたのだ。

 EB氏は、「世界の優れた競馬の中心地となること、これが私たちの従来のビジョンでした。優良馬はいくらか居ましたが、そのほとんどはG2クラスでし た。現在ではレーティングが115以上のG1クラスの馬が11頭おり、そのうち4頭が世界ランキングの15位以内に入っています。このことは私たちが香港 でとてつもない発展を成し遂げたことを表していますし、私たちはこの偉業に誇りを持っています」と語った。

 これらの偉業を成し遂げる舵取りをしたEB氏は、2007年2月に香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club: HKJC)の最高経営責任者となった。同氏はまた、アジア競馬連盟(Asian Racing Federation)の会長でもあり、元プロサッカー選手として多くの人々に知られている。彼は現在、賭事によって稼ぎ出した収益を再投資して香港競馬 を充実させる課題に取り組んでいる。具体的には競馬の質をさらに改善することと、これまで賭事ができなかった人々を新たな顧客にすることである。

 同氏は次のように述べる。「物事がある段階まで達すると、次のレベルアップにはより一層の努力が要るものです。私たちは香港競馬の質をさらに押し上げる 努力を続ける一方で、すでに世界中で香港競馬の素晴らしさが評価されている現在、私たちは以前にまして賭事面に資本投下するつもりです。香港は、最高とま では言えなくとも世界レベルの賭事商品を持っているという自負があります。世界中の人々が香港の賭金プールに賭けることが可能になるようにしたいと思って います。それは香港の地位をさらに高めることになるでしょう」。

 「ハッピーバレー競馬場のインターナショナル・ジョッキーズ・夜間開催の最終レースは、ありふれたハンデキャップレースですが、1億3,300万香港ド ル、つまり約900万ポンド(約21億6,000万円)が賭けられました。賭金総額が十分に大きいので、賭事客はオッズの変動を気にすることなく賭事を楽 しむことができるのです。場内馬券の売上げは、総売上げのわずか8%に過ぎません。私たちは世界最大の場外馬券発売システムとインターネット賭事システム を有しています。また、130万人の電話投票会員を有しており、もっと多くの人々に口座を開いて会員になることを促す宣伝活動をしています」。

 「香港競馬は賭事がメインであり、賭事は競馬のエンジンとモーターではありますが、香港競馬の将来はこれまでとは趣きが異なるものになります。5年後、 おそらくは10年後には、中国大陸で競馬が始まるでしょう。もし私たちが賭事だけに専念していたら、香港競馬と大陸の競馬の違いは何になるのでしょうか。 それは、香港が有する馬の質でしょう。売上げではとても競えませんが、馬の質すなわち競馬の質では競えます」。

 競馬の質の改善をしていてもなお、シャティン競馬場とハッピーバレー競馬場の来場者数は減少している。EB氏は、次のように述べた。「10年前、15年 前と比べて、香港ではレジャーの種類が格段に増えました。私たちがこの問題に対処せず、顧客志向にならなければ、競馬場ファンを失うでしょう」。

 「これまで未成年の入場を許可せず競馬を限られた者のものにしてきました。しかし、競馬はスポーツであり、私たちは競馬のスポーツ面をアピールしたいの です。現在では馬主やHKJCメンバーの子供たちは入場が許可されています。競馬は賭事だけにとどまるものではなく、スポーツです。今私たちはそのスポー ツとしての競馬を促進したいのです」。

 EB氏は、たった1人でスポーツ面に取り組んでいるわけではない。かつてメルボルンカップにトップクラスの外国馬を出走させることに尽力したマーク・プ レイヤー(Mark Player)氏は現在、HKJCの国際レース・セール開発担当理事として香港にトップクラスの外国馬を集める任務を受けている。

 プレイヤー氏は次のように語った。「私は香港の調教師に悪口を言われています。彼らの望みは、国際レースデーで国際的レベルの賞金が出ることであり、香 港馬を負かすような外国馬の参戦は望んでいません。けれども、海外のG2クラスの馬を連れてくるだけでは、香港のレースはただのG2レベルだと評価され、 香港競馬に価値をもたらさないことを彼らは理解しています。現在、ケープオブグッドホープ(Cape Of Good Hope)やヴェンジャンスオブレイン(Vengeance Of Rain)のような香港馬の海外遠征が増えてきましたが、これは10年前には想像もしていませんでした。香港からの海外遠征馬が増えれば、香港馬の素晴ら しさが際立ちます」。

 プレイヤー氏は次のように付言した。「これからも国際レースを開催する機会が増えるでしょう。しかし、もし1〜2レース追加することはできたとしても、 例えば国際レースのトライアルレースに外国馬を呼ぶことはできません。香港には1,100頭の馬がいますが、1年に720レースしか施行されませんので、 莫大な投資をしている馬主がそれらのレースで勝つチャンスを得ることは非常に重要なのです。香港の観客もまた、同じ馬が競走することを望みます。私たちが 新しい馬を連れてくれば、賭事客は的中させるのは難しいと考え、いくぶんか興味を失うでしょう」。

 プレイヤー氏はまた、香港競馬が生産分野に貢献することを望んでいる。この特別行政区は土地が限られているために馬産は存在しないが、同氏は香港国際 レースの優勝馬がトップクラスの種牡馬として生産界に還元されることに野心的である。そこで、同氏は毎年12月に開催されるHKJC主催のセールへ上場す る候補馬を調達する際には、自身で将来有望な種牡馬になる可能性のある世界トップクラスの1歳馬を見つけたいと望んでいる。

 プレイヤー氏がイギリスで購入した1歳馬は、英国のニック・リットモデン(Nick Littmoden)氏が調教し、14ヵ月以内に香港で2歳馬としてセリに出される。プレイヤー氏は理想とする馬のタイプについて明白な考えを持っている。

 同氏は、次のように語った。「1歳馬セリでは、大ざっぱにいって、短距離向きか中距離向きで将来有望な馬を求めます。早熟タイプである必要はありませんが、スピード血統であるかどうかを見ます」。

 「私たちは、購買馬の父が有名であることを望みます。1歳馬を購入してから売るまでにタイムラグがあるので、供用初年度種牡馬の産駒は、シャティン競馬場で売却する頃には、評価額が著しく変化することもあり得るので避けます」。

 「私たちは、獣医学的にも厳しい姿勢で臨みます。購入する馬のすべてをレントゲン写真で撮り、注意深く調べ、すべてを可能な限り究明します。レントゲン写真を撮っていないような馬は購入対象外になるでしょう」。

 「馬の気質はとても重要です。香港では馬が1日23時間馬房にいなければなりませんので、馬の気質が重視されます。また、血統における香港競馬への適応 性も検討します。血統において香港競馬に適した特性を持っていないからといって優良馬を除外することはありませんが、馬がそのような特性を持っていること に越したことはありません」。

  売却された馬が新馬レースの1つでデビューを果たしたとき、彼らは香港競馬を維持する巨大なからくりの小さな歯車となるだろう。

 香港政府の税収全体のうち約9%がHKJCによってもたらされており、このほかHKJCは多額の慈善献金をしている。このことは香港社会において、競馬がひと翳りもなくクリーンでなければならないことを意味している。

 EB氏は次のように述べた。「競馬はこのように莫大な納税と献金を行っているので、多くのお金を賭けた人々は、彼らのお金が公正に扱われているか知りた くなるでしょう。競馬の公正確保は重要です。クリス・マンス(Chris Munce)騎手が内部情報を売ったために2年の禁固刑を課されたことを酷評する人たちもいました。同騎手は最も重罪の八百長レースではなく、内部情報を 売ったことで起訴されました。これ自体が香港では刑事犯罪なのです。裁判官は香港にとって競馬は大きな重要性を持っているので、非常に高い水準の公正確保 が求められるのだと述べました」。

 同氏は次のように付言した。「私はベッティング・エクスチェンジを運営している人々の公正確保の努力に疑問を抱いてはいませんが、ベッティング・エクスチェンジは八百長ができるという認識を与え、それは香港の人々の競馬に対する信頼を破壊しかねません」。

 「原則として私は、スポーツにおいて負けることでお金もうけできるというのは間違っていると思います。これは間違ったインセンティブを与える仕組みで す。八百長の疑いがある際に証拠書類として個人の投票記録を提出できる手続きがあるとしても、ベッティング・エクスチェンジは競馬の公正確保を害する恐れ があります。香港の人々は競馬の公正確保に対して大変敏感であり、それゆえ私たちは公正確保に関して高いレベルを維持しなければならないのです」。

 高い公正確保のレベルを維持することは、EB氏に課せられた任務の1つでしかないが、彼は楽しみながら取り組んでいる。たしかにそれ以外に同氏が最優先で取り組む任務がある筈はない。

 同氏は、「香港競馬は世界で最も興味深い競馬です。私にとって、世界のいかなる競馬のポストも香港における今のポストより魅力的なものがあるとは思えません」と述べた。

By Lee Mottershead
(1ポンド=約240円)

[Pacemaker 2008年1月号「Rising to the challenge」]


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