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2008年10月31日  - No.21 - 1

英国の全天候型馬場でG1施行、2015年までに実現の見込み(国際)【開催・運営】


 10月6日パリで開催された国際競馬統轄機関連盟(International Federation of Horseracing Authority: IFHA)の年次総会で、人工馬場に関する議論が展開された。

 まず、イギリスの3競馬場で全天候型馬場の競走を提供しているアリーナレジャー社(Arena Leisure)の競馬担当取締役イアン・レントン(Ian Renton)氏は、イギリスでは7年以内にG1競走が人工馬場で施行されるだろうとの予想を披露した。

 レントン氏は、イギリスにおける全天候型馬場での競馬が、1989年10月にリングフィールド競馬場に始まり2001年11月に同競馬場でエクイトラック馬場からポリトラック馬場に取り替えられたことにより転換期を迎えたと回顧し、次のように語った。

 「次世代の馬場である人工馬場での競馬は、そこで初めての競馬開催が行われてから、大いなる飛躍を遂げました」。

 「しかし、もし私が7年前にダンドーク(Dundalk)競馬場やグレートリーズ競馬場(両競馬場では人工馬場で競馬を施行している)が欧州の高レーティング馬を迎えるべく、ロンシャン競馬場や凱旋門賞と競うことになるだろうと述べたなら、私の見識は疑われたでしょう」。

 「たった7年間で人工馬場での競馬はこんなに発展したのです。今後7年間で何が起こるか分りません。私は、イギリスの人工馬場で、G1馬が走るだけにとどまらず、G1競走が施行されると予想します」。

 この後、ジョッキークラブの最高経営責任者のサイモン・バザルゲット(Simon Bazalgette)氏は、この年次総会においてレントン氏の意見を支持した。バザルゲット氏率いるジョッキークラブの所有する競馬場のひとつであるケンプトン競馬場には、夜間でも照明下で競走を施行できる人工馬場がある。

 バザルゲット氏は、「ジョッキークラブ競馬場社(Jockey Club Racecourses: JCR)はすでに、来年ケンプトン競馬場でケンタッキーダービーの大変重要なトライアルレースを施行すると発表しており、私たちは同競馬場ですでに施行しているレースに加えて、一連の重賞競走を行おうという強い願望を持っています。そしていつの日か、それにG1競走が含まれるでしょう」と述べた。

 レントン氏は聴衆に向かって、イギリスは当初、冬の間に障害競走が中止となった際に賭事の対象となる開催を提供する必要性があったため、全天候型馬場での平地競走を発展させる必要があったと指摘した。

 その後、ウルヴァーハンプトン競馬場での照明導入が、多数の地元ファンを惹きつけたが、それは馬に、より優しいポリトラック馬場の敷設されるまでの小さい変化にすぎなかったとレントン氏は語った。

 それに続くウルヴァーハンプトン、ケンプトン、グレートリーズ競馬場へのポリトラック馬場敷設により、人工馬場での競走数は大幅に増加し、今年は英国平地競走の競馬番組全体の38%を占めていた。

 レントン氏は、イギリスとアイルランドにおける今後の人工馬場の敷設は、競走馬数の動向次第であるが、イギリスでは特に追加された冬期の照明下での夜間開催日程を対象とする賭事の需要によって決まると述べた。

 カナダのウッドバイン競馬場のジェイミー・マーティン(Jamie Martin)副場長は、10月のブリーダーズカップはサンタアニタ競馬場の人工馬場で施行されるが、北米においてはここ2年人工馬場の導入が止まっており、イギリス競馬での人工馬場の発展と対照的であると報告した。

 マーティン氏の説明によると、新たに人工馬場を敷設した競馬場ではすべて、平均出走頭数が増加傾向にある。ウッドバイン競馬場は8.4頭から9頭へ、アーリントンパーク競馬場は7.5頭から8.3頭へそれぞれ増加した。

 加えて、出走取消し頭数は、ウッドバイン競馬場では、芝競走が悪天候のためにダート馬場に切り替えられたレースでは4.6頭だったのに対し、ポリトラック馬場に変更したレースでは2.5頭に減少した。

 同氏は次のように付言した。「人工馬場に関するサンタアニタ競馬場の不運な状況を見ると、人工馬場の性能以上に、敷設工事自体により多くの問題があります。競馬場運営者たちは、すでに敷設されている人工馬場の性能の信頼性に疑問を持っており、また敷設費用が最大1000万ドル(約11億円)かかることから、当面静観姿勢を取っています」。

ドーヴィル競馬場の全天候型馬場レースを50%に拡大(フランス)

 フランスギャロ(France Galop)の元事務総長ルイ・ロマネ(Louis Romanet)氏は、ドーヴィル競馬場は2009年、夏開催のうち半分の競走を全天候型馬場で施行する見込みであり、フランス競馬界はパリ地域の競馬場 にさらなる人工馬場の敷設に向けて取り組んでいると述べた。

 IFHAの会長であるロマネ氏は、2008年のドーヴィル夏開催の40%はクッションライド馬場で施行されたが、2009年には芝馬場をできるだけ良い状態に保つために、この数字は50%に引き上げられるだろうと述べた。

 同氏は、「ドーヴィルの人工馬場は完全な成功を収めましたし、競馬関係者たちは現在、この人工馬場におけるレースは従来の馬場より安全であると考えています」と付言した。

 ロマネ氏は、フランスの平地競走番組全般について、「フランスは芝競走をイギリスより1ヵ月早く始め、大きな開催は1ヵ月遅く終えます」と述べた。

 「私の個人的な感覚では、4月中旬以前と11月中旬以降はパリ地域の競馬場でも地方の大半の競馬場でも芝コースでレースを施行するべきではないと思います」。

 「競馬場は、早くレースを始めたり、遅くまでレースを施行していると、馬場管理上の問題が生じます。夏に水を大量に撒く必要に迫られますし、全天候型馬場を導入すれば、そのような時期にも競馬を施行できるからです」。

 ロマネ氏は、今週初めに開催されたIFHAのパリ会議で、アリーナレジャー社の競馬担当理事イアン・レントン氏がイギリスでは今後7年以内に人工馬場でG1競走が施行されるとという見通しを述べたことに対して以下のように語った。

 「私たちは、人工馬場でより良い馬場状態をつくって、より質の高いレースを行うよう奨励しています。結構なことだ思います。フランスギャロは、今後数年以内にパリ地域の競馬場に人工馬場を1つ追加敷設することを検討中です。しかし、まだ決定はなされておらず、シャンティイであるかロンシャンであるかも分りません」。

By Howard Wright
(1ドル=約110円)

[Racing Post 2008年10月8日「Renton predicts all-weather Group 1 racing by 2015」
「Deauville could stage half of racing on all-weather」]


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