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海外競馬情報
2008年01月11日  - No.1 - 2

人工馬場の真価は数年後明らかになる(アメリカ)【その他】


 2007年のサラブレッド平地競走は、北米において少なくとも129競馬場で施行された(他の24競馬場は障害競走のみを施行している)。これらの競馬場のなかで、人工馬場を有しているのは現在のところ9場である。

 今週のブラッドホース誌は、人工馬場をテーマとする特集を組んだ。現在北米のすべての競馬場129場のうち、メイン馬場がダートでないものはわずか9場(7%)にすぎないが、この特集号で人工馬場を完全に調査することは価値があると思える。

 なぜなら、この特集号の記事が示すように、ほんの数年のうちに人工馬場の導入が競馬に劇的な影響を与えているからだ。

 これらの記事は、いくつかのことを実証する。つまり、今のところ人工馬場は魔法の杖ではないこと。人工馬場の信奉者は多いが同じぐらい反対者がいること。そしてこの時点において最も重要なことは、競馬産業において人工馬場についてのコンセンサスがないことである。

 最後に挙げた点は特段驚くべきことではない。競馬産業においては、何事についても統一見解はないのだから。

 デルマー、サンタアニタ、ハリウッドパーク、キーンランド、ターフウェイパーク、ゴールデンゲート、ウッドバイン、プレスクアイルそしてアーリントン パーク競馬場で使用されている人工馬場に関する、生産者、馬主、調教師、騎手、獣医師、馬場管理者、予想屋、馬場担当者などの意見を読めば、これが事実で あることにほとんど疑いはない。

 人工馬場導入によってそれぞれの競馬場の特性がなくなったわけではない。場合によっては、その特性は大きくなっている。スピード馬が勝ちやすい人工馬場 もあれば、そうでない人工馬場もある。必ずしも優良馬でなくても速いタイムが出る人工馬場もあれば、そうでない馬場もある。朝の調教時間とレース施行中で は、まったく違って見える人工馬場もある。

 ダート馬場でないという理由だけで、人々は人工馬場を悪いように言い、背を向けるわけではない。敷設されたほぼ全部の人工馬場が、管理の問題に遭遇して おり、また、明らかに他場よりも多くの問題を抱えている人工馬場もある。同じ種類の人工馬場でも、カリフォルニア州のデルマーとカナダのオンタリオ州の ウッドバイン競馬場では異なっているのは言うまでもなく、人工馬場は管理担当者、競馬関係者、賭事客に、さまざまな問題を投げかけている。

 肝心な問題は単純である。人工馬場は競走馬にとって安全なのか?

 製造会社は、“イエス”と答えるだろうが、まだ結論は出ていない。

 この特集号に記載されている代表的な獣医師、馬主、調教師の意見の多くは、レースに出走する馬たちのなかには、人工馬場でもいまだに故障が見られるとい うものである。誰しも人工馬場導入により故障がなくなるとは予想していなかったはずだし、結局のところ競走馬は、依然として脆弱な動物である。

 故障に関する情報について議論するのは難しい。というのは、ほとんどの州ではレース中の故障しか発表されないが、実際は朝の調教でそれと同じぐらいあるいはそれ以上の故障が発生するのは周知のことなのだ。

 人工馬場は現在では競馬風景の一部であることは認識されている。

 そんなわけで、現在さまざまな人工馬場について徹底的に研究し、綿密に調査するには絶好の時期に入っている。なぜなら、近い将来他の競馬場に人工馬場を敷設するという明確な計画がないからである。

 ニューヨークでは運営権の不確かな状態と資金不足の問題がある。マグナエンターテイメント社(Magna Entertainment Co.)のフランク・ストロナーク(Frank Stronach)会長は、同社が所有するカリフォルニア州以外の競馬場(カリフォルニア州ではサンタアニタ競馬場が州から敷設を要請された)に人工競馬 場を導入する気はないとくり返し表明してきた。世界で最も有名なレースの開催者であるチャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)は現在のところその予定はない。小さい競馬場のほとんどは、敷設費用約1,000万ドル(約12億円)を拠出する余裕がない。

 したがって、今後数年は、北米において前述の9競馬場のみが、劇的な方法で競馬を進歩させることを企て、伝統的なダート馬場を人工馬場に取り替えるとい う大胆な変更をした競馬場でありつづける。数年のうちに私たちはこれらの競馬場が下した決定の影響についてもっと知ることになるだろう。

By Dan Liebman
(1ドル=約120円)

[The Blood-Horse 2007年12月8日「What’s going on here―Step lively」]


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