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2008年01月11日  - No.1 - 1

評価すべき全天候型馬場でのレース(イギリス)【その他】


 20年前、イギリスでも冬期に全天候型馬場で平地競走を開催する予定があると知らされたとき、私たちはなにが起こるのかよく理解できなかった。

 リンカーン・ハンデキャップがカーホルム競馬場から、ノヴェンバー・ハンデキャップがペニーン競馬場からともにドンカスター競馬場に移るというような小さな変化は理解できたが、200年の歴史をもつ平地競走シーズン(3月下旬から11月上旬まで)が変わってしまうような大変革はだれも理解できなかった。

 昔から障害競走の開催で占められていた天候の悪い不毛の4ヵ月間に、アメリカのようにイギリスでも冬期に平地競走を行うことができるとするのは希望的観測だったと思う。リングフィールド競馬場やサウスウェル競馬場を、どのようにしてフロリダのハイアリーア競馬場のように見せることができるだろうか。まず、フラミンゴがいないことは、確かに1つの問題だった。

 しかし、伝統は必ずしも道理にかなっているわけではない。競馬シーズンがこれまで8ヵ月間であったからといって、その慣習が永久に保持されることにはならない。馬もしくは、調教師、騎手、競馬ファンには4ヵ月間の休みが必要であると誰が言ったのだろう?好ましい条件が与えられるならば、1年を通して競馬が開催されるべきとする理屈も出てくるだろう。

 もちろん、霜や雪に覆われた馬場を走ることにより、馬が危険にさらされることは疑いない。いかなる気候条件にも耐えうる人工馬場がある。グッドウッドの 夏開催でパナマ帽を見せびらかしていた競馬ファンは、冬開催においてはバーバーのジャケットやマフラーを同様にみせびらかすだろう。実際に多くのファンは 冬季の障害競走でそうやって、いかなる気候条件にも耐えている。

 平地競走は障害競走の領域に侵入してきたのか?すでに障害競走は天候が許すかぎり年間を通じて開催されているため、議論はほとんど行われてこなかった。 控えめに言っても、成し遂げられる革新(全天候馬場)により、長期間競馬開催が中止を余儀なくされた1947年や1963年のような厳冬においても確実に 開催できるようになり、そのような開催中止は過去のものとなる。現在では平地競走がいつも開催され、賭事客はいつも賭事を行うチャンスがあり、競馬産業に 不可欠な収入は入り続けるのだ。

 思い起こせば、競馬関係者にとって“全天候型”という言葉は昔から、全天候に適応する馬場の種類(表面)を意味していた。といっても、いくつかの開催日 程は霧のために中止になったことがある。これは芝のリンカーン開催やマンチェスター開催(これまでの競馬シーズンの初めと終わりに開催される)が霧のため に中止になることで知られているとおり、馬場の表面の問題ではない。

 1989年10月30日、リングフィールド・パーク競馬場のエクイトラック(合成オイルサンド馬場)において、午前11時から12レースが開催され、人 工馬場で施行されるイギリス競馬が現実のものとなった。レースフォーム(Raceform)のこの年の年報は、競走結果を報じることなく、この出来事を無 視したが、1990年号の初めに競走結果を掲載することで辻褄を合わせた。

 新しい時代は進行中であり、私たちは間もなく、フロリダのハイアリーア競馬場とイギリスの競馬場の比較が不適切であると十分に認識することとなった。私 たちはまた、なぜウィリアムヒル社(William Hill)が初めての全天候型馬場による拡大開催日程に全面的に賞金を提供したのか理解した。それは、全天候型馬場での平地競走が、障害競走を開催できな いときの収入源として役立つからだ。しかし、全天候型馬場におけるレースは、金に困った貪欲な人が有り難く思うだけで、調教不十分な馬が出走する、冴えな いものであるとして、主要厩舎のほとんどがボイコットした。マクツーム一族(Maktoum family)は、このレベルのレースに彼らの馬を決して出走させないと述べ、競馬場に行くファンたちは当然のことながら熱狂的には見えなかった。

 実際のところ、イギリスは変化を望まなかったということはだれの目から見ても明らかであった。全天候型馬場での平地競走は、私たちがただそれに慣れ、競 馬関係者が信頼性を保証していなければ、無関心のために自然死をとげていただろう。イギリスにおける冬季競馬がフロリダのハイアリーア競馬場の様に長続き するとは、到底思えなかった。

 時間は掛かったが、現在状況は一変している。リングフィールド、サウスウェル競馬場に加えて、ウルヴァーハンプトン競馬場が変革に続いた。ケンプトン競 馬場が全天候型馬場に転換するずっと前、ハイアリーア競馬場は開催を休止した。全天候型馬場で行われる平地競走は、どの調教師も無視することができない競 馬に不可欠な要素となった。真の一流馬を含む優良馬をひきつけ、現在ではわずかではあるがパターン競走に分類されているレースもあり、これは開始から18 年目となる全天候型馬場レースが十分に成長したことの証しである。

 長期的にはどうなるだろうか?ダート馬場が徐々に人工馬場に変わりつつあるので、ダート競走は分が悪い。アメリカは競馬のイメージアップに必死で、イギ リスが開拓したものの、数年間ほとんど認められなかったが、現在は十分に受け入れられており、人工馬場の発展において肩を並べようとしている。

 アメリカが不承不承というよりもむしろ熱意を持ってイギリスにならうこととしたことは、イギリスの全天候型馬場に対する更なる後押しとなりうる。これに よってアメリカの有力馬をイギリスの全天候型馬場レースにもっと引きつけることが期待できる。近い将来に完成すると噂されているグレートリーズ競馬場は全 天候型馬場が敷設され、タイミングよくそれを実現するかもしれない。

 はっきりさせておきたいのは、全天候型馬場でのレースは、競馬関係者すべてにとって重要であり、この重要性はこれからの数年もっと顕著になるということである。

 イギリスの競馬統括機関がこの事実を認めず、目先のことしか考えないメディアと一緒になって、ほとんどの全天候型馬場のレースはどうでも良いと考えてい るのは、残念なことである。8ヵ月間をシーズンとする競馬開催は、1989年まで好調だった。現在、それは形骸化している。なぜなら、開催は11月10日 のドンカスター競馬場で終わるとされていたにもかかわらず、その3時間後にはウルヴァーハンプトン競馬場で夜間競馬が開催され大晦日まで続くのだから。

By Tony Morris

[Pacemaker 2007年12月号「Surface causes tension−All-Weather racing has finally come of age. So why, asks Tony Morris, does it not get the respect it deserves?」]


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