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海外競馬情報
2007年02月09日  - No.3 - 2

アナボリック・ステロイドの投与禁止の動き(アメリカ)【獣医・診療】


 薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium:RMTC)は、アナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)は、禁止薬物第3類に分類するべきであるという正式な勧告を各州の競馬委員会に出すことを予定している。なお、アナボリック・ステロイドのうち、テストステロン(testosterone)、ナンドロロン(nandrolone)、ボルデノン(boldenone)およびスタノゾロール(stanozolol)については、今後の体内残留時間に関する研究を経たうえで第3類に加えるとしている。

 これらの薬物が第3類薬物に指定されるということは、競馬界がアナボリック・ステロイドは治療目的の薬物であり、馬の能力に影響を与えるかまたは苦痛を隠す効果があるため出走前に投与するのは適当ではないと設定することを意味している。食品医薬品局(Food and Drug Administration)は、これら4つの薬物について馬への投与を認可している。

 カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board)の馬医療担当理事で、オークツリー競馬協会(Oak Tree Racing Association)を代表してRMTCの委員を務めているリック・アーサー(Rick Arthur)博士は、12月7日に開催されたアリゾナ大学競馬産業プログラム(University of Arizona Race Track Industry Program)主催の“競馬および賭事に関するシンポジウム(Symposium on Racing and Gaming)”において、「競馬は、プロスポーツのうちで最も厳しい薬物検査プログラムを実施していますが、アナボリック・ステロイドについてはそうで はありません。1つの産業として団結・協力し、問題を解決すべき時が来ています。我々は、ヨーロッパやアジアと同じレベルになる必要があります」と述べた。

 同氏は、州競馬委員会国際協会(Association of Racing Commissioners International)は、早ければ2007年4月にもアナボリック・ステロイドを再分類すると述べているが、RMTCの専務理事スコット・ウォーターマン(Scot Waterman)博士は、個々の競馬統括機関が独自の判断でこのルールを採用していかざるを得ないと述べている。

 同氏は、「実施時期については、競馬開催地域ごとに異なるでしょう。現状を維持することに強く固執する地域もあります。第3類薬物への指定は、真剣に受け止められるのは確実です」と述べている。

 他方、連邦下院議員のエド・ホイットフィールド(Ed Whitfield)氏(共和党 ケンタッキー州選出)は、全国規模の騎手労災基金の創設法案及び馬へのアナボリック・ステロイド投与を違法とする法案を提出した。

 ウォーターマン氏は、「ホイットフィールド氏がアナボリック・ステロイドの問題を取り上げてくれているようですが、私は競馬界が自らの責任でこの問題に取り組み、処理するよう期待しています」と述べている。

 2007年におけるRMTCのその他の主要目標は、最高47の薬物について出走禁止期間を設定することである。ウォーターマン氏は、「RMTCはこれらの薬物すべてに取り組むことはできないので、調査に優先順位をつけ、陽性事例が最も多い薬物を先ず重点的に扱います」と述べている。

 体内残留期間を試験するために競走馬並み訓練中の馬を用いたプログラムが、RMTCの調査で用いられている。同様の手法は、カリフォルニア大学デーヴィス校(University of California-Davis)のスコット・スタンリー(Scott Stanley)博士がカリフォルニア州で実施したフルニキシン・メグルミン(flunixin-meglumine, 商品名:バナミン)の体内残留時間に関する研究で用いられた。

By Ed DeRosa

〔Thoroughbred Times 2006年12月16日「Consortium recommends ban of anabolic steroids in racehorses」〕


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