スポーツ精神か規定の厳格さか―議論(フランス)【開催・運営】
ディラントーマス(Dylan Thomas)を失格させるべきだったか?この問題は、10月8日にシャンティイにいた専門家の口の端にも掛からなかった。フレディ・ヘッド(Freddy Head)調教師は総括的に「大変良い判定がされました。似通った事例でもそのように判定されていたでしょう」と明言した。
しかし、10月7日、主役たちにとってはいつまで続くか分らないと思えるような審議であったが、その結果を待っていた多くの者は、ディラントーマスの1着は変わらないものと見なしていた。それは、競馬規定が厳格に適用されることに慣れていたからである。ニコラ・クレマン(Nicolas Clément)調教師は次のように分析する。「パリ大賞(G1)と比較することができます。裁決委員は、スポーツと最良馬という概念を重視しました。しかし、根本的な問題は他のところにあります。フランスの規定は妥当であるか?見直すべきではないか?ということです。明らかに“ウィ”です。裁決委員団により、結果が異なっています。専門的な賭事客は事情に通じているので、制裁に関する規定を国際的に一致させる必要があります。競馬がますます国際化され、外国とのサイマルキャストが行われているだけに、規定の国際的な一致がなおさら重要です」。
最良馬が勝ち、その順位を維持した。すなわちスポーツが規定にまさったということである。シャンティイ競馬場では「イギリス風に判定したのだ」という声が聞こえた。ディラントーマスの馬主であるマイケル・テイバー(Michael Tabor)氏は、「イギリスでは審議のランプさえもつけません」とさらに踏み込んだ発言をした。クレマン調教師は、「規定を一致させるのは急務です。小さな初めの一歩は、たとえばレース中の耳栓の取り外しを禁止することなどで、踏み出されました。もっと進展すべきです」と的確に述べた。
賭事客の間では、意見はさらに分かれている。賭事客の中には、関係する騎手がディラントーマスの進路変更は競走結果を変えなかったと考えているなら、何も文句をつけることはないという意見があった。「それでも被害馬はもっと良い着順とすべきだ!」という意見もあった。専門的な賭事客の中では、「私たちのいたところからは何も見えなかった!裁決委員はさまざまな角度からVTRでレースを見ている。彼らは判定するために全ての材料をもっている」という聡明な考察もされた。
しかし、審議の結果にその他の賭事客は憤慨した。「もしこれがクレーミング競走だったならば、優勝馬は必ず失格になるでしょう。普通じゃありません!」さらに徹底した意見は、「正面から見れば、ディラントーマスがザンベジサンの走行を妨害し、その直後にソルジャーオブフォーチュンの走行を妨害したのは明らかです。ステファーヌ・パスキエ(Stéphane Pasquier)騎手は、彼の馬が鞭で打たれたと明言しています。だから、ディラントーマスを同じ厩舎の出走馬の後に降着させるべきだったと思います。それは2頭が同じ調教師の下にあるからでも、ダークホースに勝利を奪われるからでもありません。つまり、私は凱旋門賞がこのようなやり方で勝たれることにショックを受けているのです。それに、審議が30分続いたのは、裁決委員団の判定が全員一致でなされたのではないということです」。この意見はもう1つの問題を提起する。ザンベジサンの関係者は、ディラントーマスの走行妨害は他の馬がより上位の順位を獲得する機会を妨げるものではなかったと直ちに認めた。しかし、ディラントーマスによって走行妨害されたソルジャーオブフォーチュンの5着はどうだろうか。そしてとりわけ、もし凱旋門賞でカンテ(Quinté: 5連勝式)が発売されており、各馬にそれぞれのオッズがあるとすれば、どのような決定がなされるべきだったのだろうか。競馬ファンの中には不満分子が増えるおそれもある。
By Adeline Mouatadiri
[ParisTurf 2007年10月9日「Esprit du Sport ou riguer du code: le débat」]