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海外競馬情報
2007年07月06日  - No.13 - 5

30競馬場で競走馬故障報告制度が開始される(アメリカ)【開催・運営】


 5月30日、競走馬福祉・安全サミット(Welfare and Safety of the Racehorse Summit)の席上で、“全国競走馬故障報告制度”のための試験事業を、6月1日から30競馬場で実施することが発表された。

 この試験事業の目的は次の3つである。(1) 有効な統計が得られるように統一フォーマットを用いて、競走中の故障の頻度、種類、結果を確認すること (2) 故障リスクが高い競走馬のもつ特徴を識別するための“一元的疫学データベース”を開発すること (3) 安全性を上げ故障を防ぐことを目指した研究のためのデータソースとして役立てること

 この“全国競馬故障報告制度”を考案したメリー・スカレー(Mary Scollay)博士は、「レース前の馬体検査において、私は45秒以内で簡単に馬のチェックをします。そのとき多くのことに気付きますが、おそらく十分ではありません。もし、故障リスクが高い馬を判別する方法を見つけられれば、レース前の検査でチェックする箇所を絞り込むことによって、その効果を高めることができるかもしれません」と述べた。

 この制度のポイントは、競馬場の獣医師が故障馬の事故内容を記録する際に使用する統一フォーマットである。多くの競馬場は類似した情報を保持しているが、この制度の下で統一的な故障記録方法が採用されるならば、競馬場は自身が保有している統計と、他のすべての競馬場の統計を比較することができる。

 スカレー博士は、「それぞれの競馬場は秘密コード番号がつけてあり、それは当該競馬場と私しか知りえません。したがって、特定の馬、調教師、競馬場のデータが公にされることはありません。この制度は、競走馬の故障について誰かを非難するためのものではありません」と述べた。

 同博士は、来年中にこの制度による報告対象に調教中の故障を含めることを望んでおり、「今年から調教中の故障調査について検討を始めました。競馬場での故障調査よりも相当複雑な問題です。うまく行けば来年中には、調教中の故障調査を始めるための具体的な方法を見つけ出せるでしょう」と語った。

 もう1つの収穫は、この制度によるデータがサミットで発表された他の研究に結びつくかもしれないということである。

 その1つはメーン大学(University of Maine)機械工学部のミック・ピーターソン(Mick Peterson)博士の下で行われている“走路表面を記録する研究”である。

 スカラー博士は、「故障の発生率、傾向、原因を記録し、私たちの取り組みがどの段階にあるのか把握することが先決です。いかにしてゴールに到達するかは今後の問題です」と述べた。

 6月1日に調査を始める競馬場に加えて、他のいくつかの競馬場も、それまでに要員を確保できれば参加する見込みだ。

 競走馬福祉・安全サミットはグレイソン=ジョッキークラブ研究財団(Grayson-Jockey Club Research Foundation)の2005年の理事会でその構想が打ち出され、2006年に開催された。サミットでは故障報告の問題のほかにも、サラブレッド競走馬の安全と健康に関連した多くの講演があった。

 以下の6つの会議で、研究発表の後、サミットの戦略計画セッションで行動計画についての勧告が行われた。

  • 故障報告:メリー・スカラー博士
  • 種牡馬の産駒競走耐久性:エド・ボーウェン(Ed Bowen)氏
  • 走路面:ウェイン・マキルレース(Wayne McIlwraith)博士
  • 競走条件:ユアル・ワイアット(Eual Wyatt)氏
  • 装蹄と蹄の手入れ:ビル・キャスナー(Bill Casner)氏
  • 教育と免許授与:ポール・ボウリンガー(Paul Bowlinger)氏

   4月の国際競馬委員協会(Association of Racing Commissioners International: RCI)の代表者会議には、米国ジョッキークラブ(Jockey Club)上級副理事長兼専務理事であるダン・フィック(Dan Fick)氏、ウィンスター牧場(WinStar Farm)の会長兼共同オーナーであるビル・キャスナー氏が参加した。そこで、ピーターソン博士とスカレー博士は、競走馬福祉・安全サミットの最新情報と、それぞれの会議の注目点や進展状況を紹介した。

 RCIによって承認された模範規定の1つには、長さ4ミリ以上のトーグラブ(鉄頭部に突起物のある蹄鉄)の使用禁止も含まれている。

 ビル・キャスナー氏は、「馬の前肢は体重の約65%を支えており、突起物が長くなれば、故障する確率も増加します」と述べた。

 フィック氏は、「故障報告制度とトーグラブの使用禁止は、サミットの成果です。進展の2つの例です。RCIメンバーは競走馬の安全性と健全性を高めるために一生懸命研究に取り組んでいますし、私たちはこれから数ヵ月間に各会議の最新情報を提供し続けます」と述べた。

 サミットは、グレイソン=ジョッキークラブ研究財団と米国ジョッキークラブによってコーディネートされ、2006年10月16、17日にキーンランド協会によって開催された。1983年より同財団は32大学で行われた230の計画に、1,400万ドル(約16億8,000万円)以上の資金提供をしている。

 5月29日時点で以下の競馬場が、競走馬負傷報告制度への参加を決めている。

 

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By Amanda Duckworth
(1ドル=約120円)

[bloodhorse.com 2007年5月30日「Equine Injury Reporting System to Begin at 30 Tracks」]


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