ウィンクスの牝駒、1歳牝馬として世界最高額1000万豪ドルで落札（オーストラリア）［生産］

　オーストラリア年度代表馬に4度輝いたウィンクス（父ストリートクライ）産駒の1歳牝馬の上場は多くの人々の関心を集めたが、4月8日に行われたイングリス社イースター1歳セールにおいて1,000万豪ドル（約10億円）で落札され、その期待に応えた。

　同馬はクールモアが上場したピエロ産駒で、ウォピット・ブラッドストックが落札した。落札価格はオーストラリアの1歳セールの記録を塗り替えた。

　1歳牝馬がリングに登場すると会場は静まり返ったが、その後3分間は花火が連発するようなありさまで、ウォピット・ブラッドストックのデビー・ケピティス氏とレゾリュート・レーシングのジョン・スチュワート氏が激しく競り合い、最後はケピティス氏が1,000万豪ドルで競り勝った。

　ウィンクスの牝駒は公式には1,000万豪ドルと評価されているが、ケピティス氏にとって同馬はプライスレスな存在である。

　数週間、数日とセリの日が現実のものとして迫ってくるにつれ、ケピティス氏は夫のポール氏、娘のアリンタ、ララ、タリアとともに、一家の営む競走・生産ビジネスでウィンクスの現時点で唯一の産駒を購入する決意を固めた。

　ケピティス氏は、ウィンクスの産駒を所有しないという考えには耐えられなかったと語った。ウィンクスは現役時代、コックスプレート（G1）4勝を含むG1レースを25勝、通算37勝（33連勝）という成績をあげ、ケピティス氏と共同馬主のピーター・タイ氏、故リチャード・トレウィーク氏に生涯忘れられない経験をもたらした馬である。

　喜びの涙を流しながら語ったケピティス氏は、たとえ1,000万豪ドルという、これまでのオーストラリアでの最高落札価格である500万豪ドルの2倍の値段になったとしても、共同所有者の権利を買い取ることができたことに安堵していた。

　「私はもともと、この馬を買うためにここに来たのではありません。私たちはこの馬をセリに出したのですが、ここ数週間私たち家族は、娘でもあり孫娘でもあるこの仔馬を恋しく思うようになり、できる限りのことをして、彼女を手に入れることができるならそうしようと決めました」。

　「一家のために私がこの馬を確保することができて嬉しく思います。無事に競走馬になれることを願っていますが、もしなれなかったとしても素晴らしい母親になるに違いありません。彼女は永遠にオーストラリアの馬ですし、きっと素晴らしい馬になるでしょう。競走馬としても母のように大成して欲しいと願っていますが、そうならなくても構わないのです」。

　誰がこの牝馬の調教を担うことになるのか疑問の余地はなかったが、ケピティス氏は、ウィンクスの並外れた競走馬時代を綿密に管理したクリス・ウォーラー調教師にこの牝馬を託すと力強く宣言した。

　クールモアのトム・マグニア氏はセリの当日、初産だったウィンクスがあやうく命を失いかけた苦難の日々を思い出していた。また、クールモアのジェリーズプレインズスタッドでの初出産の際にウィンクスに付き添ったパディ・シーハン氏は、セリ会場であるリバーサイド厩舎のリングで、満員の観客とコンコースの前で牝馬を曳く栄誉に浴した。

　「誰かが歴史を手にするわけですから、超高額になることはわかっていました。超一級品であり、コレクターズアイテムです。そして、今日のこの購買にふさわしい人物はただ一人、それはデビー、ポール、そして彼らの家族なのです」

　競り負けたミドルグラウンドキャピタルの創設者であるアメリカ人投資家ジョン・スチュワートは、後にXにこう投稿した。「ミッションは達成されました。以前、私の目標はこの牝馬をオーストラリアにとどまらせることだと言いました。デビー・ケピティス、そしてオーストラリアの皆さん、おめでとう！ ウィンクスの牝馬は彼女の居場所たるべきオーストラリアにとどまることになりました」

　「海外からの入札者の購買意欲をそぐのに、少しでも役に立てていたのなら幸いです」。

　月曜日のセリが行われるまでは、ブラックキャビアの半弟（父リダウスチョイス）に2013年イングリスのイースター・セールで500万豪ドルの値がつき、オーストラリアにおける1歳馬落札価格の記録を保持していた。その1年前のイースター・セールでは全姉に260万豪ドルの値がつき、当時のオーストラリアの1歳牝馬の最高値を記録した。

　1歳馬の世界歴代最高額は、1985年の好況な時代に落札されたシアトルダンサーの1,310万米ドル（約19億7,850万円）である。同馬はシアトル・スルーの半弟で、ロバート・サングスター氏、ジョン・マグニア氏、スタブロス・ニアルコスなどの馬主コンソーシアムがキーンランド7月1歳馬セールで購入した。

（1豪ドル＝約100円）
（1ドル＝約150円）

By Tim Rowe

（関連記事）海外競馬ニュース2022年No.38「ウィンクスに待望の初仔誕生（オーストラリア）」

［bloodhorse.com 2024年4月8日「A Woppitt Bloodstock Goes to AU$10M for Filly out of Winx」］