ブリーダーズカップ出走予定馬のメディカルチェックを開始（アメリカ）［獣医・診療］

　第40回ブリーダーズカップ開催（11月3日・4日　サンタアニタパーク）の14競走への出走予定馬200頭以上の健康状態を評価するという重要かつ困難な作業がすでに開始されている。

　ブリーダーズカップ協会（BCL）は10月24日、新しいプロトコルの導入を発表した。その一環として、獣医師審査チームは出走予定馬の初期段階のメディカルチェックをすでに実施している。

　10月に入ってから、ブリーダーズカップの出走予定馬は診察記録・調教パターン・出走パターンのチェックを受け、場合によっては州の獣医師による馬体検査を実施されている。必要に応じてPETスキャンなどの診断機器が使用され、ブリーダーズカップ開催に参戦できる健康状態であるかが判断された。

　BCLの副社長兼最高競走責任者であるドラ・デルガド氏はこう語った。「BCLはすでに最高級の安全プロトコルを要求しています。今回の新たなプロトコルの導入により、できるかぎり安全な2日間の競馬開催を実施するための獣医監視体制がさらに強化されました。BCLの獣医師チーム、ファーストレーシング社（1/ST Racing）・カリフォルニア州競馬委員会（CHRB）・HISA（競馬の公正確保と安全に関する統括機関）の獣医師の皆様、協力してくださった規制獣医師の方々、そしてこの重大な仕事の実行を支援してくださる世界中の競馬場の皆様に感謝したいと思います」。

　BCLの獣医師チームのウィル・ファーマー博士とデビー・ランパーター博士、CHRBのジェフ・ブレア博士とティモシー・グランデ博士、ファーストレーシング社のディオンヌ・ベンソン博士が審査を主導した。また、HISAの馬の安全・福祉担当理事であるジェニファー・デュレンバーガー博士と連携して作業が進められた。

　エクリプス・サラブレッド・パートナーズのCEO兼創設者であるアロン・ウェルマン氏は、新しいプロトコルへの支持を次のように表明した。

　「安全性を高める取組みを100％支持します。馬と騎手の負傷リスクを最小限に抑え、安全性を促進できるプロトコルであれば、それを支持する所存です」。

　ウェルマン氏のパートナーシップは、それぞれBCジュベナイル（G1）とBCジュベナイルフィリーズ（G1）の有力候補であるG1馬、ロックドとキャンディードを所有している。馬の健康状態や特異性の基準値を作ることによりサンタアニタで勤務する獣医師は出走馬の体調をより的確に判断できるようになると、ウェルマン氏は語った。

　「BCLはこれにより基準を構築できます。なぜなら、すべての馬がジョグアップ（ゆるい速歩）やストレッチの仕方が完璧であるわけではないからです。獣医師がこれらの馬の傾向を熟知していることはプラスであると思います。ブリーダーズカップの開催週だけしかそれらの馬を見ていないとすると、一見しただけで馬が健全かどうかについて速断してしまう可能性があります。しかし経験から言えるのは、重要なのは一貫性であるということです。その馬のもつ傾向を見つけ出すことができれば、健康状態をより公平かつ合理的に分析できるようになると思います」。

　「だから、通常よりも長いあいだ対応できるようにしておかなければならないために調教師や厩舎スタッフに不便が生じることがあっても、私たちはそれに反対したりアクセスの障害になったりするべきではありません。結局のところ、プロセスは伸びても皆にとって最善の方法なのです」。

　14競走の予備登録は締め切られており、10月25日に出走予定馬が発表される。10月27日からはサンタアニタで検査が実施され、BCLの獣医師チームの判断により、すべての出走予定馬が無作為の馬体検査を受けることになる。

　この初期段階のメディカルチェックは、ブリーダーズカップ開催に参戦できないような健康状態や獣医学的な問題を発見するためのものであり、既存の一連の検査やモニタリングに追加される。

　海外からの遠征馬は10月29日午後10時までに、国内からの参戦馬は10月31日午前11時までに現地に到着することが義務づけられており、これらのプロトコルには毎日の調教の前に実施される乗り手が騎乗した状態での歩様検査（10月27日開始）も含まれる。また獣医師は競馬場と厩舎エリアで出走予定馬のモニタリングを行い、無作為に馬体検査を実施する。

　過去5ヵ月間に実施されてきた競技外検査とは別に、10月31日にHIWU（競馬の公正確保・福祉ユニット）が競走前の薬物検査を実施する。

　競走用馬場の管理と検査は、ケンタッキー大学競馬場安全プログラムの指導者であるミック・ピーターソン博士とサンタアニタの馬場整備スタッフが担当する。

By Bob Ehalt