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2023年02月02日  - No.4 - 4

マクナリー調教師に過去最長の12年間の失格処分(アイルランド)[その他]


 ロナン・マクナリー調教師はアイルランド競馬界から驚愕の12年にわたる失格処分、5万ユーロ(約700万円)の費用請求、1万3,000ユーロ(約182万円)を超える賞金返還を命じられた。アイルランド競馬監理委員会(IHRB)の審査委員会は12月にマクナリー氏が複数の公正確保ルールを違反したことについて有罪とし、厳格な処分を発表したのだ。

 また、マクナリー氏がデヴィッド・ダン調教師と共謀してフルノイズ(Full Noise)とオールクラス(All Class)を所有していることを隠蔽した罪も発覚した。競馬の信用を失墜させる行為を取り締まるルールのもと、ダン氏には2年間の免許停止処分(最後の18ヵ月間は執行猶予)が科された。さらに5,000ユーロ(約70万円)の過怠金と、不正な手段により獲得したと見なされた賞金の没収が言い渡された。ダン氏の事案では、マクナリー氏が所有していることを隠蔽してダン氏の名義でオールクラス、フルノイズ、ペトロールヘッド(Petrol Head)が出走した合計36レースが対象となる。

 競走成績の操作を取り締まるルール212条に基づき、マクナリー氏の管理下にあったドリールディール(Dreal Deal)が2020年秋にリムリックとナヴァンで挙げた2つの勝利を無効とした。ザジャムマンは不正行為の対象となった馬を扱うルール275条によりリムリックで挙げた2着という成績が無効となり、マクナリー氏が没収される賞金は1万3,400ユーロ(約188万円)となる。ほかの3頭が出走した36レースでは、2021年にオールクラスが3勝、フルノイズが1勝を挙げており、ダン氏から没収される賞金は約2万7,000ユーロ(約378万円)に上る。

 マクナリー氏の失格処分はアイルランドの免許保有者に言い渡されたものとしては過去最長である。これは、福祉ルール違反により競馬界の信用を失墜させたとしてスティーヴン・マホン元調教師に言い渡された4年間の免許停止処分(上訴により6ヵ月短縮)を上回る。マクナリー氏は1月31日(火)にこの調査結果に対して上訴する意向を示したが、事案に関するコメントは控えた。

 報告書にはこう記されている。「IHRBの審査委員会は、マクナリー氏に対して行われた調査の結果を極めて深刻なものであると見なしています。同氏の違反行為は、公正確保と、馬を出走させるすべての人々のために条件を平等にするという目標を侵害するものです。また馬券購入者をはじめとする一般の人々を欺く行為にも該当します」。

 マクナリー氏は10月の審問をうけ、多岐にわたる11件の嫌疑のうち10件が保持され、審査員団により「アイルランド競馬の関係者たちに深刻な損害を与えた」と裁定された。嫌疑の中には、能力を下回る競走成績を残すために十分に調教していない馬を出走させたことで、レースを調教として利用したというものが含まれる。調査結果は12月に発表され、1月13日に制裁審問が行われた。

 マクナリー氏は、「経験豊富で古参のハンデキャッパーがこれまで見たことのないような馬の競走成績を急上昇させる行為を繰り返した」と見なされた。またコーク州を拠点とするポイント・トゥ・ポイント競走の調教師であるキアラン・フェネシー氏と共謀して賭事目的のために内部情報を流したことも発覚した。

 競馬界の信用を失墜させる行為を取り締まるルールの下、フェネシー氏は失格者とされ3年間の免許停止処分(最後の2年間は5年間の執行猶予)が科された。ブライアン・マクガヴァン判事が議長を務める審査委員会は「フェネシー氏は若いときに退学し、馬に関わる仕事以外に適していない」と指摘した。そして、フォネシー氏の競馬の健全性と良い評判を損なう行為への関与を含む3つの違反行為を確認し、5,000ユーロ(約70万円)の過怠金を科した。

 失格処分を受けたフェネシー氏とマクナリー氏は、競馬場などのIHRBの認可施設に出入り禁止となり、どの調教師のもとでも働くことができない。馬の取引により生活を維持しているフェネシー氏にとってこれはかなり厳しい制裁である。またマクナリー氏の調教師としてのキャリアが終了することもほぼ間違いない。

 ドリールディールの競走成績の操作は調査中にも徹底的に追及された。マクナリー氏はドリールディールの状態や健康に関する情報をフェネシー氏に流し、ほかの人々がある賭事会社で馬券を購入することで利益を得られるようにした。

 1月31日(火)の報告書には、マクナリー氏がパット・フェネシー氏からドリールディールとザジャムマンの両方を購買したこと、そしてキアラン・フェネシー氏の住所が兄弟のアーロンと父親のリアムと同じであることが記されている。またパディパワー・ベットフェア社のイアン・デヴリン氏がIHRBの要請に応じて提出した、アーロンとリアムのベットフェアのアカウントの馬券購入履歴には、マクナリー氏の馬への"明らかな偏向"があることが示されていたと、報告書には記されていた。

 報告書は「彼らのアカウントを統合した馬券購入履歴を示すスプレッドシートを彼は作成しました」とデヴリン氏が協力的であったことに触れたあと、こう続けている。「ドリールディールに関しては、リアム&アーロン・フェネシー両氏が2020年3月4日と24日にクロンメル競馬場でこの馬が3着内に入らないという賭けを行っていることが証明されていました。そして2020年9月19日に彼らがナヴァン競馬場のレースでドリールディールの単勝馬券を購入すると、この馬は勝利を挙げました」。

 「馬券購入履歴はマクナリー氏の管理馬への明らかな偏向を示していました。彼らはキアラン・フェネシー氏もしくはマクナリー氏から内部情報を受け取っていたと、理事会は主張しています。ドリールディールに賭けたということは、当日のこの馬の期待値について知っていたことを示しています。それ以外の説明はどう考えても信憑性がありません。マクナリー氏がキアラン・フェネシー氏とドリールディールの調教とパフォーマンスについて何度も話し合ったことが立証されています。しかしフェネシー氏は馬主ではないのでそのようなことをする正当な理由はありませんでした」。

 審査委員会は、マクナリー氏がダン氏の調教場にいる馬を所有していることを隠蔽し、"公式ハンデキャップの操作"を画策したことを立証した。オールクラスとフルノイズはダン氏の名義で注目のギャンブルを成功させたが、いずれもマクナリー氏の所有馬であることが判明し、それ以降は彼の名義で出走している。

 2021年3月にナヴァン競馬場で行われた裁決委員による審議において、ダン氏は関係者に誤解を招く情報および/または虚偽の情報を提供したことで過去にさかのぼって有罪となった。彼は免許停止中も競馬界で従事することができるが、もう1つの大きな汚点を経歴に残すことになった。

 ダン氏にはすでに相当の悪評が立っていた。2018年ゴールウェイレーシズ(Galway races)にウォッカソサエティを参戦させたさいに、IHRBの報告書いわく"嘆かわしい状態"とされた厩舎にこの馬を一晩放置し1,500ユーロ(約21万円)の過怠金を科されていたのだ。

 また2020年にも4ヵ月間にわたり調教師免許を失っている。管理馬のドラムサウラ(Drum Samhraidh)がバリンローブ競馬場のバンパー競走で優勝したあとにボルデノン(アナボリック・ステロイドの一種)の陽性反応を示し2,000ユーロ(約28万円)の過怠金を科され、その制裁に対して上訴を行った上での結末である。

 アマチュアジョッキーのオーエン・オブライエン騎手は2020年7月にナヴァンでのドリールディールへの騎乗に関して、21日間の騎乗停止処分を受けている。タイミング良くゲートから飛び出さないようにして馬が実力を発揮して走ることを妨げたこと、また馬のパフォーマンスに影響を与えうる問題を裁決委員に報告しなかったことが確認されたのだ。当日ナヴァンで勤務していた裁決委員からは懸念は示されなかったが、今やオブライエン騎手は過去にさかのぼって騎乗停止処分を受けている。

 G1優勝ジョッキーであるダラー・オキーフ騎手とゴールウェイプレート優勝ジョッキーであるマーク・エンライト騎手は、ドリールディールへの騎乗に関する4つの嫌疑のうちの1つに該当するとして警告を受けた。オキーフ騎手は2020年6月にゴウランパークで、エンライト騎手はその1ヵ月後にカラ競馬場でこの馬に騎乗したさいに、裁決委員に同馬の発走時の出遅れについて報告しなかったとされる。

 制裁を受けた者は全員、それぞれの制裁が開始される3月1日より前に上訴することができる。

By Richard Forristal

(1ユーロ=約140円)

[Racing Post 2023年1月31日「Ronan McNally hit with massive 12-year disqualification from Irish racing」]

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