ポール・ハナガン騎手、四半世紀にわたる騎手生活に終止符（イギリス）[その他]
リーディングジョッキーに2度輝いたポール・ハナガン騎手（42歳）は、四半世紀におよぶ騎手生活に終止符を打つことを発表した。
ラスト騎乗となる8月25日（金）のヨーク競馬場の第１競走のハンデ戦（約2400ｍ）では、元師匠リチャード・ファーヒー調教師が手掛けるウートンサン（Wootton'Sun）とコンビを組む。彼は1999年に見習騎手としてモールトンのファーヒー厩舎に加わった。
ハナガン騎手は2002年に見習騎手のリーディングタイトルを獲得し、2010年と2011年にリーディングジョッキーに輝いた。
その後、ハムダン殿下の主戦ジョッキーという地位を獲得し、タグルーダで英オークス（G1）とキングジョージ6世＆クイーンエリザベスS（G1）、ムハラーでジュライカップ（G1）を制した。
そしてファーヒー厩舎に戻ってきて、2020年にキャリア通算2,000勝を達成した。しかし同じ年にニューキャッスルでキャリアを脅かすほどの怪我を負った。
ハナガン騎手は引退を決断したことについてこう説明した。「心が"大丈夫"と言っていても、体は"ダメだ"と言っているのです。数年前に最悪な落馬事故に遭って椎骨を3つ折ってしまいました。正直なところ、それ以降ぜんぜん良くなっていないのです」。
「痛みは増してきていますね。騎乗中はそれほどでもないのですが、満足できるレベルで騎乗するための体力を保とうとすると痛みを伴います。その痛みのせいで、納得できる体力に到達できないと感じるようになったのです。だから8月25日（金）に引退することにしました」。
彼はヨーク競馬場を舞台として、一緒に900勝以上を挙げた調教師の管理馬でラスト騎乗に臨むことを喜んでいる。
「ヨークは特別な場所なのです。リーディングタイトルを獲得したことも3～4回ありますし、ここで素晴らしい日々を過ごしてきたのです。ウィリアム・ダービー場長が引退の日に勢ぞろいする家族や友人のためにボックス席を用意してくれたことには、感謝してもしきれないほどです。これから数日間はかなり感傷的になってしまいそうですね」。
「ラスト騎乗でリチャードの管理馬とコンビを組むのはすごく特別なことです。これほど長く続いた関係はそうないと思いますね。一緒に楽しい日々を過ごしてきました」。
1998年に初騎乗を果たしたハナガン騎手はキャリアを振り返ってこう語った。「"あっという間だから楽しんで"とよく言われますが、本当にあっという間で、おっしゃるとおりでした。ヘイドックでの初勝利を思い出すと、こんなに勝てるとは想像もしてみませんでしたね」。
「若い人たちには、つらい時期に直面していたり、自分にはできないと思っていたりしても、努力すれば何でも叶うと言い続けています。それは可能なのです」。
ハナガン騎手の今後挑戦する仕事の１つは、グッドレーシングカンパニー（The Good Racing Company）のレーシングディレクターを務めることである。フィル・ホーソーン氏によって設立されたグッドレーシングカンパニーは、競馬というスポーツを通じて意義ある目的のために資金を集めている。
グッドレーシングカンパニーが資金提供する慈善団体にはレーシング・トゥ・スクール（Racing to School）やレーシング・ウェルフェア（Racing Welfare）が含まれる。また、8月17日（木）にビヴァリー競馬場でハナガン騎手が勝利に導いたマカローネ（Macarone）はMND（運動ニューロン疾患）を患う元ラグビーのスター選手、ロブ・バロウ氏のために資金を集めるシンジゲートが所有する馬である。
ハナガン騎手は、「いくつかのオプションを検討してみたのですが、グッドレーシングカンパニーとフィルと一緒に取り組むことにワクワクしていますね。先日、ビヴァリーでロブ・バロウ・レーシングクラブにとっての初勝利を挙げられたのは格別でした。それから、競馬評論家の仕事もしてみたいですし、どれだけ大変なことかはわかっていますが調教することも選択肢から外していませんよ」と語った。
［訳注：ハナガン騎手は8月25日、レース前のパドックで騎手仲間に温かく迎えられ、ファンの大喝采を受けた。ラスト騎乗では12着に敗れたが、感動的な瞬間を過ごした。なお、ハナガン騎手は2011年ワールドスーパージョッキーズシリーズ（阪神）に出場している］。
By David Carr
（1ポンド＝約185円）
［Racing Post 2023年8月23日「'The body is telling me no' - dual champion jockey Paul Hanagan to retire from riding at York on Friday」］
