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2023年08月24日  - No.32 - 5

モスターダフ、デットーリの名騎乗により英インターナショナルS優勝(イギリス)[その他]


8月23日(水)英インターナショナルS(G1 ヨーク)

 フランキー・デットーリ騎手はヨークに駆けつけた観衆の前で、自らがなぜ競馬界で伝説的な地位に君臨しているのかを見せつけた。見事な手綱さばきでモスターダフ(父フランケル)を先頭に立たせて、今シーズンのセンセーショナルな3歳馬パディントン(父シユーニ)を退け、英インターナショナルSを制したのだ。

 パディントンは今季、挑戦するレースすべてを制覇してきた。3月からG1・4勝を含む6連勝を果たしてきたのだ。しかしヨークの観客を興奮させたこの4頭立てのレースでは3着に甘んじることになった。

 デットーリ騎手のプランは最初から明らかで、シャドウェルの自家生産馬モスターダフを発走直後に先頭に立たせ、パディントンのスタミナを試すべくまずまずのテンポでレースを進めた。

 ライアン・ムーア騎手は繰り広げられる戦術に警戒態勢を取り、単勝1倍台の大本命のパディントンを2番手につけていた。しかし最後の直線に入ったとき、モスターダフは3馬身近いリードを築いており、"絶対に負かされない"という威勢を張っていた。

 デットーリ騎手には4頭が直線に入ったところで後方を覗き込むことができるほど余裕があり、目にした光景に満足していた。残り2ハロン(約400m)の地点に差し掛かるときにふたたび覗き込んだが、パディントンが仕掛けてくる気配はまだなかった。

 ムーア騎手は進路を外目にとりながらスパートを掛けるように合図を送ったが、パディントンはプレッシャーを感じていたようだった。一方、モスターダフの方には十分な余力があった。

 2着に入ったのはモスターダフと同じ厩舎のナシュワ(父フランケル)である。内側から急上昇して、ラスト1ハロンに差し掛かかるところで先頭を走るモスターダフに挑戦していくかに見えたが、モスターダフは追い抜かせる隙を見せなかった。デットーリ騎手は正確にプランを実行し、決勝線を通過するときには宙を指さして喜びを表現した。

 デットーリ騎手は観客が大好きなフライングディスマウントを披露した直後にこう語った。「パディントンに勝つ方法はひとつしかなく、それは彼の前に立ってレースを進めることでした。いい感じで安定したテンポで走ることができ、"来るなら来い"という心持ちでした。重要なのは適切にラップを刻むことです。ありがたいことに36年をかけてその方法を学びましたね」。

 「残り2ハロンでまだ後続に2馬身の差をつけていました。そのときはパディントンがとらえに来ると思っていたのですがね」。

 今回のモスターダフの勝利にはもうひとつの意味があった。デットーリ騎手は1996年にホーリングで勝利を挙げたのを皮切りに6度目のインターナショナルS制覇を達成したことで、同じく競馬界のアイコンだったレスター・ピゴットの記録を追い抜いたのだ。

 またデットーリ騎手はシャドウェルにG1勝利をもたらした。キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)優勝馬フクムに騎乗したシャドウェルの主戦ジョッキー、ジム・クローリー騎手が鞭使用ルール違反のために騎乗停止処分を受け、その代理を務めていたのだ。

 「これが私にとって最後のイボア開催です。妻のキャサリンも来てくれましたし、このレースで6勝してレスターの記録を破ることができたのは最高ですね。これほど嬉しいことはありません。昨晩ジムとレースについて話しましたし、今日の勝利はチームワークの大きな賜物です」。

By Jack Haynes

エイダン・オブライエン調教師、パディントンには距離が長すぎたとコメント

 エイダン・オブライエン調教師は、モスターダフから1馬身以上離され3着に敗れたパディントンについて"英インターナショナルSは距離が長すぎた"と感じていた。

 レース後、オブライエン調教師は3週間前に勝利を挙げたサセックスS(G1 グッドウッド)の疲労から回復するのにもう少し長い時間を与えて、愛チャンピオンS(G1)に挑戦したほうが良かったかもしれないと考えていた。

 オブライエン調教師はパディントンを愛チャンピオンSに出走させることは考えておらず、凱旋門賞(G1)についての質問にはこう答えた。「あらゆる可能性があります。レース後の彼の様子を見てみることにします」。

 パディパワー社はモスターダフの愛チャンピオンS(9月9日 レパーズタウン)での単勝オッズを9倍から5倍に下げ、英チャンピオンS(G1 10月21日 アスコット)での単勝オッズを11倍から7倍に下げた。ジョン・ゴスデン調教師は昨年重馬場のせいで最下位に沈んだ凱旋門賞(10月1日 ロンシャン)にモスターダフを挑戦させるつもりはないようだ。

 ゴスデン調教師はこう語った。「フランキーはいつだって最高の戦術家ですね。競馬場においては天才で、世界のどこでも通用するのです。カメレオンのようですね。どんなレーススタイルにも適応できるのです」。

 「モスターダフも立派な馬ですね。好タイム(2分6秒4)で勝ちました。アスコットでは後方から追い込んで勝ち、ここでは先頭に立って勝ちました。年を重ねるごとに進化しています」。

 「重馬場になるようなら凱旋門賞には連れて行きませんね。夏の馬場で最高のパフォーマンスを見せる馬なので、愛チャンピオンSに向かう可能性もあります。10ハロン(約2000m)は適性距離なのです」。

 20日前のナッソーS(G1)で重馬場に悩まされ3着に敗れていたナシュワは、今回2着に入って賞金21万5,000ポンド(約3,978万円)を手にしたことで、このレースに挑戦するという関係者の決断を正当化する以上の活躍を見せた。

 ゴスデン調教師はこう語った。「ナシュワは素晴らしい牝馬であり、今回の2着は"まぐれ"ではありません。能力を見せつけてくれましたね。馬主のイマド・アル・サガル氏の彼女を出走させるという決断は見事なものでした。このレースが少頭数になるのを見て、英国競馬をサポートしなければならないとおっしゃってくれました。立派な発言ですね」。

 ファンにとって英国チャンピオンズデーはモスターダフを見る次の機会であり、英国で騎乗するデットーリ騎手を見る最後の機会となる。

 ゴスデン調教師は「フランキーはまったく素晴らしいジョッキーですよ。いなくなるのは寂しいですね。彼は今、ビッグレースを勝ち続けています」と述べた。そして冗談めかして「来年戻ってくるかもしれないですよ。たしかに最後のビッグイヤーを楽しんでいますがね」と付け加えた。

By David Carr

(1ポンド=約185円)

[Racing Post 2023年8月23日「'Genius' Frankie Dettori hailed after masterful Mostahdaf ends Paddington's winning run in Juddmonte International」、「'Maybe I pulled the elastic band too long' - Aidan O'Brien reflects on a race too far for Paddington」]

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