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2023年08月10日  - No.30 - 2

異常気象により課題を突き付けられたグロリアスグッドウッド開催(イギリス)[開催・運営]


 グッドウッド競馬場のアダム・ウォーターワース場長は、気候変動がもたらす異常気象は英国の競馬場が直面する最大の課題のひとつであると語った。グロリアスグッドウッド開催(8月1日~5日)の一部が初めて中止となったことをうけての発言だ。

 8月5日(土)にすでに湿った地面に豪雨が降り注ぎ、5日間にわたる開催の最後の3レースが中止となった。グッドウッド競馬場は石灰岩がベースの水はけの良い馬場として有名である。

 大雨はグッドウッドだけにとどまらなかった。8月2日(水)のレッドカー競馬場は冠水のために開催中止を余儀なくされ、6日(日)のヘイドック競馬場は馬場検査にパスする必要があり、7日(月)のカーライル競馬場はカードがなくなってしまった。

 今年の天候は、英国全土を襲った記録的な熱波の中でグロリアスグッドウッド開催が繰り広げられた1年前とはまったく逆だ。昨年この5日間の開催が実施された7月の降雨量はわずか2.4mmであり、今年7月の降水量は93mmだった。そして今年この開催が実施された8月1日~5日の降水量は31.6mmを記録した。過去7年間のグッドウッドの7月の平均降水量は59mmである。
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 本紙(レーシングポスト紙)の歴史専門家であるジョン・ランドール氏は、第2次世界大戦以降にグロリアスグッドウッド開催が中止となった形跡を見つけ出すことができなかった。ウォーターワース場長はこう語った。「異常気象がますます頻繁に生じるようになっています。誰もがそれを目の当たりにしています。以前は1週間で降っていた雨が2時間で降るようになっているのです。このような異常気象は今後も続きそうです」。

 「グッドウッド競馬場は英国でもっとも水はけの良い馬場を誇っています。石灰岩の丘の上にあるので、元々水はけが驚くほど良いのです。私たちが夏の嵐に対応するのに苦労しているのならば、どの競馬場も苦労することになるでしょう」。

 「10月の開催が中止になったことは何回かありますが、シーズン末にはずっとレースを施行してきたコースが10月に湿りきってしまうものです。思い出せる中で中止となったのは10月の開催だけであり、グロリアスグッドウッド開催のうちの1日が中止となることはまったく奇妙で異様なことです。天候パターンがおかしくなってきているのです」。

 「正直に言うと、このような天候は初めてですね。昨年は1週間ずっと太陽が照りつけるような信じられない天候で驚嘆すべきものでした。そのあとに妻と庭に座って"素晴らしい天候に恵まれた"と言っていましたが、そのツケはいずれ払うことになると考えていました。そして今週、そのツケを払ったように思いますね」。

 「競馬開催が長く続く場合、雨に見舞われることもあります。正直なところ、水曜日は雨になるだろうと思っていたので何とかやり遂げることができました。しかし土曜日は本当にショックでした」。

 「信じられないような大雨の水曜日を乗り切り、運を使い果たしてしまいました。土曜日のスチュワーズカップの前の嵐はものすごかったですね。あれほどの雨はかなり長いあいだ見たことがありませんでした。どのような競馬場であれ、私たちが遭遇したあの雨には耐え抜くことができなかったと思います」。

 5日間の入場者数は合計9万5,000人となり昨年より4,000人ほど増えたが、多くの人がびしょ濡れで帰って行った。ウォーターワース場長はこう語った。「3レースが中止になり、それらのレースの馬券売上げを失いましたが、がっかりして帰って行く人々を見送るのは何よりも後味の悪いものです。雨に悩まされた次の年はいつも、入場券の売行きが悪くなるものです」。

 「ずぶ濡れになって早々に帰ったという思い出をつくる人が増えていき、将来を考えると良くないことですね。それが一番の悩みです。来場者には笑顔で帰ってもらいたいのです。グロリアスグッドウッド開催の終わり方としては誰もが望んでいたようなものではありませんでした」。

 来年はあるレースが廃止されるかもしれない。ウォーターワース場長は総賞金7万5,000ポンド(約1,350万円)のスチュワーズスプリントH(約1200m)の存続が検討されるだろうと認めている。このレースはスチュワーズカップに一歩及ばなかった馬のためのレースであり、今年はたった14頭の登録しかなく11頭立てで施行されムッシュコディ(Monsieur Kodi)が優勝した。

 「馬場取締委員のエド・アーケル氏と、ちょうど馬が馬場に入場するときに、パドックでそのことについて話したのです。レーシングリーグの影響かどうかは分かりませんが、きっとそうだと思いますが、この時期はこのようなタイプのレースが多く賞金も良いのです」。

 「スチュワーズスプリントHについて検討して、今後の計画を考えてみます。今回が最後の実施だったとしても驚きませんね。このレースについて検討して、ほかに何が実施できるか考えてみます」。

By Stuart Riley
(1ポンド=約180円)

[Racing Post 2023年8月6日「'Unusual' weather patterns and abandonment shows the challenge facing racing, says Goodwood」]


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