TOPページ > 海外競馬ニュース > パディントン、女傑エミリーアップジョンを下してエクリプスS優勝(イギリス)[その他]
海外競馬ニュース
2023年07月13日  - No.26 - 1

パディントン、女傑エミリーアップジョンを下してエクリプスS優勝(イギリス)[その他]


 パディントンはエクリプスS(G1)に臨んだときには、すでにとても優秀な馬として通用していた。そしてスーパースターとしての片鱗を見せつけた。

 彼はエミリーアップジョンという絶好調のG1・2勝の女傑を負かし、ちょっと特別な存在となったのだ。

 ゴール板での2頭の差はわずか½馬身である。ラスト2ハロンで2頭がほかの馬を大きく引き離し魅力的な大接戦を繰り広げていたときも½馬身の差だった。しかしパディントンにはどこか遊んでいるかのような雰囲気があった。

 エミリーアップジョンはいつも勝利にしぶとく絡んでくる馬だった。それに魅了されたグランドスタンドからの響き渡る大歓声も多くの人が"彼女は勝つ"と考えていたことを物語っていたが、パディントンの鞍上ライアン・ムーア騎手は完璧にコントロールできている様子だった。

 3歳ゆえに負担重量がエミリーアップジョンよりも7ポンド(約3.2kg)軽かったパディントンは、まるで自らが一枚上手であるかのようにラスト2ハロンを駆け抜けた。ほかの馬が懸命に走っているときにムーア騎手は先頭で待ち、エミリーアップジョンの鞍上のウィリアム・ビュイック騎手がようやく腹帯あたりにまで迫ってくると、ムーア騎手はわずかに手綱を緩めてさらに緩め、ギアチェンジを繰り返していった。2頭が競いながら有名なサンダウンの丘を上っていくあいだ、パディントンは終始ハナに立っていた。

 エイダン・オブライエン調教師ほど、G1を制した管理馬を褒めるのに長けた人物はまずいない。大半の調教師よりも圧倒的に多くの実践を積んできて、今回で自身にとってエクリプスSの7勝目を達成し、パディントンは6週間のあいだにG1・3勝を挙げた。しかし、彼がここで"パディントンはこれまでの管理馬が達成しなかったことを成し遂げた"と語ったのは驚くべきことだった。これまでも素晴らしい馬を手掛けてきたのだから。

 パディントンが今年オブライエン調教師を驚かせたのは意外なことではない。今シーズンの初戦となった3月のハンデ戦では、レーティングはわずか97だった。しかし、この馬がどのようにして長年のアイルランドのリーディングトレーナーをびっくりさせたのかは興味深いものがある。

 オブライエン調教師は、「前走のセントジェームズパレスS(G1 ロイヤルアスコット開催)から少し馬体重が増えました。そういうことはあまり起こらないですね。レースごとに成長し、重く、強く、速くなっています」と述べた。

 オブライエン調教師は、"シーズン半ばでこのような肉体的な成長はこれまでにあったか?"また、"すでに今シーズン5戦目を迎えたパディントン(父シユーニ)に偉大なジャイアンツコーズウェイとの類似点はあるか?"と聞かれてこう答えた。 「彼について驚くべきことはレースごとに成長していることです。いっそう自信にあふれ、より強く、大きくなっています。精神的にもプロ意識が高まり、ロイヤルアスコットのあとはいつになく素晴らしいかたちで疲れから回復しました」。

 「彼のパフォーマンスにはとても驚かされますね。ジャイアンツコーズウェイよりずっと速く、馬格も素晴らしいです。ジャイアントはいつも同じ馬体重で走っていましたが、この馬は重くなってきて、肉体的にとても良い状態です。走るたびにすごく驚かせてくれます。何かまったく違うことが起こっているのです」。

 何かまったく違うということには何かとてもワクワクさせられる。しかしオブライエン調教師はロイヤルアスコット終了時から目標としていたサセックスS(G1 グロリアスグッドウッド開催)に狙いを定めるこの馬を褒めただけではなく、鞍上をつとめたジョッキーに対しても賞賛の言葉を述べた。

 オブライエン調教師はこう続けた。「レース前にライアンと話したのですが、彼はすべてのシナリオを網羅していて、頭の回転も速いのです。周りで何が起きようとも、自信を持ってやろうとしていることを遂行するのです」。

 「ライアンはレース後すごく喜んでいて、"どんどん速くなっている"と言っていました。エミリーアップジョンのような優秀な牝の古馬と対戦するのは、つねに危ういものです。しかしライアンは自信満々で、信じられないような騎乗ぶりを見せていましたね」。

 「ライアンは年々腕を上げています。私たちの厩舎に来てからは毎年進化していますね。その進化は続いていて、集中力・判断力・自信・強さ・知識・決断・意欲・献身、それらすべてがどんどん強くなっています。驚異的なジョッキーです。私たちの馬に乗ってくれるのはとてもラッキーなことです」。

 この点を強調するかのように、ムーア騎手はその後のレースでデリック・スミス氏所有のリスボア(ジョン&セイディ・ゴスデン厩舎)に騎乗し、先頭に立ってライバルたちを眠らせたかのような巧みな手綱さばきを披露した。しかしオブライエン調教師がパディントンについて語った様子からすると、ムーア騎手がITVレーシングに対して"まだまだ強くなっていきます"と語ったことは特別な意味を持つのかもしれない。

 ムーア騎手はこう語った。「パディントンから最高のパフォーマンスを引き出せたとは思っていません。道中とても快適に走ってくれ、コースの真ん中あたりではとても心細く感じました。彼はポツンと先頭に立っていて、あの女傑が並びかけてきました。彼女はとてつもなく優秀な牝馬なのです」。

 「パディントンにはスピードがあり、たくさんのギアを持っています。能力というものはほかのすべてをさらけ出すものです。だからトップクラスの牡馬と言えますね。これからも彼のレースぶりを楽しめそうです」。

 私たちはライアンの騎乗ぶりも楽しむとしよう。

By Stuart Riley

(1ポンド=約180円)

[Racing Post 2023年7月8日「'He's getting quicker and quicker' - best is yet to come from Paddington as he delivers O'Brien a seventh Eclipse」]


上に戻る