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2023年05月11日  - No.17 - 2

デットーリ騎手、最後の英2000ギニーをカルディーンで制覇(イギリス)[その他]


5月6日(土)英2000ギニー(G1 ニューマーケット競馬場)

 戴冠式の日がニューマーケットのローリーマイルコースを湿った花火の状態で終わらそうとしていたとき、フランキー・デットーリ騎手(52歳)が救いの手を差し伸べた。騎乗馬カルディーン(Chaldean)が雨で重くなった馬場を力強く駆け抜け、英2000ギニー(G1)を制したのだ。

 デットーリ騎手の英2000ギニーでの騎乗は29回目であり、無類のキャリアにおいて最後となる。彼はあらゆることを素晴らしくシンプルにやってのけたのである。ペースメーカーを追走し、ゴールに向かって早めにダッシュし、2着に入ることになる単勝126倍のハイロイヤルを振り切ると、もはや敵はいないようだった。

 約40年前にニューマーケットにやってきてからおそらく初めて、デットーリ騎手はウィナーズサークルで言葉を詰まらせた。

 彼の最後の2000ギニーとわかってはいるものの、なかなか納得し難いことだった。彼は地元ニューマーケットで行われるこのレースを過去に3勝している。このような決定的な勝利に終わったことで、彼は"本当にこんなことが起こったのか?"と問い続けることになった。

 年末で引退することになっている彼は「夢でも見ているのかな」と言い、「すごくシュールで夢のように思えますね。感情としては、最後の2000ギニーを勝てたことは素晴らしいことです」と語った。

 カルディーンはチャールズ国王の戴冠式の日に2000ギニーを制した馬として記憶されるだけでない。前走で騎手を振り落としてクラシックを制したという珍しい栄誉も有することになる。

 デットーリ騎手は前走のグリーナムS(G3 ニューベリー)で発走直後に鞍からすべり落ちたとき、笑っていいのか泣いていいのか分からないような表情をしていた。今回はまったく違う、これ以上ないくらいの結果になったが、彼はまたしても涙か笑いか決めかねていた。

 「最後のシーズンでクラシックを勝つなんて、想像を超えています。特にニューベリーであんなことが起こりましたからね。感情の抑えがきかなくなっています。笑っていいのか泣いていいのか、それとも楽しんでいいのか分かりません。今はとても混乱しているのです。どっぷりと感情に浸らせてください!」

 「オイシン・マーフィー(ハイロイヤルに騎乗)と競り合っていたのですが、彼を振り切ったあと、馬群の中から何かが出てくるだろうなと思っていました。でも前方がぽっかりと開いていることしか見えておらず、こんなことが起こっているなんて信じられませんでした。地元ニューマーケットの観衆の前で最後の2000ギニーを勝てたことはとても素晴らしいことです」。

 今回のカルディーンの勝利でアンドリュー・ボールディング調教師は2020年のカメコ以来3年ぶりに2000ギニーを制した。しかしニューマーケットにいる人々と同様に、彼が一番意識していたのはデットーリ騎手のことだった。

 カメコが勝利したときには感極まっていたボールディング調教師だったが、今回はずっと明晰でありこう語った。「なんと鮮やかな騎乗でしょう。私が競馬に携わって以来、彼はこのスポーツに欠かせないスーパースターなのです。彼の最後の2000ギニーにふさわしい結果です」。

 「レース前にはニューベリーで起こったことを懸念していたのですが、いくらか良い点もあったのです。勝利を成し遂げたわけですから。オイシンを振り切れるかどうか少し心配でした。なにしろ彼は数馬身先を走ることができるジョッキーですからね。でも彼をとらえてからは、かなり自信が持てました」。

 「馬主のジャドモントファームが初めて私たちの厩舎に送り込んでくれた1歳馬がカルディーンだったのですから、とてもラッキーでしたね。これからもジャドモントの馬でたくさん勝利を挙げられたらと思います」。

 今シーズンどこかで1¼マイル(約2000m)に挑むことを考慮していないわけではないが、ボールディング調教師もジャドモントのレーシングマネジャーであるバリー・マーン(Barry Mahon)氏も満足げにロイヤルアスコットのセントジェームズパレスS(G1 約1600m 6月20日)を次の目標として挙げた。パディパワー社はこのレースでカルディーンを本命としており単勝オッズは1.8倍である。

 マーン氏はこう語った。「ジャドモントにとって特別な日です。カルディーンは去年も良かったのですが、まあ、今年はもっと良くなっていますね。素晴らしい調教で仕上げてくれましたし、素晴らしい騎乗でした。フランキーは長年にわたって驚異的な存在であり、このような見事な快挙に関わることができてすごく嬉しいです」。

 「カルディーンはフランケル産駒で、2歳のときにG1を制して、3歳でクラシック勝利を果たしました。これ以上のことを望むことはできません。それで次はセントジェームズパレスSを目指そうと考えています」。

 デットーリ騎手にとって最後のロイヤルアスコット開催での勝利は、最後の2000ギニーでの勝利と同様に競馬界にとって味わい深いものになるだろう。一日中雨が降っていたかもしれないが、デットーリ騎手に関してはどんな雲からも一筋の光明が現れるのである。

By Lewis Porteous

[Racing Post 2023年5月6日「'Am I dreaming?' - Dettori overcome with emotion after Chaldean wins the 2,000 Guineas in farewell year」]


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