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2023年04月20日  - No.15 - 2

コーラックランブラー、混乱したグランドナショナルで見事な勝利(イギリス)[その他]


 世界で最も人気あるレースの第175回目の開催で勝利を収めたのはグランドナショナルそのものだった。

 動物愛護団体のデモ隊は発走時刻を遅らせることに成功したが、競馬界にこのレースの施行をやめさせるという究極のミッションの達成は失敗に終わった。彼らはしくじったのだ。コーラックランブラー(Corach Rambler)にとっては最高の勝利だった。卓越性と勇気を発揮することより、神聖化された優勝馬名簿にその名が堂々と記されたのだ。

 ルシンダ・ラッセル調教師とデレク・フォックス騎手のコンビは2017年にワンフォーアーサー(One For Arthur)でこのレースを制してから6年後に、スコットランドにふたたびグランドナショナルの勝利をもたらした。優勝したことよりも彼らの驚くべき馬が栄光に浴したことを、一番喜んでいた。

 コーラックランブラー陣営の喜びは、もう1頭のスコットランド調教馬、ヒルシックスティーン(Hill Sixteen)の陣営を襲った絶望感とは対極にあった。この馬は第1号障害の飛越に失敗して命を落としたのだ。午後5時15分に予定されていた発走時刻の数分前に数人の活動家がコースに入り込んだことで、出走馬39頭は暖かい春の日差しの中でじっと待たされていた。

 抗議活動に関わった者の中には、第2号障害にしがみついたり、キャナルターンのそばの柵に自らを縛り付けようとしたりする者もいた。結果として、すでにコースに入っていた出走馬は午後5時10分にパドックに戻った。その7分後、騎手たちが計量室から出てきて歓声に包まれた。馬場入場時の行進は行われず国歌斉唱もなかったが、最も重要なことはグランドナショナルが14分遅れながらも楽しみに待たれていて施行されたことだった。

 "荒々しいレースでなかった"とは誰も言えないだろうが、コーラックランブラーは4¼マイル(約6,840m)を問題なく走りきったのである。粗暴なレースになった原因として、発走の遅れとそれによる馬への悪影響を挙げる人もいる。

 フォックス騎手は肩の故障のため11日間離脱していたが、この日の昼休みにやっと騎乗可能であると判断されていた。チェルトナムフェスティバルで2勝しているコーラックランブラーの鞍上をつとめた彼の状況判断は完璧なものだった。伏兵のミスターコフィー(Mister Coffey)を引き離して先頭に立ち、最後の直線に入って行った。ラッセル調教師のパートナーであるピーター・スキューダモア元騎手は、フォックス騎手に忍耐強く乗るように求めていたが、コーラックランブラーは道中順調に走り、彼が最終障害で先頭に立つのを阻止できる馬はいなかった。なお、フォックス騎手はワンフォーアーサーのときも怪我を克服して勝利を収めていた。

 グランドナショナルの栄光を手に入れることはすぐに確実になった。13頭しかいない英国調教馬のうちの1頭、コーラックランブラーはヴァニリエ(Vanilier)に2¼馬身差をつけてゴールし、ガイヤールデュメニル(Gaillard Du Mesnil)が3着、昨年の覇者ノーブルイエーツが4着に入った。

 フォックス騎手は、「ただ思いのままに走らせました。彼はしびれるような障害競走馬でとても賢いのです。ずっと先行していたのに、たやすく勝ってしまいましたね。驚くべき馬です」と語った。

 引退生活を送っていて3週間前に死んだワンフォーアーサーもそうだった。ラッセル調教師とスキューダモア元騎手は彼の死を心から悲しんだ。このカップルはここでとても人気がある。それはこれまでもそうであったように、手掛けている馬へのあふれるような愛情がひしひしと伝わってくるからだ。

 ラッセル調教師は「とにかく凄かったですね」と言ったあと、レース前にくり広げられた光景についてコメントしたいとすぐに伝えた。

 「コースに侵入して抗議していた人たちは、馬の福祉のための行動だったと思っているのでしょう。だけどあの馬はレースを愛しています。競走生活すべてを気に入っていて、最高の状態に仕上げられています。グランドナショナルに出走して、あのようなパフォーマンスを見せるのですから、本当に嬉しいです。今や偉大さを手に入れましたね。それは彼にふさわしいものです」。

 「コーラックランブラーは最高の馬だと思っています。今や世間の人々の心の中でもそうでしょう」。

 ラッセル調教師はこう続けた。「グランドナショナルを制することがどれほど重要か分かっています。アーサーのおかげでいかに生活が変わったか、またアーサーがどれだけ尊敬されていたかも知っています。コーラックが同じような偉業を達成したのは本当に素晴らしいことです」。

 「何よりも大切なのは馬です。彼の馬券を買っていた、それも出走馬確定前にたっぷり買っていたとしても、私にとっては馬券の話でないということです。何よりも大切なのはコーラックなのです」。

 「まったくあの馬は素晴らしいのです。私にとっても、チームにとっても、つきっきりで調教してきたスキューダモアにとっても嬉しいことです。それに肩を怪我して大変な時間を過ごしてきたデレクにとっても喜ばしいことですね。また素晴らしいオーナーの方々にとっても良かったと思っています」。

 「でも聞いていただきたいのですが、大切なのはコーラックです。ただただ素晴らしい馬ですね。あれらのフェンスを見事に攻略し、レースを理解していて、懸命に挑んだのです。今回のレースを気に入ったようでした」。

 そして、調教を手掛けて見事に勝利を手にしたこのカップルの無数の友人や称賛者たちも同様だった。

 スキューダモア氏はこう語った。「これらの美しい動物に愛着しすぎるべきではありませんが、ついついそうなってしまいますね。コーラックはこれから一生大切に世話されることでしょう。彼が無事で健康でいることは、勝利よりも大切なことなのです」。

 彼は本気で言っていた。キャメロン・ソード氏もまた同じ誠意を抱いている。今回ソード氏はコーラックランブラーの馬主ランブラーズ(The Ramblers)の一員として、21歳にしてグランドナショナル優勝馬主となった。

 ソード氏は「大喜びしています。なんという馬でしょうか!言葉になりません」と言い、レースを止めようとした人たちに対して自身の見解を述べた。

 「抗議をしていた人々は長いあいだ馬を日向で待たせっぱなしにしておいて、どうして競馬に抗議などできるのでしょうか?抗議することまでは否定しませんが、まったくおかしな話です。競馬は我々のスポーツであり、私はこれを愛しています」。

By Lee Mottershead

[Racing Post 2023年4月15日「'This is our sport and I love it' - Corach Rambler charges to magnificent victory in disrupted」]


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