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2023年03月16日  - No.10 - 3

世界馬福祉協会、馬が正しい形で競馬に関わることを支援(イギリス)[開催・運営]


 誰が味方かを知っておくことはつねに妙案である。特にいつ何どき自身の行動の正当性を問われるかわからない状況では。世界馬福祉協会(World Horse Welfare: WHW)は競馬界の味方であることを自負しており、その点でほかの動物愛護団体と一線を画しているということを競馬界の人々に理解してもらいたいと思っている。現在、WHWは競馬関係者との関係強化に努めている。

 WHWのCEOロリー・オワーズ氏は先週、本紙(レーシングポスト紙)の取材に対しこう語っている。「知りうるかぎりでは、WHWは世界で唯一、馬が正しい形で競馬に関わることを積極的に支援する馬関係福祉チャリティーです。"正しい形"という言葉がこの声明においてとても重要であることは明らかです。それでもやはり、その立場を取る組織はWHWだけなのです」。

 WHWは競馬界の大切な味方と言えるだろう。馬の福祉を推進する取組みを支援する一方で、より広い世界から期待されるケア水準と歩調を合わせるために必要なことがあればそれを知らせる。今後も一般の人々から競馬に対する支持を得続ける上で、このような関係はとてつもなく重要になるだろう。

 オワーズ氏はこう続けた。「社会が変化しつつある世の中に私たちは生きています。適切な馬の福祉とは何なのかについての理解も変化しています。そして、良し悪しを問わずニュースが一瞬のうちに世界中を駆けめぐる世の中です。今後も馬スポーツが一般の人々に確実に受け入れられていくものとなるよう、大きなプレッシャーを受けていると思います」。

 「長年にわたり、建設的なパートナーであることが馬のために最も貢献できる方法だと堅く信じてきました。そのため競馬界のすべてに賛成しているわけではなく、独立した立場なのです。そして、独立した意見を持って指導したりコメントを出したりすることは競馬界にとって大きなメリットがあると思います」。

 それはRSPCA(英国王立動物虐待防止協会)とWHWを区別するものでしょうか?

 「もちろんRSPCAは競馬界と積極的に関与しています。馬の健康と安全を向上させるという点では、多くの目的を共有しています。しかし馬の福祉と安全を最優先とするにせよ、私たちのように、馬を競馬やスポーツに参加させることは正しくて適切なことだと本当に考えているとまでは言いません」。

 オワーズ氏とそのチームは少しずつ前進していることを実感している。

 「人々はWHWのことを知っていても、WHWが積極的に競馬に携わっていることや、それがどれだけ長く続いているかを必ずしも知っているわけではありません」。

 「一般的に、WHWはとても温かく迎えられています。最近ではBHA(英国競馬統括機構)のジョー・ソーマレズ・スミス会長、ジョッキークラブ、そして数人の一流調教師と話しました。WHWの取組みがどのようなものであるかを理解してもらえれば、反応はだいたいにおいて非常にポジティブです」。

 「WHWの取組みと競馬の未来のあいだには、ポジティブな連携があると堅く信じています。そこには真の共生関係があると思うのです」。

 競馬界がその責任にどう応えていくかという課題について、オワーズ氏は激励の言葉をかけるだけではなく、競馬界が一箇所に落ち着くのではなく前進し続けることを望んでいると主張する。

 「うまく行っていることについては大声で喧伝したくなることもたくさんあります。たとえば馬福祉委員会(Horse Welfare Board: HWB)が発足し、26のプロジェクトを手掛けています。現在20のプロジェクトが進行中だと思います。世界でもトップレベルの取組みであり、誇りに思うべきことです」。

 「競馬界では、"これだけ変化したのだからもう十分だ"という考えもあるようです。しかし世界も、世間一般の見方も、馬の福祉への理解も実際には進歩しているのだということを注意喚起したいのです。だから先手を打ち続けるようにしなければならず、尻込みしている場合ではないのです」。

 もちろん変化とは挑戦である。特に以前のやり方を良しとしてきた人たちにとっては大変なものになる。オワーズ氏はそれが批判につながることもあると認めている。

 「重要なのは長期的な見方をするということです。競馬の長期的な健全性を確保し、人馬の協力関係が長期的に成功して響き合うことです。どのような道のりであれ、苦難に満ちた日があるのはたしかです。しかしだからといって、進むべき方向が正しくないということにはならないのです」。

 昨年、WHWは鞭について"もはや馬を奮起させるために鞭を使うべきではない"と主張した。そのサイトの興味深い記事には、"鞭は威圧することを目的に使用されており、これは倫理的な馬スポーツの基礎である人馬の協力関係の概念を危うくするようなものである"と書かれている。

 オワーズ氏は「なぜ競馬には鞭が必要なのかを明確に説明できるようになることは競馬のためになります」と述べた。彼はこのテーマを"鞭は馬を傷つけるのか?"という素朴な疑問に矮小化しないように求めているのだ。

 WHWの幹部リストには、会長のアン王女をはじめ競馬界の有名人が名を連ねている。ほかにもゴドルフィンのダーレースタリオンのディレクターであり、競馬界に40年もいるベテランのサム・ブラード氏がいる。彼は1980年代にはギャヴィン・プリチャード-ゴードン調教師の助手を務めていた。WHWの評議員でもあるブラード氏は、その立場から本紙に対してこう語った。「競馬界には、WHWが敵ではなく競馬を助けようとする存在であることを理解してもらいたいです」。

 「WHWのすべての評議員が"馬がスポーツに使われることはあって良いが虐待はあってはならない"と信じている点が重要だと思います。私がWHWに加わった理由はそこにあります。総合馬術も馬場馬術も競馬も大好きです。物事を止めることには興味がないのです」。

By Chris Cook

[Racing Post 2023年3月6日「World Horse Welfare tells racing: 'We are not the enemy'」]

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