英国競馬界、ウクライナ危機への支援を呼び掛ける（イギリス）[その他]

　英国競馬界は、母国での恐ろしい一連の出来事に最も大きなショックを受け恐怖を感じている人々を支援するために動いている。そのような中、一流調教師2人が"悲しみに苛まれる"ウクライナ人スタッフについて語った。

　英国厩務員協会（NARS）によると、英国にはウクライナ人スタッフが28名登録されている。ロシア軍のウクライナ侵攻により世界中で非難の声があがっており、攻撃された国には大きな同情が寄せられている。

　ランボーンのジェイミー・オズボーン厩舎では3人のウクライナ人スタッフが働いている。オズボーン調教師はこう語った。「彼らにとってとても困難な状況ですね。うちには長年勤めてくれている3人のウクライナ人がいます。今起こっているのは、彼らにとって身の毛もよだつようなことです」。

　「うちで働くウクライナ人夫婦は子どもとともに英国で暮らしていますが、言うまでもなく故郷の家族のことを心配しています。もう1人のウクライナ人女性はこのような事態に備えて身辺整理をしておくために、数週間前に帰国しました」。

　「1939年のシナリオが2022年にほぼ同じように再現されるとはとても思えません。ウクライナ人を支持しないまったく思いやりのない人などはいないと考えますし、うちの厩舎でも同じです」。

　アラン・キング調教師は厩舎にいる３人のウクライナ人スタッフを支援しており、本紙（レーシングポスト紙）のコラムでこう語った。

　「彼らは悲しみに苛まれています。家族も友人もみんな向こうにいるので、恐怖を覚えていますね。3人はここに何年も務めていて、毎年夏に2～3週間帰国していました。今は彼らに本当に同情しています」。

　NARSはウクライナ人スタッフを支援することに熱心である。CEOのジョージ・マクグラス氏はこう語った。「情報をもらって、彼らがどう過ごし、どのような形であれ何か援助を必要としていないか、様子を窺っています」。

　「できるかぎりのことは何でもします。人道的危機を救うためにすでに物資を集め始めていますし、多くの団体がこのようなことに取り組んでいます」。

　BHA（英国競馬統括機構）はNARSと連絡を取り合い、英国競馬界へのロシアの投資についても調べている。

　BHAは声明においてこう述べている。「BHAは英国競馬界の多くの人々と団体とともに、ロシアの軍事行動を公然とそして全面的に非難しており、英国競馬産業で働くウクライナ人たちとともにあります」。

　「ロシアの英国競馬界への投資に関する初期評価は、競馬界・生産界全体のパートナーと協力して実施されています。しかしこれまでの調査では、そのような投資は極めて限定的であることが示唆されています」。

　英国ジョッキークラブは、侵攻により影響を受けた人々を支援する赤十字社の呼びかけを支持している。CEOのネヴィン・トゥルーズデール氏はスタッフへのEメールでこう述べている。

　「ジョッキークラブはロシアやウクライナで活動していませんし、これらの国からのレーススポンサーもいません。しかし明らかに人道的危機は進行しています」。

　「多くの慈善団体がウクライナ危機への呼び掛けを始めています。その1つが英国赤十字社です。彼らは、ウクライナの慈善団体や国際的な慈善団体を通じて侵攻により影響を受けた人々や避難民に対して食料・水・救急処置・医薬品・防寒服・避難所などを提供するための募金活動を行っています」。

　「ジョッキークラブとして寄付することで、私たちはこのキャンペーンを支援します。またジョッキークラブが所有する競馬場でもこの呼び掛けを推進し、（大型スクリーン・レースカード・場内アナウンスなどを通じて）競馬ファンに寄付を呼び掛ける予定です」。

　「皆さんの中にこの紛争で危険にさらされている親戚や友人がいるなど、この危機に影響を受けている人がいましたら、競馬福祉協会（Racing Welfare）の支援サービスを利用できることをご留意ください」。

　多くの主要スポーツ団体がジョッキークラブに詳細確認の連絡を取ってきており、先例に倣って赤十字社の呼び掛けを支持しようとしているようだ。

　２月28日（月）に行われた政府のブリーフィングに、競馬場協会（RCA）のCEOデヴィッド・アームストロング氏が競馬界を代表して出席した。ほかにもさまざまなスポーツ分野の著名人たちが出席し、ナディーン・ドリーズ文化大臣から最新の状況について報告を受けた。

By David Carr