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2022年03月03日  - No.8 - 3

馬の視覚に関する研究結果を受けて障害を白色に変更(イギリス)[開催・運営]


 英国の障害競走は3月からはっきりとした新しい外観をもつことになる。馬の福祉を向上させるための研究の結果、国内のハードル(置障害)やフェンス(固定障害)がオレンジから白に変更されはじめるのだ。

 BHA(英国競馬統括機構)が委託しエクセター大学が実施した研究の結果として、この変更は実現する。その研究は、馬にとってどの色が一番よく見えるかを精査して障害競走をより安全なものにすることを目指したものである。

 障害の踏切板やトップボードは伝統的にオレンジ色だったが、馬は赤・オレンジ・緑の濃淡を識別できないため、障害までの距離を判断することが困難だ。

 2017-18年シーズンに開始され、新型コロナ感染拡大のために遅れを取っていたこの研究は、障害を白に変更することで馬の視認性が高まり飛越能力が向上することを示した。

 BHAの馬健康・福祉担当理事であり馬福祉委員会(HWB)のメンバーであるジェームズ・ギヴン氏はこう語った。「私たちの視覚は馬と同じではありません。虎は獲物に見られないようにオレンジ色に進化したのですから、馬にとってもフェンスのオレンジ色は見えにくいのです。彼らにとって目立つ色ではありません」。

 「このプロジェクトでは誰もが同じ方向に導かれ、ほんの一部の調教師だけが懸念を述べていました。しかしランボーン・モルトン・ミドルハムのどの調教施設にも白い障害があり、フィリップ・ホッブス氏など、何年にもわたって白い障害を使っている調教師もいます」。

 「これは競馬産業にとって大きな進歩です。適切な行動を取るだけでなく、競走馬をできるかぎり安全に保つ最善の方法を見つけるために、絶えず学習・発展・グレードアップを遂げていることを示します」。

 この研究の肝となる部分は、コッツウォルズにあるリチャード・フィリップス氏の調教場で実施された。馬に対して、さまざまな配色(白・蛍光イエロー・青など)を試した。

 フィリップス調教師はこう語った。「数週間にも数ヵ月にもおよぶ期間において、異なる色の障害を使って18頭ほどを調教しました。そして彼らがどのように飛越するかを記録しました」。

 「開始するときは"どれだけの違いがあるのだろうか?"と誰もがやや訝しく思っていました。しかし現場で見ていた人たちでさえも、いくつかの色のあいだで違いがあることを目の当たりにできました。私たちは皆、馬が白いフェンスをより潔く滑らかに飛越しているように見えるということに同意しました。それ以来、障害を白にしておくことにしたのです」。

 「変更のための変更にはまったく賛成しませんが、科学的裏づけでは、馬が私たちと同じように見ていないことはかなり明白です。それゆえ、馬がより優れたパフォーマンスをするために役立つことは、馬だけでなく人間や競馬全般にとって良いことであるはずです。1つのスポーツとして、可能なかぎり安全性を高めるためにあらゆる措置を取ることを考えなければなりません」。

 白い障害は3月から英国の競馬場で姿を見せる。3月14日にストラトフォード競馬場でこれらの新たな障害を披露する最初の開催が行われる。

 この変更は現行の障害シーズンの終了時に実施され、英国のすべての競馬場が2022年12月までにこの新たな配色を採用することになっており、ポイント・トゥ・ポイント競走の開催場も来シーズンに同様の措置を取ることになっている。競馬賭事賦課公社(Levy Board)は全競馬場で必要とされる工事の実施に向けて、総費用の約70%にあたる25万5,000ポンド(約3,953万円)を拠出することに同意している。

By Catherine Macrae

(1ポンド=約155円)

 (関連記事)海外競馬ニュース 2018年No.39「馬の色覚に関する研究結果を受けて、障害の色をオレンジから黄色へ(イギリス)

[Racing Post 2022年2月24日「Future not orange: British jump racing to get new look in wake of welfare study」]

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