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2022年02月24日  - No.7 - 3

マーフィー騎手、感染防止ルールと飲酒の違反などで14ヵ月間の騎乗停止処分(イギリス)[その他]


 オイシン・マーフィー騎手(26歳)は2023年2月まで騎乗停止処分を受けることになった。BHA(英国競馬統括機構)が示した5つの嫌疑について有罪であることを認めたのだ。

 独立した審査員団は2月22日、リーディングに3回輝いたマーフィー騎手は2021年12月8日から14ヵ月間は騎手免許を再申請できないと裁定した。新型コロナ感染防止ルールの違反と競馬の評判を損なわせる行為に対して11ヵ月間、さらに2回の基準値を超えるアルコール検出に対して100 日間の騎乗停止処分が科されたのだ。

 審査員団は、2020年9月のミコノス島(ギリシャ)への旅行に関する説明を受けた。議長はのちにこれを"マーフィー氏が作り上げたごまかしの網"と表現することになる。騎手は要求されていた自己隔離をせず、レースで騎乗することを選んだ。

 リーディング争いと、新型コロナ感染防止ルール違反に関するBHAの調査という二重のプレッシャーの影響がどのように飲酒行為を"制御不能"なものに陥れたのかを、彼は説明した。

 マーフィー氏はBHA本部(ハイホルボーン)に現れ、(1)2020年9月の新型コロナ感染防止ルール違反に関する2つの嫌疑、(2)2021年5月と10月のアルコール検査失格、(3)競馬の適切な公正確保・品行方正・好意的評判を損なわせる行為に関する全般的な嫌疑についての裁定を受けた。

 新型コロナ感染防止ルール違反2件と評判を損なわせる行為には3つの11ヵ月間の騎乗停止処分が同時期に執行され、過怠金3万1,111ポンド(約482万円)が科された。一方、5月5日の2度目となるチェスターでのアルコール検査失格には10日間、10月8日の3度目となるニューマーケットでのアルコール検査失格には90日間、合計100日間の騎乗停止処分が科された。騎乗を再開できるのは2023年2月16日となる。

 マーフィー氏はいずれの嫌疑にも異議を唱えなかった。現在専門家の助けを借りて、アルコール依存症は収まっていると彼は語った。

 このBHAの事例を担当した法廷弁護士のシャーロット・デイヴィソン氏は、"ミコノス事件"をめぐりマーフィー氏がついた一連の巧妙な嘘についてきわめて詳細に説明した。

 それは、騎乗停止期間中の2020年9月9日~13日にマーフィー氏がミコノス島を旅行したことを中心に展開した。出発前日にギリシャは"レッドリスト指定国"に加えられていたが、彼は帰国したときに14日間の自己隔離をせずレースでの騎乗を再開していた。

 彼はその当時レッドリストに入っていなかったイタリアのコモ湖を訪れていたと、SNSに投稿したり、TVインタビューで話したり、BHAから直接質問されたときにも答えたりしていた。

 また自己隔離しなければならない14日間に、騎乗申請フォームにある「レッドリスト指定国を訪れたか?」という質問に対しても虚偽の回答を行った。この14日間に、彼は2ヵ国の11競馬場で合計74回騎乗している。

 そのあいだに11勝を挙げ、ウィリアム・ビュイック騎手に8勝差をつけてその年のリーディングタイトルを勝ち取ったが、マーフィー氏を担当するロリー・マクネイス弁護士はそれがリーディング争いに影響を与えたという指摘に反論している。

 「自己隔離していたらどのレースにも騎乗できなかったでしょうが、リーディングタイトルを獲得できなかったということにはなりません。その後にどのような決断が下されたかわからないのですから、自己隔離していれば2020年のリーディングタイトルを獲れなかったというのは飛躍しすぎです。ともかくマーフィー氏がリーディングに輝いていたということはありえたでしょう」。

 またBHAからさらに質問を受けたときにこの件について嘘をつき続け、2021年5月25日になってやっと実はミコノス島にいたのを認めて詳細を説明したことをマーフィー氏は認めた。審査員団(ほかにレイチェル・スピアリング氏やアンソニー・コーネル氏で構成)の議長をつとめたジェームズ・オマホニー氏はこれを「最初の嘘を成立させるためのごまかしの網」と表現した。

 さらに審問は2回のアルコール検査失格にも焦点を当てた。それは2021年5月5日にチェスターで行われた尿検査と、パブ『ザ・ヤード』でマーフィー氏が酔ったあげく口論したと言われる悪名高い事件の翌日の10月8日にニューマーケットで行われた呼気検査である。

 マーフィー氏は近年飲酒の問題が大きくなっていたことを認め、感じていた重圧や、心理状態にうまく対処するためにアルコールに依存していたことについて語った。

 そして実父のアルコール依存症との闘い、騎手としての形成期に叔父ジム・カロティ氏や最初の師匠であるエイダン・オブライエン調教師からアルコールがもたらす悪影響について忠告されていたことを話した。

 交友関係の広がりと日々の仕事によって、アルコールが絶えることがなくなっていたとマーフィー氏は述べた。フランスでのコカイン陽性・新型コロナ感染予防ルール違反・英国での複数のアルコール検査失格によるプレッシャー、そして4年連続のリーディングタイトル獲得を目指した働きづめの日々。これらすべてが彼を危険な状態に追いやる原因となった。グロリアスグッドウッド開催の週は毎晩アルコールで気を失い、"ザ・ヤード事件"の前にはチェルムスフォード競馬場からの帰り道に車中でウオッカとレモネードを飲んでいたという。

 コカイン陽性で騎乗停止処分となり競馬から離れていた時期について、マーフィー氏はこう語っている。「朝に調教で騎乗して、それから飲んでいましたね。ワインを1本開けると、たいていは飲み干しました。何もすることがなかったし、BHAがミコノス島について気づいていることは分かっていたのです」。

 レースでの騎乗を再開してからも飲酒は続いた。「帰宅して1人でレースのリプレイを見ながら、ワインを1本空けたりウオッカを飲んだりしていました。突然、自分がアルコールに依存していると実感したのです。飲んだら誰とでも社交的に付き合えるし、夜もぐっすり眠れると思っていましたね。グロリアスグッドウッド開催が終わった翌日の日曜日には、毎晩気を失っていたことに気づきました。これは問題だなと思ったのです」。

 「夜にはグラスワインを1杯飲むことも10杯飲むこともありました。あのとき("ヤード事件"と翌日の呼気検査での失格)まで、プレッシャーへの対処やアルコール依存の問題についてきちんと分かっていなかったのです。飲酒行為は制御不能になっていましたね。そこに至るまで、自分の評判を大きく傷つけてしまいました」。

 「過去をやり直すことはできません。最初の嘘がすべてのごまかしにつながったのです。今は禁酒していて、あのような過ちを犯すことはないだろうと思います。過去に戻ることはできませんが、とんでもない過ちでした」。

 「すべての違反を認めます。ただもっとうまく対処できればよかったのですが」。

 オマホニー氏は裁定を言い渡す際にこう語った。「結論としては、あなたは自分にはルールが及ばないと思っていたようですが、ルールは誰にでも適用されるのです。誰もがやっていたように、あなたは自己隔離しなければなりませんでした。それなのに、長期間にわたるごまかしに手を染めてしまったのです。残念なことですが、スポーツマンとして、また元リーディングジョッキーとしてあるまじき行為でした」。

 マーフィー騎手はリハビリに専念するため2021年12月8日に騎手免許を返上しており、それ以来レースでは騎乗していない。

 騎乗停止処分の期間は12月8日まで遡ることになる。ただし、現在マーフィー氏は騎手免許を保有していないために厳密に言えば騎乗停止処分を科されることがない。それゆえ審査員団はこの期間中、マーフィー氏に再申請の資格を与えないことを決定した。

By Stuart Riley

(1ポンド=約155円)

 (関連記事)海外競馬ニュース 2021年No.48「マーフィー騎手に残されたチャンスはこれが最後かもしれない(イギリス)

[Racing Post 2022年2月22日「Oisin Murphy banned from riding for 14 months after Covid and alcohol breaches」]

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