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2022年12月08日  - No.46 - 3

世界を舞台に活躍した優秀な牝馬、ウィジャボードが21歳で死亡(イギリス)[生産]


 優秀なG1・7勝牝馬ウィジャボード(父ケープクロス)が21歳でこの世を去った。母としては、英ダービー馬で現在G1馬を出す優秀な種牡馬になったオーストラリアを送り出している。この悲報はウィジャボードのオーナーブリーダーであるダービー卿夫妻により発表された。

 11月29日夜に発表された夫妻の声明にはこう記されていた。

 「世界記録を打ち立て多くの人たちにたくさんの幸せな思い出をもたらすような馬を生産できるとは、夢にも想像していませんでした」。

 「彼女は随一の馬で、その気質はいつも最高に素晴らしいものでした。牧場のまわりを歩くたびに、ハグしたりポロミントをあげたりすると喜んでくれました。私たちの人生に彼女がいてくれて本当に幸運でした。とても多くの喜びをもたらしてくれたのですから。4年間の世界を巡る旅で、楽しさと喜びをもたらしてくれたことは、永遠に残る幸せな思い出です」。

 その旅はウィジャボード、ダービー卿夫妻、エド・ダンロップ調教師をニューマーケットから香港まで連れて行き、その途中でテキサス・カラ・アスコット・グッドウッド・チャーチルダウンズに立ち寄り輝かしい勝利を収めた。現役の4年間に22戦10勝(うち7勝はG1勝利)の成績を収めた。

 2歳時に未勝利戦を制しリステッド競走で3着となった。3歳初戦のプリティポリーS(L ニューマーケット)を制してブラックタイプ初勝利を決めたことは、そのあとの英オークス(G1)優勝へのウォーミングアップとなった。続く愛オークス(G1)でも勝利を手にしている。

 夏休みを挟んで挑んだ凱旋門賞(G1)では、その年の英ダービー馬ノースライトを2馬身引き離し、優勝馬バゴにわずか1½馬身差の3着に入った。3歳シーズン最後の一戦ではふたたび勝利を収めることになる。BCフィリー&メアターフ(G1 ロンスターパーク)を制したのだ。

 ウィジャボードは4歳も現役を続行し、ふたたび遠征の多いシーズンを過ごした。BCフィリー&メアターフ連覇を狙ったが、惜しくもインターコンチネンタルの2着となった。しかし、シーズン末には香港ヴァーズ(G1)で勝利を挙げた。

 5歳シーズンの初戦はドバイシーマクラシック(G1)であり、ハーツクライの4着となった。その後、香港に戻りクイーンエリザベス2世カップ(G1)に参戦し首差の3着に入る。次にエプソムの舞台に戻り、オークスと同じコースと距離のコロネーションカップ(G1)に出走しシロッコの2着になった。

 そしてプリンスオブウェールズS(G1 ロイヤルアスコット開催)を制してシーズン初勝利を達成したあと、2つの壮大な激戦を繰り広げることになる。ナッソーS(G1 グッドウッド)で同じく世界を舞台に活躍するアレクサンダーゴールドランと、愛チャンピオンS(G1 レパーズタウン)でディラントーマスと戦ったのだ。ナッソーSは先頭でゴールを駆け抜けたものの、愛チャンピオンSでは3歳のディラントーマスに敗れた。

 2006年11月にBCフィリー&メアターフ(チャーチルダウンズ)で7勝目にして最後のG1勝利を収め、同じ月にジャパンカップ(G1 東京)でディープインパクトの3着に入ったあと、輝かしいレースキャリアに幕を下ろした。

 エド・ダンロップ調教師は世界中の新聞の見出しに名前を飾ったこの牝馬に、心からの熱烈な賛辞を贈った。

 「彼女はすごいチャンピオンでしたね。こんなに偉大な馬を預かることができてとても幸運でした。彼女とは幸せで素晴らしい瞬間がたくさんあり、たった1つを挙げるなんてことは無理ですね。英オークスを制したことは調教師としてとても特別なことでした。そして代表的なナッソーSでの壮絶な戦いは長く記憶に残るでしょう。要するに、私の人生を変えてくれました。彼女にはとてつもなく大きな借りがあるのです」。

 優秀な競走牝馬が必ずしも良い母親になるとはかぎらないが、ウィジャボードは息子オーストラリアを通じてサラブレッド生産史に名を刻むことになった。2014年に英ダービー(G1)・愛ダービー(G1)・英インターナショナルS(G1)を制したオーストラリアは、250年のクラシック競走の歴史において初めてダービー馬とオークス馬のあいだに生まれたダービー馬となったのだ。

 栗毛のオーストラリア(父ガリレオ)はクールモアで種牡馬生活を送り、これまでG1馬5頭を出しているが、ウィジャボードの息子として自らの力で血統的な評価を獲得したのは彼だけではない。半弟フロンティアーズマン(9歳 父ドバウィ)はゴドルフィンS(L)を制し、母と同じくコロネーションカップで2着となっている。現在オーヴァーベリースタッドで種牡馬生活を送っており、初年度産駒は今年2歳になっている。

 オーストラリアとフロンティアーズマンの半兄にはウィジャボードの初仔アワーブードゥープリンス(父キングマンボ)がいる。この馬はダービー卿とエド・ダンロップ調教師のもとで3シーズンの現役生活を送ったが、その後豪州に移籍し、クリス・ウォラー調教師のもとでイースターカップ(G3)を制している。

 ダービー卿はウィジャボードの第2仔アイゲウス(Aegeus 父モンズーン)も手元に置いてダンロップ厩舎に預けた。この馬は2勝を挙げたあと売却された。

 ウィジャボードが送り出した唯一の牝馬はフィリアレジーナ(父ガリレオ)でありオーストラリアの全姉である。ダービー卿のスタンリーハウススタッドを運営するピーター・スタンリー氏は、ウィジャボードが1頭の娘しか残さなかったことがどれほど残念であるかについてコメントしている。

 「ウィジャボードはあらゆることに万能でそれ以上のことを達成しました。繁殖キャリアも同様に感動的なものだったのです。2014年にダービーを制したオーストラリアを送り出し、続くフロンティアーズマンもG1のコロネーションカップで2着となりました。1つだけ残念なことがあるとすれば、彼女が娘を1頭しか残さなかったことですが、実のところ彼女については最初から最後まで喜びの連続でした」。

 その娘、フィリアレジーナはこれまで勝馬3頭を送り出し、2歳で未出走のキングマン牡駒ボーンルーラーはサー・マーク・プレスコット調教師に管理されており、来年の英ダービーに登録されている。

 ウィジャボードの活躍は、リン・ツイ氏がシーザスターズを生産するきっかけともなった。同氏はケープクロスの娘の輝かしいキャリアを理由に、名牝アーバンシーをケープクロスのもとに送り込んでいる。
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By Aisling Crowe

[Racing Post 2022年11月29日

「'She changed my life and I owe her a huge, huge debt' - Ouija Board dies aged 21」]




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