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2022年11月30日  - No.45 - 3

ゴスデン調教師、"少し不可解な"抗炎症剤陽性反応で過怠金(イギリス)[獣医・診療]


 ジョン・ゴスデン調教師は懲戒委員会により合計3,000ポンド(約50万円)の過怠金を科された。2020年シーズン終盤に出走した牝馬2頭の体内にいずれも同じ治療薬が残っていたことが判明したのだ。ただその治療薬の投与から2週間以上が経過していた。うち1頭の陽性反応が投与から26日後に示されたことにより、調教師は"少し不可解なところが残る"と述べていた。しかし、"最終的にBHA(英国競馬統括機構)がこの問題を解決したことに満足している"と付け加えた。

 これら2頭の牝馬のうち知名度が比較的高いのはマジェスティックノア(Majestic Noor)である。2020年9月16日にヤーマス競馬場でリステッド競走を制したあと、トリアムシノロンアセトニド(TCA)の陽性反応が出た。ゴスデン厩舎とニューマーケット馬診療所の記録によると、この馬は9月1日にアドコルチル(Adcortyl)を注射されていた。それはTCAを含む抗炎症剤でBHAのシャーロット・デーヴィソン氏が言うところの「14日間の強制的な休薬期間」を伴うものだった。

 デーヴィソン氏によると、ブノワ・エランクス(Benoit Herinckx)獣医師はマジェスティックノアの後肢球節に合計15㎎のアドコルチルを注射していたという。その後、この馬が関節包に損傷を負ったことにより、物質が予想以上に長く体内に残ってしまった可能性がある。

 デーヴィソン氏はこう語った。「アドコルチルの投与から5日後に、マジェスティックノアの関節包に損傷が見つかりました。前日の夕方の検査では存在していなかった注射部位から離れた箇所にある腫れについて、エランクス獣医師は診察しました」。

 「エランクス獣医師は、"後になって改めて考えると、関節包の損傷によって滑液が漏れたため薬剤の除去が遅れた可能性がある"と説明しました。それが不利な分析結果が出た理由かもしれないとのことです」。

 陽性反応を示したもう1頭は、生涯2戦して着外に終わったペロニスタ(Peronista)である。ゴスデン調教師は懲戒委員会の審査員団に対してこう語った。

 「彼女をなかなかうまく走らせることができず、3歳シーズン末までレースに送り込むことができませんでした。馬の健康回復にとても効果的だという薬物を使うことによって、何らかの助けになるのではないかと思ったのです。その薬物を使うときには細心の注意を払っています」。

 ペロニスタは2020年9月11日にその薬物を注射された。それからほぼ1ヵ月後の10月7日にケンプトン競馬場で行われた検査で陽性反応が出た。なぜこれほど長い時間が経っても薬物が残っているのかという疑問について、デーヴィソン氏は関節に注射されたときに薬物は"とっぴな"動きをすることがあるとBHAは考えていると述べた。そして"獣医師が馬に頻繁かつ合法的に処方し投与していること"を認める一方で、この薬物の使用について注意を払うように調教師たちには指導してきたと付け加えた。

 また、デーヴィソン氏は「ゴスデン氏がルール違反を犯すつもりだったとは考えられないとBHAは明言しています」と続けた。当事者間で罪を認めた上で合意が成立し、審査員団はこれを承認し、陽性反応が出た2つの事例にそれぞれ1,500ポンド(約25万円)の過怠金が科されることになった。デーヴィソン氏は3つの減刑要素を認めた。それは、(1)ゴスデン氏が獣医師の指導に従ったこと、(2)物質が予測不可能な動きを取った可能性があること、(3)BHAによる申立てが遅れたこと、である。

 「その薬物はめったに使わないのです」

 ゴスデン調教師は審査員団にこう語った。「投与してから26日後というのはかなり不思議です。ちょっと不可解なところは残りますが、少なくとも私たちはその薬物の出どころを知っています。総合馬術や障害馬術競技を含め一般的に使用されている薬物です」。

 「この薬物をとても控えめに使っており、めったに使わないのです。マジェスティックノアの場合は、彼女にとって生まれて初めての投与だったので、真剣に考えずに使ったわけではありません。実際のところ、最近引退したばかりのストラディバリウスは現役時代の7シーズンにこのような薬物を一切注射したことがありません」。

 「検査で何ピコグラムが検出されたかは分かりませんが、それほど多くないのは明らかです。しかし陽性反応があったのですから、この事実に向き合わなければなりません」。

 「エランクス獣医師が誰よりも驚いていますね。きわめて経験豊富な人物です。彼はうちで三十数年働いてくれていて、まず馬が第一だと考えています」。

 ゴスデン調教師は本紙(レーシングポスト紙)に対し、あまりに短いあいだに2件の陽性反応が生じたことを不可解に思っていると述べた。またその後の2年間に、ほかに薬物検査で引っかかったという知らせは受けていないという。

 ゴスデン調教師は過去に1度、トリアムシノロンアセトニド(TCA)に関連する事例を経験している。2019年ロングディスタンスカップ(G2)で3位入線したロイヤルラインが失格となったときだ。彼はそのとき、「BHAは休薬時間について責任を全く負おうとしません。それにより現場で働く獣医師には、"BHAのために実験を行っていて不利な結果が出た場合に顧客とともに報いを受ける"という心のしこりが残っているのです」と苦言を呈していた。

By Chris Cook

(1ポンド=約165円)

[Racing Post 2022年11月24日「'A little puzzle' as John Gosden fined £3,000 over anti-inflammatory positives」]


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