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2022年11月30日  - No.45 - 2

アルコールフリー、欧州セリ史上2番目の高額で購買され豪州で現役続行(イギリス)[生産]


 タターソールズ社12月繁殖牝馬セールのカタログが発表されて以来、生産部門にいる人々は2つの同じ質問を投げかけてきた。アルコールフリーはいくらで売れるのか?誰が買うのか?

 11月29日(火)午後6時前、セプターセッション(最高級の競走牝馬・繁殖牝馬が上場されるセッション)の最中にその答えは明らかになった。観客席で人々が畏怖の念を抱く中、ユーロン・インベストメンツ社の張月勝氏のとなりに座っていたBBAアイルランドのマイケル・ドノホー氏がアルコールフリーを540万ギニー(約9億3,555万円)で落札したのだ。

 観衆でいっぱいの通路に立っていたクールモアのM・V・マグニア氏は、この競り合いで負けてしまった。アルコールフリー(父ノーネイネヴァー)は欧州のセリで落札された馬の中で2番目に高額な馬となったのだ。

 ドノホー氏はこう語った。「アルコールフリーはある馬主グループに購買されました。豪州で現役を続行する予定です。レースでかなりの距離を走ってきたこの牝馬は入念に検査されおり、報告書は模範的なものでした。馬主グループは豪州ですでに競走馬や繁殖馬を所有しており、彼女がレースキャリアを終えれば素晴らしい繁殖牝馬になることは言うまでもありません」。

 「豪州では87レースの総賞金が100万豪ドル以上であり、かなり高額の賞金が提供されています。彼女はそういうレースを狙える牝馬です。ジュライカップ(G1 約1200m)で優勝していてマイル戦でも距離がもちますから、多くの選択肢があります。アンドリュー・ボールディング調教師とそのチームは讃えられるべきでしょう。彼らは素晴らしい手腕で彼女を手がけました」。

 購買者は、アルコールフリーが南半球での競走生活を終えたあとにフランケルと交配する可能性が高いことも示唆した。

 ドノホー氏はアルコールフリーを540万ギニーもの高額で購買したことについてこう語った。「競走を引退する良血牝馬の価値を決めるのは不可能です。なかなか市場に出回らないので、コレクターズアイテムになっています。ピカソの絵画のようなもので、とても希少なのです。頭の中で落札額を想定していたので、かなり強気で競り合っていました。ということは、タンクにまだガソリンが残っているように見えたのかもしれないですね!」。

 アルコールフリーはジェフ・スミス氏に所有され、アンドリュー・ボールディング調教師により管理され15戦6勝(うち4勝はG1勝利)の成績を挙げた。2歳時にチェヴァリーパークS(G1)を制したときからG1ハンティングが始まった。3歳時にはスノーランタンを破ったコロネーションS(G1)での勝利やポエティックフレアに1¾馬身差をつけたサセックスS(G1)での勝利を加えた。

 4歳時には距離を6ハロン(約1200m)に戻してジュライカップに挑み、ネイヴァルクラウンに1½馬身差をつけて優勝して、関係者の大胆な決定は報われることになった。このキャリアベストの活躍により、公式レーティングは自己最高の119となった。2017年の12月のセールでクールモアのM・V・マグニア氏が600万ギニー(約10億3,950万円)で落札して、欧州セリ史上最高価格馬となったマーシャもこのレーティングを獲得していた。

 アルコールフリーのこれまでの馬主のスタッドマネージャーであるデヴィッド・ボウ氏はこう語った。

 「ほかの誰かがこの牝馬を走らせるときが来たようです。それに彼女は素晴らしい基礎牝馬になりますよ。時期的なことなのです。もし5年早ければ、彼女をセリに上場することはなく、私たちのところで繁殖牝馬として繋養したでしょう。しかしこれで驚きに満ちた旅も終わりとなります。彼女を生産したガブニー家、パークハウスステーブルの皆さん、牧場の皆さん、彼女に騎乗した皆さんに感謝してもしきれないほどです。本当に素晴らしい経験でした」。

 セリに上場されるのが2回目となるアルコールフリーは1回目よりもはるかに実りある結果を出した。1回目は生後10ヵ月の当歳のときに上場された2018年のゴフス社のセリであり、そのときはボウ氏により4万ユーロ(約580万円)で購買されていた。

 ボウ氏はアルコールフリーが購買されたのを目の当たりにした感想としてこう語った。「本当にすごいことです。まったく信じられないくらい感動的でした。どのセリであろうと馬の販売に携わる人々は誰でも同じことをしようとしているのです。そして、時折このようなことが起こり、それも私たちのような者に起こるのは本当に驚くべきことなのです。コツコツ努力するとこんなことが起こりうるということです」。

 「ジェフはここに来たかったようですが来られませんでした。でも彼のおかげなのです。ジェフが当歳だったアルコールフリーの購買にゴーサインを出しましたし、彼女をアンドリュー・ボールディング厩舎に送り込んだのです。ジェフはこのセリをネットで見ていましたが、ここに来ていたとしても彼女につけられた価格に違いはなかっただろうと言っていました。私たちの冒険の美しいエピローグになりました。彼女が素晴らしい基礎牝馬になることを願っています」。

 チャーチタウンハウススタッドが生産したアルコールフリーはプライング(父ハードスパン)の第4仔である。プライングは昨年のゴフス社11月繁殖セールにおいて、BBAアイルランドとユーロン・インベストメンツ社により82万5,000ユーロ(約1億1,963万円)で落札され最高価格馬となっていた。これまで4頭の勝馬を送り出しており、アルコールフリーはルファビュルー賞(L)を制したアレクサンダージェームズに続く2頭目のブラックタイプ勝馬である。

 モハメド殿下に所有され3勝を挙げたプライングは、フライングチルダーズS(G2)3着馬キッシングライツの半妹である。2013年にアルカナ社のセリにおいてBBAアイルランドによりわずか1万2,000ユーロ(約174万円)で購買されたことによりダーレーを離れている。

By James Thomas

(1ポンド=約165円、1ユーロ=約145円)

[Racing Post 2022年11月29日「Alcohol Free to race on in Australia after bringing 5,400,000gns at Tattersalls」]


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