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2022年11月24日  - No.44 - 2

BHA理事会を最終的な意思決定機関とする新たな統括体制(イギリス)[開催・運営]


 BHA(英国競馬統括機構)の理事会は11月14日(月)に合意された新たな英国競馬界の統括体制の一環として、競馬界の最終的な意思決定機関となった。これにより、競馬界が個々の団体の利益よりも大義を優先する戦略を取れるようになることが期待されている。

 新たな統括体制は、ここ数年競馬界を悩ませてきた問題に対応して長期戦略に取り組むため不可欠の基盤と考えられてきた。それらの問題には、国際的に魅力に欠ける賞金・出走頭数の少なさ・優良馬の海外流出などが含まれる。

 そして11月14日(月)の競馬場協会(RCA)の臨時総会において満場一致で提案が承認されたことで、最後のハードルはうまく乗り越えられた。

 昨年からこの提案についての取組みが続けられてきた。2015年に策定されたメンバーズ協定(Members'Agreement)はBHA・競馬場・サラブレッドグループ間の意思決定方法について規定しているが、その協定に含まれる拒否権が発展の妨げになっていると広く認識されるようになっていたのだ。

 新たな統括体制の一環としてメンバーズ委員会と執行委員会は解散した。その代わりに新たに3つの委員会が設置され、これらはBHA理事会に直属する。どのような提言を実施するかについては、多数決によって決定を下すBHA理事会に最終的な決定権がある。

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 新たに設置される商業委員会は、既存の開催日程&資金調達グループ・競走グループ・賭事戦略グループの業務を監督することになる。BHAの上級独立理事であるデヴィッド・ジョーンズ氏が委員長に就任する。同氏は鞭使用諮問委員会(Whip Consultation Steering Group)の委員長を務めたほか、ケンプトン競馬場の裁決委員・馬主・競馬場委員会メンバーでもあった。

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 商業委員会はすでに一度、非公式に会合を開いている。この委員会は、競馬場とサラブレッドグループからのそれぞれ5名のメンバー、BHAのCEOジュリー・ハリントン氏、BHAのCOO(最高執行責任者)リチャード・ウェイマン氏により構成されている。商業的な観点から業界戦略の分野を発展させることを目的としており、競馬商品、競馬のプロモーション、馬主や馬券購入者といった主要関係者に関する提案などに取り組む。

 しかしBHA会長のジョー・ソーマレズ・スミス氏は14日(月)、商業委員会が採決を行わないことを明らかにした。同氏によると、新たな統括体制を構築するプロセスでこの問題は多くの議論を引き起こしたという。その代わり、商業委員会メンバーは自らの見解をBHA理事会に伝えることになる。

 ソーマレズ・スミス氏は、「そうすることで、私たちがBHA理事会として意思決定する際に、当事者それぞれの立場の微妙な違いをよりよく理解できるようになります」と述べた。

 また、公正確保諮問委員会もBHA理事会の直属下に置かれることになった。この委員会は競馬の健全性に関する事柄について執行部に戦略的なアドバイスを提供し、BHA理事会に提言を行う。さらに業界プログラムグループが新たに設置され、馬の福祉・社会的認証・環境サステナビリティなどの分野に関する戦略を担うことになる。

 ハリントン氏はこの合意について、「英国競馬界の将来の繁栄を確かなものにするための業界戦略を策定するにあたり重要なステップです」と述べた。

 そして、「新たな統括体制は進歩を成し遂げられるようにする基盤を提供するだけでなく、競馬の統括機関および規制当局としてのBHAの役割を明確にするものです。競馬場協会(RCA)とサラブレッドグループのメンバーを代表して、この体制が商業的、また戦略的な事柄について情報に基づいたより良い決断を下すことにつながると確信しています」と語った。

 ソーマレズ・スミス氏は拒否権の撤廃が新たな体制にとって不可欠な要素であると考えており、こう語った。「最終的に提言がBHA理事会に上げられることで、難しい決定を下すことが容易になります。これまでの体制では拒否権があることを意識していたため、人々は難しい決断を下すことを避ける傾向が強かったのだと思います」。

 「これで状況が改善することを願っています。まだどのようになるかを見なければならないものもあります。それに関係者によって変わってくるものもあるでしょう。しかし最終的には、今後BHA理事会が決定権を持つことになります」。

 サラブレッドグループの会長であるチャーリー・パーカー氏とRCAの会長であるウィルフ・ウォルシュ氏は、「私たちの利益に反するBHAの決定によって生じる短期的な痛みもあるということが許容されたのです」と述べた。

 しかしパーカー氏は9月に行われた戦略会議(全2日)では行動の必要性が示されていたとし、こう語った。

 「戦略を変え、現在のやり方や売込む方法を変えれば、多少の犠牲は出るでしょうし、感情的なしこりが残ることも誰もが承知しています。だから、あの2日間の戦略会議はとても前向きなものだったのです。なぜなら、会議室にいた全員がそれを信じて、アイデアを受け入れてくれたからです」。

 ウォルシュ氏は、これまで競馬を進歩させようとすることは"糖蜜の中を進むように動きにくいものだった"と表現し、こう続けた。

 「競馬の将来のために中長期的に変更を加えていかなければならないことが実感されたのです。つまり短期的な痛みはおそらくあるでしょうが、それが競馬界のすべての人々に公平に分散されることを願っているのです」。

 「BHAが自ら好きなように行動するということではなく、競馬を支える者のために行動するということなのです。この統括体制は、競馬を支える者が団結して競馬の将来を確かなものにするために何が起こってほしいか、何が起こる必要があるのかを連帯して決定することを可能にします」。

By Bill Barber

(関連記事)海外競馬ニュース 2022年No.37「戦略会議、英国競馬界の抜本的な変革の必要性に合意(イギリス)

[Racing Post 2022年11月14日「'Things have got to change' - BHA board becomes ultimate decision-maker」]


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