TOPページ > 海外競馬ニュース > 米国最高齢サラブレッドとされるラッシュ、39歳で死亡(アメリカ)[その他]
海外競馬ニュース
2022年11月17日  - No.43 - 4

米国最高齢サラブレッドとされるラッシュ、39歳で死亡(アメリカ)[その他]


 元競走馬デッドソリッドパーフェクト(39歳)が11月8日(火)に息を引き取ったと、長年のオーナーであるブリジット・ユーカーズさんが発表した。彼は昨冬、存命する中で米国最高齢とされるサラブレッドとして注目を浴びていた。

 デッドソリッドパーフェクトは、引退競走馬としてのキャリアで"ラッシュ"という名で親しまれていた。ユーカーズさんは11月9日(水)、ラッシュの健康状態は今年の前半は良好だったが、その後いくつかのダメージを受けたと語った。夏に転倒して頭部に軽傷を負い、放牧地での長年の仲間だったクォーターホース、カウボーイ(25歳)を老衰で失い、秋の初めには下肢に膿瘍を発症したのだ。しかし、その症状は回復に向かっていた。ところが、ラッシュは変な格好でころんだせいか、11月8日(火)の朝、馬房の中でも外でも立ち上がれなくなってしまった。そして安楽死措置が取られることになった。

 ユーカーズさんは「終わりに近づいていることは分かっていました。だけど、もう少し時間があればいいのにと思っていました」と語った。

 1983年5月4日生まれのラッシュの寿命は39歳と188日だった。インターネットのさまざまな情報源によると、サラブレッドの平均寿命である25〜28歳をはるかに超えるという。米国ジョッキークラブでは、すべての馬主から死亡届を出してもらうのが困難であることもあり、サラブレッドの最高齢記録は残されていない。しかしラッシュが米国の最高齢記録を打ち立てたと広く信じられている。

 プロスペクトポイントがサラブレッドの最高齢記録の米国基準とされていた。2016年9月23日に死んだこの馬の寿命は38歳と203日だった。海外では40代前半まで生きたサラブレッドが報告されており、その中には日本の2頭が含まれる。

 一般的にほかの馬種はサラブレッドよりも長生きである。

 ケンタッキー州のプレストン・マッデン氏により生産されたデッドソリッドパーフェクト(父レイズアカップ 母ケイムイエン 母父オールドタイムズ)は黒鹿毛であった。晩年に芦毛のようになったが、ユーカーズさんが推測するところによると、牡系にグレイゴースト(灰色の幽霊)の異名をとった名馬ネイティヴダンサーがいることで芦毛になる素質があったのではないかという。

 1984年キーンランド9月1歳セールで、マッデン氏が上場したデッドソリッドパーフェクトをジョン・フォート氏が6万ドルで購買した。フォート氏のピーチトゥリーステーブルに所有されたこの馬はロバート・クレサリス調教師(メドウランズ競馬場)により手掛けられ、1986年12月にジュリー・クローン騎手を背に1勝を挙げた。その後、馬主でもあるルイス・ガリーナ調教師(ロッキンガムパーク競馬場)のもとに転厩して、1988年1月にキャリア16戦目となる最後の出走を果たした。

 その数年後、ユーカーズさんの両親が当時10代だった娘のために9歳のラッシュを購買した。ラッシュとユーカーズさんは馬術とハンター競技で活躍し、1995年全米チルドレンメダルファイナルや1996年コネチカット州ジュニアメダルファイナルなどに出場した。ラッシュは翌年腱の損傷により競技を引退したが、馬場馬術、そしてトレイルライディングで35歳になる2018年まで活躍し続けたと、ユーカーズさんは語る。

 最晩年になって、ラッシュはその背に人を乗せることはなくなった。しかしユーカーズさんはラッシュを預けているウィンザーハントステーブル(コネチカット州)で、柔軟性と体力を維持するために坂道で引き運動をさせていた。また晩年の10年間は、オーガニックのアルファルファペレット・大麦・燕麦を食べさせていた。

 ユーカーズさんはカウボーイの死後にラッシュに仲間を作りたいと考え、ウィンザーハントステーブルにラッシュと一緒に預けられるように友人の馬、ヴィヴズティアラ(牝15歳)を無料で借用したという。

 ユーカーズさんはこう振り返る。「ヴィヴズティアラはそこに来たとき、ラッシュのことを小さな仔馬だと思ったのでしょう。すぐ近くに来て、彼の耳をくすぐるようなことをするのです。まるで小さな男の子のように扱っていました。ラッシュはといえば、"ヘイ、レディ、僕は39歳ですよ"といった顔をして彼女を見ていましたね」。

 ラッシュはそのような高齢になっても、若馬にありがちな振舞いでオーナーを喜ばせ続けたのだ。

 「彼のために新しい扉を用意しました。それは床まで全開するようになっていて、金属の馬栓棒が付いているのです。彼は頭を下げて、その棒に耳を沿わせることができることを発見し、"いかすね、いかすね"と言っているように聞こえるのです。それが朝私を起こすときのお気に入りの方法になったのです」。

 1999年からラッシュを診てきた獣医師、マイケル・スチュアート氏をユーカーズさんは絶賛している。彼女によると、彼は火曜日の朝に立てなくなったラッシュに立ち会うためにいくつかの仕事を延期したという。ユーカーズさんとその母親、そしてスチュアート氏は何時間もかけてラッシュを助けようとしたが、馬はみるみる発熱し、疲労の兆候が見えてきた。

 ユーカーズさんはこう述べる。「半分立ち上がったかと思うと、半分座り込むといったことを繰り返しました。ただスチュアートさんのほうを見て、『あれですよ。もうここまでということであれば、それで大丈夫です』と言いました。彼は少し考えていましたが、『もうこの辺で手を引きましょう』と言ったのです」。

 彼女はラッシュの活気ある精神を心に留めている。

 「長年サラブレッドとともに過ごしてきて学んだことの1つは、"多くを求めすぎてはいけない"ということです。それでも彼らは頑張ってくれて、心を尽くしてくれるのです」。

 「彼に多くを求めすぎているのではないかと心配になり始めました。だからその時点で、旅立たせてやりました。私も母もスチュアートさんも彼に話しかけました。撫でて落ち着かせたら、彼はとても安らかに眠りについたのです」。

 彼女はラッシュと過ごした30年間を振り返り、「今はただ、ぽっかりと大きな穴が開いているように感じます」と言った。

 そして、コネチカット馬火葬サービスからラッシュの遺骨が届けられたら保管するだろうと述べた。

 ヴィヴズティアラはオーナーのもとに戻るだろう。ラッシュしか所有していなかったユーカーズさんは、しばらく時間をかけて今後の馬に関する計画について考える。彼女は"エンジェル・ホーシズ(Angel Horses)"というコネチカット州の組織でボランティアをするつもりだ。高齢馬のために居場所を提供し、馬が関わる活動を提供する組織である。

 ユーカーズさんはラッシュについて、「彼と一緒に過ごすことができて本当にラッキーでした。真のパートナー関係を築けましたし、一生大事にすることになる特別でユニークな経験でした」と語った。

By Byron King

(関連記事)海外競馬情報 2022年No.1「39歳のサラブレッド、ラッシュはまだまだ健在(アメリカ)

[bloodhorse.com 2022年11月10日「Senior Thoroughbred Dead Solid Perfect Dies at Age 39」]


上に戻る