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2022年11月02日  - No.41 - 3

香港の現役馬1166頭の中にいるたった3頭の牝馬と血統について(香港)[生産]


 ツイッターが嫌いだ。というか、毛嫌いしている。とめどもない自己愛・自惚れ・おべっか・皮肉のオンパレードのように見える。面白いと思うアカウントは1つか2つしかない。

 数年前に嫌々ながら登録したのだが、最悪なのはふとした時に、自己愛やつまらぬこだわりの渦に吸い込まれてしまうことだ。だから今ではこのSNSでのやりとりは最小限にとどめるようにしている。

 いやはや、イーロン・マスク氏が買収契約へのサインのインクが乾き次第ツイッターを閉鎖するとしたら、シャンパンを開けてお祝いするだろう。きっと社会のためになることだろうから。結論から言うと、ツイッターを好きにはなれない。

 とは言っても、時々じっくり考えさせられる意見や耳よりな役立つ情報を掲載する稀有なツイートがあり、そのおかげでSNSの片隅に身を置くことを価値があることとは思えないものの、少なくとも我慢できるようなものにしてくれる。

 週末にワールドホースレーシング(World Horse Racing)はそのようなツイートをした。6万人のフォロワーに向けて"香港には現役馬1,166頭がいるが牝馬はたった3頭"と言ったのだ。10年ぐらい前まで多くの障害競走の調教師の管理馬に見られた性別の不均衡よりもさらに大きい。

 もちろん香港競馬はせん馬が中心だとすでに承知していた。香港では調教施設が狭くて気性面の問題が看過されず、また牧場のために物理的スペースがとれないのでサラブレッド生産が存在しないのだ。

 それにしても牝馬がたった3頭というのはまったく衝撃的な数字であり、3頭の血統を調べてみる価値があると考えた。それらの牝馬が香港で競走生活を送るという特殊な要求に対応できると考えられてきたということは、それらの牝馬のファミリー(牝系)への賛辞だったと言えるからである。

 香港で最も有名な牝馬はボンズアパーラ(Bon's A Pearla)である。2022-23年シーズンに豪州から香港に輸出された馬の中で牡馬・牝馬を問わず最も高い評価を受けている。ケヴィン・コーステンズ厩舎のボンズアパーラはコーフィールド競馬場でG2競走を制し、オーストラリアンギニー(G1 フレミントン)で3着に入った後、6月に香港のデヴィッド・ヘイズ厩舎に移籍した。

 ボンズアパーラは、手頃な種牡馬ボンホーファ(Bon Hoffa 父ビロングトゥミー)の競走年齢に達した10世代の産駒の中で重賞を制した2頭のうちの1頭である。もう1頭は父に倣ってサールパートクラークS(G1 コーフィールド)を制したボンオーラム(Bon Aurum)である。この"ボン"を冠する3頭はすべてケンキングサラブレッズ(Ken King Thoroughbreds)に所有されているか、以前所有されていた。

 ボンズアパーラもケンキングサラブレッズにより生産された。母は勝馬トレジャーアイランド(父デュポース)である。トレジャーアイランドは、香港でクラス2競走などを制して4勝を挙げたリファインドトレジャーの半姉だ。その事実により、ボンズアパーラは香港行きの切符を手に入れたのだろう。

 香港にいる3頭の牝馬の中でもう1頭の興味深い馬は、日本から輸入されたドラゴンレディ(牝3歳 芦毛 未出走)である。こちらもヘイズ調教師に管理されている。

 ドラゴンレディ(父ロードカナロア)は、香港でクラス4競走で2勝を挙げたエイチケードラゴンの全妹であり、ニュージーランドでG3競走を制したスウィートリーダーの半妹である。これら3頭の母スウィートレディ(父エンコスタデラゴ 母G1・3着内馬スウィフトサインド)はG2勝馬ルザガレッタ(Le Zagaletta)の半妹となる。

 ロードカナロアはアーモンドアイやサートゥルナーリアなどを送り出した優秀な種牡馬であるだけでなく、2年前に香港スプリント(G1 シャティン)で優勝した輝かしい牡駒ダノンスマッシュを通じて、香港を得意とする産駒を送り出すことも見せつけた。

 ロードカナロア産駒が英国やアイルランドで出走することが待ち遠しい。

 クールモアはロードカナロア産駒を欧州で最も多く所有している。トップクラスもしくは縁の深いガリレオの牝馬の数頭のアウトクロスとして、ロードカナロアを交配相手として選んできたからだ。そして2歳牝駒メイビージャストメイビー(父ロードカナロア 母プロミストゥビートゥルー)はエイダン・オブライエン調教師に手掛けられまずまずの成績を残している。母プロミストゥビートゥルーはG1・3着内馬であり、メイビー(G1馬。サクソンウォリアーの母)の全妹である。もう1頭のバリードイル(クールモアの調教拠点)にいる牝駒ビギニングス(父ロードカナロア 母は優良牝馬ウィンター)は9月のデビュー戦(ネース)で期待できる4着に入った。

 ほかにも「父ロードカナロア、母父ガリレオ」の2歳牡駒が2頭いる。アマリナーズテイル(母フラッター)とボールズブリッジ(母ハッピリー)である。オブライエン調教師が彼らを出走させる日が待ち遠しい。

 英国にもワクワクするようなロードカナロア産駒がいる。メリーフォックススタッドが生産した牡駒ファイブタウンズ(ウィリアム・ハガス厩舎)は10月19日、ケンプトン競馬場のレースで末脚を炸裂させて優勝した。母ギルティトゥウェルブ(Guilty Twelve 父ジャイアンツコーズウェイ)はG3勝馬である。

 とにかく、ボンズアパーラとドラゴンレディについて知った今、香港の2022-23年シーズンの経過を示すことは興味深いものになるだろう。なぜなら香港で出走する数少ない牝馬を過小評価すべきではないと歴史が証明しているのだから。

 デヴィッド・ヘイズ調教師はすでに1頭の牝馬を香港ダービーに送り込み優勝している。この快挙は2003年にエレガントファッションにより成し遂げられた。また、香港のトニー・ミラード厩舎の牝馬スウィートサネットが2011年キングズスタンドS(G1 ロイヤルアスコット開催)でプロヒビットとスターウィットネスに次ぐ3着に健闘したことも忘れてはならない。

 もう少しツイッターを続けて、香港競馬をテーマにしているアカウントをフォローして行くかもしれない。どのようなことが行われているのか、情報についていくために。

By Martin Stevens

[Racing Post 2022年10月26日「I hate Twitter but it reveals only three of Hong Kong's 1,166 horses are female」]


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