バーイード、ラストランは凱旋門賞ではなく英チャンピオンS(イギリス)[その他]
バーイードは2022年の大半において、サー・ヘンリー・セシル厩舎の傑出馬フランケルと比較されてきた。そしてフランケルと同じレースで競走生活を終えることになる。あるブックメーカーはバーイードもフランケルと同様に極端に低いオッズで送り出されるかもしれないと予想している。
バーイードは無傷の10連勝中で、直近では英インターナショナルS(G1 ヨーク)で驚異的なパフォーマンスを見せたことで、凱旋門賞(G1 10月2日 ロンシャン)への出走が検討されてきた。しかしウィリアム・ハガス調教師と馬主のヒッサ王女をはじめとする関係者は、英チャンピオンS(G1 10月15日 アスコット)をバーイードのラストランにすることに決定した。2012年にフランケルもラストランとしてこのレースに出走し見事に優勝した。
フランケルは英チャンピオンSに単勝1.18倍で出走している。一方、4歳シーズンにフランケルと同じようにロッキンジS(G1)・クイーンアンS(G1)・サセックスS(G1)・英インターナショナルSを制してきたバーイードは単勝1.33倍(コーラル社)で華やかに競走生活を締めくくろうとしている。ただし、オッズはさらに下がるかもしれない。
コーラル社のデヴィッド・スティーヴンス氏は、「バーイードは英チャンピオンSで意のままのレースをするでしょう。対戦相手によっては、出走直前オッズがフランケルの1.18倍にかなり近づくかもしれません」と語った。
コーラル社は9月14日(水)の"バーイード凱旋門賞回避"の一報をうけて、11日(土)に愛チャンピオンS(G1)を制しているルクセンブルクを凱旋門賞の本命(単勝5倍)とした。
バーイードは凱旋門賞で単勝3.25倍とされていたが、出走するには追加登録が必要だった。そのためにはヒッサ王女と亡き父ハムダン殿下が設立したシャドウェルが12万ユーロ(約1,680万円)の追加登録料を支払わなければならなかった。
ハガス調教師はシーズンをとおして、英チャンピオンSが望ましい目標だということをほとんど隠してこなかった。14日(水)の朝は、いつもどおり乗り役のリッキー・ホール氏を背に調教を積むバーイードの姿を見ていた。
ニューマーケットを拠点とするハガス調教師は本紙(レーシングポスト紙)に対してこう語った。「ヒッサ王女やそのチームと協議を重ねてきて、バーイードのラストランは10月15日にアスコットで行われる英チャンピオンSに決定しました」。
「英インターナショナルSでとても印象的な走りを見せたので、当然あらゆる選択肢を検討しました。特に私は、1¼マイル(約2000m)で走らせ続けたいと思っていたので、英チャンピオンSが唯一理にかなった解決策だったのです」。
ハガス調教師は初めてのリーディングタイトルを狙っている。14日(水)にレースが始まる時点では、チャーリー・アップルビー調教師をわずか1万4,000ポンド(約231万円)あまりの差で追っていた。「バーイードが凱旋門賞に出走しないことにがっかりする人がたくさんいることは理解できますが、両方に出走させることはできません。アスコットに出走させることになるでしょう」とハガス調教師は付け加えた。
バーイードはデビュー戦と2戦目はデイン・オニール騎手を背に楽勝を収めたが、それ以降はずっとシャドウェルの主戦、ジム・クロウリー騎手が手綱を取っている。
クロウリー騎手はこの決定を支持した。未経験の1½マイル(約2400m)をおそらく重馬場で走ることは、バーイードには合わないだろうと主張する。なお、バーイードの父シーザスターズは2009年凱旋門賞で壮大な勝利を収めている。
クロウリー騎手はこう語った。「ウィリアムはそのことについて聞いてきましたね。"騎手として凱旋門賞を勝ちたいだろうが、この馬でねらうのがいいのだろうか?"と」。
「アスコットに行くのが正しいという決断を評価しますし賛成です。もし凱旋門賞に向かうのであれば、追加登録しなければならず、馬は重馬場の1½マイル(約2400m)で苦戦するでしょう。過去10年間のうち6回が力のいる馬場でした。人々は彼が負けるのを望んでいるかのようです」。
「私だってバーイードが凱旋門賞を勝つのを見てみたいと思いますよ。それは素晴らしいことでしょう。だけど、アスコットを目指すことには意味があるのです。どのレースに出走するにしても、彼のような馬にめぐり会うことはないでしょう。スーパースターなのです」。
かつてシャドウェルの騎手を務め、現在は経営陣の一員であるリチャード・ヒルズ氏もアスコット行きを支持している。エリザベス女王が生産して競走させた牝馬ハイトオブファッションのファミリー(牝系)に属するこの牡馬にとって、ふさわしいラストランになるだろうと信じているのだ。
「ウィリアムは昨夜、バーイードのことをヒッサ王女に話したそうです。ウィリアムがバーイードを素晴らしく管理してきたのです。アスコットへ向かうことは彼らが決めたことであり、私はそれを全面的に支持します。レースを楽しみにしています。英国で競走生活を終えられるのは素晴らしいことです。英チャンピオンズデーはそれにふさわしい日になるでしょう」。
「その前に彼を見たい人がいるならば、9月18日(日)の午前8時から行われるニューマーケットのオープンデー(厩舎開放日)にいらっしゃるとよいでしょう」。
By David Milnes
(1ユーロ=約140円、1ポンド=約165円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2022年No.32「バーイード、凱旋門賞出走の可能性大だが馬場状態次第(イギリス)」