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2022年09月08日  - No.33 - 3

ド・ブロムヘッド調教師の13歳の息子ジャックがポニーレースで死去(アイルランド)[その他]


 ヘンリー&ヘザー・ド・ブロムヘッド夫妻の非凡な13歳の息子、ジャックの悲劇的な死をうけて、競馬界、そしてスポーツ界全体に堪えがたい哀しみが漂っている。ジャックは9月3日(土)、グレンベイ競馬&ポニーレース(ロスベイビーチで開催)で不慮の落馬事故により亡くなった。

 4日(日)に発表された家族の声明で、ジャックは「私たちの人生に最良の形で感動を与えてくれたかけがえのない子」と表現されており、悲嘆にくれた両親は「私たちの心は打ち砕かれています」と述べている。

 スポーツ界全体からポニーレースを愛したジャックに追悼の言葉が寄せられている。家族の友人であるピーター・モロニー氏はジャックのことを「人生を愛するとても外向的な子」と述べた。また、ギギンズタウンハウススタッドを経営するエディ・オリアリー氏は「ジャックはポニーレースのファンから"未来のスター"ともてはやされた"実に愛らしい青年"だった」と追悼した。

 ジャックはミアとは双子の兄弟であり、ジョージアの兄だった。さまざまなTVインタビューに出演したことですでに競馬ファンのあいだではおなじみの若者だった。ウォーターフォードにある父親の厩舎のハニーサックル・アプリュタール・ミネラインドー・ミネラタイムズといった馬が大活躍を果たしていたからだ。

 ジャックはいつも父のそばでレースを見ている、感じが良くて謙虚な少年として知られていた。2年ほど前からポニーレースで独自のキャリアを築き始め、この夏には何度か勝利を挙げて強い印象を残していた。

 9月3日(土)には歴史ある2日間のイベント、グレンベイ競馬&ポニーレースに参加していた。

 ジャックは第5レースで騎乗していた。コーナーを回っているときに馬が海の方へよろめき、共に転倒したが、彼の上に馬が倒れ込むことになった。ドクターヘリが到着し、負傷した騎手を救護しようとしたが、救急隊員の最大限の努力にもかかわらず、ジャックはその場で息を引き取った。

 ド・ブロムヘッド厩舎のスーパースター、ハニーサックルの馬主ケニー・アレクサンダー氏のレーシングマネージャーを務めるモロニー氏はこう語った。「ジャックは堂々とした性格の子でした。いつも笑顔で、競馬・馬・ポニーを愛していました。ポニーレースこそが彼の人生で、そのために精いっぱい生きていたのです。とても外向的で、人生を愛していましたね。今、みんなが感じていることは、"考えられない"という言葉でしか表せないと思います」。

 「ジャックとミアは、ハニーサックルを支えるのに中心的な存在でした。シーズン中ハニーサックルが走るときそこにジャックがいないことを、とくに寂しく感じることでしょう」。

 「ジャックの競馬への愛を表わす最高のエピソードの1つは、ヘンリーがここ数年話していたことだと思うのです。ジャックが夜な夜などんなふうに過ごしているか教えてくれました。どんなレースが放映されていてもジャックはソファの背もたれの上に乗ってゴールするまでを演じていたそうです。そしてゴールの瞬間にはジャックがまくしたてる音しか聞こえなくなるほどだったと言うのです」。

 「一家は昨年のクリスマスに、ジャックに木馬をプレゼントしました。ジャックは大喜びでした。ある日私たちが集まっているときにレイチェル・ブラックモアが彼に木馬のレッスンをしてあげていたのを覚えています。素晴らしいことでした」。

 グレンベイ教会での日曜朝のミサでは、ド・ブロムヘッド一家や友人のために祈りが捧げられた。ロスベイビーチにはジャックのことを偲ぶ多くのメッセージ・花・テディベアなどが置かれた。

 オリアリー氏はこう語った。「ジャックについて話す誰もが、"未来のスター"だと言っていましたね。実に愛らしい青年でした。大変つらい思いをされているご家族やご友人にとても同情しています」。

 ホースレーシングアイルランド(HRI)のCEOスーザン・イード氏は、ジャックと親密な人々に哀悼の意を表し、ポニーレース仲間や友人に対してHRIがカウンセリングサービスを支援することを明らかにした。

 「ジャックはまだ13歳でしたが、競馬サークルではすでに絶大な人気を誇っていました。本日この呆然とさせる惨劇の中で、私たちはご家族、ご友人、ポニーレース仲間、そして彼に影響をうけたすべての人々に思いを寄せています」。

 「HRIの教育・訓練部門(equuip)は産業支援プログラムを通じてジャックのポニーレース仲間や友人にカウンセリングを提供するために支援します」。

 最近引退したチェルトナムゴールドカップ&グランドナショナル優勝ジョッキー、ロビー・パワー氏は、ド・ブロムヘッド厩舎と付き合いがあったことで、ジャックと親しくなった。そして彼のホースマン精神と立ち振る舞いを称賛した。

 ド・ブロムヘッド調教師をレースプランナーとして支えるパワー氏はこう語った。「ジャックは愛らしい青年であると同時にとても有能な騎手でした。ヘンリーのところで一緒に何度か乗りましたが、ジャックがどれだけ競馬と馬を深く愛しているかが伝わってくるのです。競馬に対して途轍もない情熱をもっていましたね。ド・ブロムヘッド一家のことを思って心を痛めています。大変同情しています」。

 伝説のアイルランド人ラグビー選手、ローナン・オガーラ氏もSNSで次のような追悼メッセージをツイートした。「ド・ブロムヘッド一家に思いを寄せ祈っています。13歳の少年が愛していることをしながら天に召されました。ご家族に同情しています。心が痛みます」。

 アイルランド騎手協会(IJA)の声明にはこう記されている。「ポニーレース出身者が多い騎手コミュニティーの結束は固く、気の合う仲間だったジャック・ド・ブロムヘッドの悲劇的な死をうけ彼らはひどく落ち込んでいます。ジャックの大切なご家族ととても多くのご友人に心からのお悔やみを申し上げます」。

 アイルランドでは予定されていた4日(日)のレースが取りやめとなり、5日(月)にゴールウェイ競馬場で競馬が再開される。ド・ブロムヘッド調教師は土曜日の朝、悲劇的な事故が起こる前にウォッチハウスクロス(Watch House Cross)とファンジオデヴァシー(Fangio De Vassy)の出馬投票を行っていた(訳注:いずれの馬も出走しなかった)。

 ゴールウェイ競馬場のマイケル・モロニー場長は、競馬場は5日(月)に話し合いを経て、悲劇的なジャックの死を"ふさわしい形"で悼むことになるだろうと述べた。4日(日)のヨーク競馬場の開催とポール・ニコルズ厩舎のオープンデー(厩舎開放日)では、1分間の黙祷が捧げられた。

 ニコルズ調教師はこう語った。「ヘンリーとヘザーにとって非常に気の毒なことです。うちの子どもたちはみんなポニーレースで乗っていて、娘のザラは3日(土)にバーリー(Burghley)のシェトランドポニーレースに出場しました。誰だっていつもそのような知らせがくるのを恐れています。これは事故であり、競馬界の誰もが悲しんでいると思います」。

 ジャックは、2021年にトーントン競馬場でアマチュア騎手のローナ・ブルック氏が落馬事故で亡くなって以来のアイルランドの競馬場での犠牲者となった。2011年には、ダンガーバンのポイント・トゥ・ポイント競走でロバート&メアリー・タイナー夫妻の一人息子ジャックが落馬による負傷のため亡くなっている。

 また記録破りのアマチュア騎手、J・T・マクナマラ氏は2013年チェルトナムフェスティバルで落馬して人生を変える大怪我を負い、その3年後の2016年に亡くなった。

 ジャックは6日(火)の午後3時から午後7時まで自宅で安置され、その間だけ弔問が受け付けられる。ミサは7日(水)の午後12時にバトラーズタウンの聖母マリア降誕教会で行われる。

By Richard Forristal and Mark Boylan

[Racing Post 2022年9月4日「Tributes paid after tragic loss of 'larger-than-life' teenager Jack de Bromhead」]


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