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2022年09月08日  - No.33 - 2

トルカータータッソ、バーデン大賞でメンドシノの2着(ドイツ)[その他]


9月4日(日)第152回バーデン大賞(G1 バーデンバーデン)

 メンドシノに惜敗したトルカータータッソは、凱旋門賞(G1)の栄冠を守るためにパリへ向かう予定だ。

 審議が終わるまでの苦悶の10分間、鞭を6回使用したことで(制限回数を1回超過)、フランキー・デットーリ騎手は凱旋門賞でトルカータータッソだけでなくどの馬にも乗れないのではないかと危惧された。

 デットーリ騎手は14日間の騎乗停止処分を言い渡されたあと、欧州最高峰のレースで騎乗できないと確信し、観衆とバーデンバーデン競馬場の裁決委員を残して立ち去った。この一報を聞いて、普段は冷静なマルセル・ヴァイス調教師は馬主・調教師用ラウンジの階段を駆け上がりトルカータータッソの馬主を探し回った。

 この騒動はまず裁決委員の秘書によって沈静化が図られ、その後デットーリ騎手本人によって収められた。元G1ジョッキーのフィリップ・ミナリク氏が気を利かせて、騎乗停止期間は凱旋門賞前日に終わることを教えてくれたのだ。

 ニューマーケットのケンブリッジシャー開催で一切騎乗できなくなるものの、ほっとした様子のデットーリ騎手はこう語った。「勘違いしていました。騎乗停止期間は9月18日(日)に始まるのですね。今回すっきりしたレースにならないことは分かっていました。だから自らレースを作っていこうと思って残り800mの地点で仕掛けていったのです。彼は実力を発揮できませんでしたね。重馬場と前方でバテる馬が必要なのです」。

 「決して悪い走りっぷりではありませんでしたよ。だけど彼のスタイルに合ったレースのほうが良くて、4頭立てではだめですね。レースを作っていくうえで、できる限りのことはしたつもりです」。

 デットーリ騎手がトルカータータッソに騎乗することになったのは、メンドシノの馬主ハンス-ゲルト・ウェルニッケ氏(90歳)が、これまでトルカータータッソの主戦を務めてきたルネ・ピーヒュレク騎手と契約していたからだ。

 メンドシノはすでに凱旋門賞に登録しているが、今回トルカータータッソを追い詰め破ったことで、パリ遠征をより現実的なものにした。トルカータータッソの関係者も今回の結果を意識することになるだろう。

 デットーリ騎手のレース直後の記者会見には、馬主であるアウエンケル牧場のカール-ディートリッヒ・エレブラッケ氏も立ち会い、ジョッキーに「トルカータータッソのことをどう思いますか?」と尋ねた。

 デットーリ騎手の回答は、凱旋門賞(10月2日)にはピーヒュレク騎手が使えないことをすでに覚悟していたエレブラッケ氏を安心させるものだった。

 「フランスは重馬場のレースでもまずまずのペースですから十分戦えますよ。ルネの馬が出走するなら、私は空いていますので、話は決まりですね」。

 このコメントのあと、2人は握手を交わした。

 このステップレースの決着はわずか頭差だったにもかかわらず、パディパワー社はトルカータータッソの凱旋門賞でのオッズを7.5倍から11倍に引き上げた。

 ヴァイス調教師にとって、自らが手掛けた最高の馬が熾烈になりそうな凱旋門賞にどう臨むかが試されることになる。トルカータータッソはミュルハイムの芝の調教走路に戻って、おそらく現役最後となる一戦に備えて万全の態勢を整える。

 メンドシノは間違いなくキャリア最高のパフォーマンスを達成した。昨年のバイエルン大賞(G1)では、ドイツのミドルディスタンス競走を総なめにしたアルピニスタに次ぐ2着に入っていた。

 ピーヒュレク騎手はこう語った。「3ヵ月もの長期休養明けでしたし、ライバルは3頭だけでしたので、最後まで待とうと思っていました。そのように乗るように努めて、ほかの馬が迫ってきたときに狙い撃ちにしたのです」。

 メンドシノを手掛ける自らのパートナー、サラ・スタインバーグ調教師に、ピーヒュレク騎手は賛辞を送った。彼女はドイツ最大の(3歳以上の)競走でG1初勝利を達成したのだ。

 ピーヒュレク騎手は、「彼女は毎日乗っていてメンドシノのことをよく理解しています。それに対して私は追い切りで2回乗っただけです」と述べた。

 4週間後のロンシャンで起こりそうなことに関して、ピーヒュレク騎手は、メンドシノ(牡4歳 父アドラーフルーク)の凱旋門賞での勝算はともかくも、騎乗契約については毅然たる態度を貫いていた。

 「オーナーと契約しているのでメンドシノに乗らなければなりません。今日もそのために騎乗しました。凱旋門賞について考えていきます。今回は3ヵ月の休養明けのハードな一戦となったので、レース後の彼の様子も見ていきたいです」。

 デットーリ騎手は10年のブランクを経てバーデンバーデンに戻ってきた。今回の遠征はドイツのこの温泉地での最良の思い出とはならないだろう。ただかろうじてではあるが、7回目の凱旋門賞制覇という夢をつなげることができた。

By Scott Burton

[Racing Post 2022年9月4日「Frankie Dettori handed 14-day ban after Mendocino shocks Torquator Tasso」]


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