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2022年09月08日  - No.33 - 1

無敗のフライトライン、パシフィッククラシックを19¼馬身差で制覇(アメリカ)[その他]


 ジェーン・ライアン氏はデルマー競馬場のグランドスタンドに立ち、自らが生産・育成した馬、フライトラインがパシフィッククラシック(G1 9月3日)で栄光に向けて最終ターン(3・4コーナーのあいだ)を回るのを見ていた。

 ライアン氏はこう語った。「泣いてしまわないようにただ我慢していたのです。そうしないとゴールするときの彼の姿が見られないでしょうから。これほどの勝利は期待していませんでした。願ってもないことです。それが現実のものとなり、彼がこれほど成長して、どんどん強くなっていくのは、まさに奇跡としか言いようがありませんね」。

 ライアン氏はウィナーズサークルで赤いバラの花束を手にし、フライトラインの何人かの共同馬主から代わる代わる祝福を受けた。彼女はフライトライン(父タピット 母フェザード 母父インディアンチャーリー)をケンタッキーで生産し、手塩にかけて育てた。そのような素晴らしい血統であっても、総賞金100万500ドル(約1億4,007万円)のパシフィッククラシック(約2000m)で観客が目にしたような驚異的なパフォーマンスをするとは想像していなかった。

 フライトラインはマイル以上のレースで走るのは初めてである上に、ドバイワールドカップ(G1)優勝馬カントリーグラマーを含む重賞馬5頭を相手にするにもかかわらず、本命とされていた。しかしその走りっぷりは、これまで誰も見たことがないようなものだった。なにしろ、セクレタリアトがベルモントSを31馬身差で制したのは50年近く前のことなのだから。

 フライトラインは発走時に両サイドからぶつかられながらも、スタート直後から積極的に走って行った。そして序盤から外側につけ先頭に立ったが、一団となった馬群が1コーナーに差し掛かるころに、内ラチ沿いを走っていた人気薄のエキストラホープに追い抜かれた。

 フラヴィアン・プラ騎手は落ち着かせるために外を回らせていたが、フライトラインは襲撃を開始した途端に異次元の走りを見せた。そして⅝ポール(残り約1000m)で先頭に立つとその座をもう二度と明け渡さなかった。

 先頭に立つのが早すぎたのだろうか?普通の馬が1¼マイル(約2000m)に臨む場合はそうかもしれない。しかしここはフライトラインだ。彼はストライドを伸ばし、後続との差は1馬身、10馬身、13馬身と広がっていった。6ハロン(約1200m)を1分9秒97で通過したとき、減速していくのではないかと思われたが、その走りっぷりを見ていると、どの馬も相手にならないようだった。

 「最終ターン(3・4コーナーのあいだ)に入ったとき、とても良い走りっぷりだったので、もう少しペースを上げるように合図を送ったのです。どれだけ先行しているか振り返って確かめてすぐに、勝利を確信しましたね」。

 フライトラインがゴールに向かって走ってくるとき観客はどよめき、ジェーン・ライアン氏は涙をこらえようとした。そして後に19¼馬身とされる驚異的な着差でこの馬が決勝線を通過したとき、開いた口がふさがらなかった。プラ騎手がペースを落としたにもかかわらず、フライトラインの勝ち時計は1分59秒28で、2003年に同じレースでキャンディライドが達成したレースレコード及びコースレコードとの差はわずか0.17秒だった。2着はカントリーグラマーでその7馬身うしろの3着にロイヤルシップが入った。

 今回の着差は、2019年にアクセラレイトが打ち立てたパシフィッククラシックの最大着差12½馬身を消滅させた。アクセラレイトはフライトラインと同じくジョン・サドラー厩舎の所属馬で、サドラー調教師は過去5回のパシフィッククラシックで4勝を果たしたことになる。

 共同馬主のコスタ・フロニス氏は着差が発表されるのを聞き、笑みを浮かべたが、「おやっ、アクセラレイトの記録が消えてしまった。かわいそうな馬だなぁ」と言った。

 フロニス氏は一族が経営するフロニスレーシングの名義でアクセラレイトを所有していた。コスタ&ステファニー・フロニス夫妻、そして兄弟のピート・フロニス氏がライアン氏のサマーウィンドエクワイン、シエナファーム、ウエストポイント・サラブレッズ、ウッドフォードレーシングと共同でフライトラインを所有している。

 フライトラインはこれまで5戦5勝で一度も土をつけられたことがない。4歳馬としては出走経験が少ないが、それは3歳シーズンの4月まではいくつかの問題のために出走できず、今年の前半も馬体に小さな不具合があったからだ。サドラー調教師は以前から、この馬の驚異的なスピードを生かすことが重要だと話していた。

 「とても優秀な馬なので、少し間隔を空けて出走させなければなりません。特殊なカテゴリーに属する馬です。この馬のことは熟知しています。次走までにエネルギーを蓄えることが彼にとってベストだと心得ています。私たちは皆、彼が走るところをもっと見たいと思っていますが、これほどのパフォーマンスを見せるならば、多く走る必要はないでしょう。出走したレースを楽しめばいいのです」。

 フライトラインはパシフィッククラシックでの勝利でBCクラシック(G1)への出走権を獲得した。サドラー調教師は、この馬をBCクラシックの最後のステップレースとなるオーサムアゲインS(G1 10月1日 サンタアニタパーク)には出走させず、BCクラシックに挑戦させるという方針をほぼ固めている。

 サドラー調教師は初めて見たときからフライトラインに感銘を受けていた。サドラー厩舎のトップランナーの多くを購買してきたデヴィッド・インゴード氏が2019年、ファシグ・ティプトン社サラトガセール(ニューヨーク州サラトガスプリングス)で1歳のフライトラインを100万ドル(約1億4,000万円)で購買するよう助言していたのだ。インゴード氏はウエストポイント・サラブレッズのためにこの牡馬を購買し、すぐに現在の共同馬主が集まった。

 フライトラインがこれまで挙げた5勝の合計着差は62 ¾馬身である。


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By Tracy Gantz

(1ドル=約140円)

[bloodhorse.com 2022年9月3日「Flightline Spectacular in Pacific Classic」]


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