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2022年09月01日  - No.32 - 2

2023年競馬開催日程の発表をうけ競馬場と調教師が対立(イギリス)[開催・運営]


 競馬場協会(Racecourse Association:RCA)のCEOデヴィッド・アームストロング氏は、2023年競馬開催日程が2022年とほとんど同じであっても英国競馬界は成功し続けるだろうと述べた。一方、ラルフ・ベケット調教師はRCAを「進歩すべきときに梃子でも動かない」と評している。

 8月24日(水)、2023年競馬開催日程と同時に最低賞金額引上げが発表された。声明によれば、トップレースを国際的に盛り上げ、英国から高レーティングの馬が流出するのを防ぎ、格下レースの価値を向上させることを目指しているという。

 2023年競馬開催日程は1,478開催日からなり、2022年競馬開催日程よりもわずか4開催日少ないものとなっている。

 全国調教師連合会(NTF)の会長を務めるベケット調教師は本紙(レーシングポスト紙)に対し、「最低賞金額の引上げは歓迎すべきことですが、競走数については緊急に対処するべきです。競走馬の頭数に適合させることこそ、競馬開催日程において言うまでもなく根本的に必要なことです」と語った。

 英オークス(G1)・英セントレジャーS(G1)・愛ダービー(G1)などを制しているベケット調教師は以前RCAと舌戦を繰り広げたことがあり、競馬ジャーナリストのニック・ラック氏のポッドキャストでこう語っている。「ピーター・サヴィル氏の競馬の再構築を支援する提案は、極めてよく考え抜かれたものでありとても健全です。しかし既得権益者がこの計画を部分的に阻止しようとしていると私は危惧しているのです。なぜなら彼らはそうすることが都合が良いと信じているからです」。

 「RCAは進歩すべきときに梃子でも動きません。この5年間RCAと関わってきた誰もが同意すると思います」。

 当然のことながら、アームストロング氏はそうした意見を否定した。「多くの競馬場関係者がサヴィル氏の提案を実現するために携わっています。あの提案は支持されているのです。私も本当に良いアイデアがいくつか盛り込まれていると思います。だから、9月19日と20日に開催される競馬産業の戦略見直し会議で議論することを楽しみにしています。RCAが変化に反対しているとはもってのほかです。私たちは適切な変化を求めているだけです」。

 「2023年競馬開催日程については間に合いませんでしたが、競馬番組はまだ発表されていないので、新しいアイデアを盛り込むチャンスはまだあります」。

 「BHA(英国競馬統括機構)はいくつかの変更案を提示しています。その一つひとつは小さいものですが、ひとまとめにすると貴重なものです。しかし調教師たちはそのことについて議論したがらなかったのです」。

 なぜそう考えたのかを尋ねられたアームストロング氏は「それはラルフに聞くべきでしょう」と付け加えた。今シーズン競馬界がどれほど出走頭数の少なさによって苦境に立たされているかを彼は認識している。

 「競馬開催日程が発表された途端そこで終わりになるとは、ちょっと不可解な話ですね。サンデーシリーズとレーシングリーグを除いた開催日程はほぼ決定されていますが、競馬番組は進行に応じてかなり大幅に変更できるものです」。

 「競馬番組に思慮深い調整を加えれば、出走頭数の問題に対処するチャンスが出てくるでしょう。来年の気候がどのようなものか分かりませんが、1月~5月に中止となるレースが50も少なかったことが、1レース当たりの平均出走頭数に大きく影響したのだと思います」。

 アームストロング氏は、BHAとウェザビーズ(Weatherbys)が競馬産業のIT化と管理体制を一新するために昨年設立した共同事業、レーシングデジタル(Racing Digital)は、新しいデータの流れを生み出すのに役立つだろうと考えており、出走頭数の問題についてこう語った。「私は白熱したレースの必要性についてよく取り上げています。なぜならそれが多くのものごとに関係してくるからです。もしレースが盛り上がりに欠けば、賭事収入や競馬場の入場者数を失うというリスクにさらされます」。

 「現在、経済危機の真っただ中です。そのため1つの効果を抜き出すのは難しいのですが、レースの盛り上がりの問題は競馬にとって重大なものだと考えます」。

 「RCAがある種の妨げになっているという考えはまったく正しくありません。どの団体よりも革新的でありたいと思っており、数々の競馬場が革新に関する良案をたくさんもっています。RCAは決して変化に反対しているわけではありません」。

 「2024年に向けて、かなりエキサイティングで革新的な変化が見られると楽観しています。とりわけピーター・サヴィル氏の提案を考慮するという点についてはそうです。また、9月の戦略見直しにおける障害競走の再検討ももう1つの要素です。そこから生み出される取組みにより、2024年競馬開催日程は間違いなく変化すると期待しています」。

 「2024年の開催日数は減少、増加、もしくは同数となるかもしれませんが、違った方法でというか、より賢明な形で施行されるでしょう。時々、開催日数もしくは競走数という事柄を評価することにとらわれがちですが、それだけが唯一の方法というわけではありません。私たちは適切な日程で適切な競走を適切な馬のために施行しているのでしょうか?もっと良い方法があるはずです」。

 BHAは競馬開催日程と同時に、平地競走の最低賞金額の全面的な引上げを発表した。3歳以上のG1競走の最低賞金額を20万ポンド(約3,200万円)から25万ポンド(約4,000万円)に引き上げ、クラス6競走の最低賞金額を4,300ポンド(約69万円)から5,000ポンド(約80万円)に引き上げる。

 同様に障害競走についても最低賞金額を引き上げた。その増額幅はオープンG1競走の5万ポンド(約800万円)からクラス6競走の700ポンド(約11万円)にわたっている。

 注目すべき変更点としては、セントレジャーフェスティバル(ドンカスター)が木曜日から日曜日の開催となること、競馬が施行されないクリスマス期間が2017年以来初めて2日間に短縮され、12月23日(土)に4開催日が実施されることが挙げられる。一方、グランドナショナルはこれまでで最も遅い日程である4月15日(土)に施行される。

 土曜日の午後は最多で5開催日となっている。また平地と障害でそれぞれ2回ずつ、合計4回の休暇期間が設けられ関係者が休みを取れるようになっている。

 BHAのCOO(最高執行責任者)であるリチャード・ウェイマン氏はこう語った。「英国競馬界がさまざまな課題に直面している今、業界内で最低賞金額の引上げについて合意に至ったことはとりわけ重要なことです」。

 「馬主の方々はいつも英国競馬界を支えるためにとてつもない忠誠を尽くしてきました。それでも高レーティングの馬が海外に売却されることが大幅に増え、障害競走に関しては、優秀な馬が拠点を変えることが増えています」。

 「今年の賞金総額は記録的なレベルに達するでしょう。しかし1歳セールのシーズンを迎える中、多くの馬主が来年の計画を立てており、2023年の最低賞金額引上げという形でさらなる前進を発表できたのはとても重要なことです」。

 発表された競馬開催日程には、サンデーシリーズやレーシングリーグが含まれていないため、いくらかの追加が見込まれる。それは確定次第、追加される予定である。

By David Carr and James Burn

(1ポンド=約160円)

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